離れて暮らす親の見守り、最初の一手はカメラじゃない。地域包括支援センターに電話して「顔を覚えてもらう」順番

離れて暮らす親の見守り 最初の一手はカメラじゃない 在宅介護のリアル

週に1度の電話で、親が同じ話を繰り返すようになった。帰省するたびに、台所や玄関が前より片づいていない気がする。離れて暮らしていると、そういう小さな違和感の置き場所がありません。

先に結論をお伝えします。離れて暮らす親の見守りは、道具より先に「人」から始めます。 最初の一手は見守りカメラを買うことではなく、親の住所地の地域包括支援センターに電話すること。職員が訪問して顔を覚えてもらい、そこから介護保険の申請、デイサービスやヘルパー、必要なら安否確認つきの配食へとつなぎます。カメラやセンサーは、人の目が入ったあとの補助です。

私は社会福祉士として福祉の現場に20年。地域包括支援センターで家族からの相談を受けていた時期があり、現在はケアマネジャーとして働いています。この記事では、包括に電話したあとに何が起きるかを、順番どおりに書きます。

離れて暮らす親の見守り、最初の一手は何?

人です。 親の住所地にある地域包括支援センターに、家族から電話をかけるところから始まります。

「見守り」と聞くと、カメラやセンサーを思い浮かべませんか。道具は「動いているか」を映してくれますが、親と話をして「変わったか」に気づく人は増えません。包括に電話すると、職員が親の家を訪問し、顔を覚えてもらうところから見守りが動き出します。

地域包括支援センターは、介護保険法で「地域住民の心身の健康の保持及び生活の安定のために必要な援助を行う」施設と定められ、市町村が設置しています(社会福祉法人などに委託している地域も多い。介護保険法第115条の46)。厚生労働省も、地域の高齢者の総合相談を行う中核的な機関と説明しています。本人だけでなく、家族からの相談も受けています。

この記事の流れは5段階です。

1. 家族が「心配な理由」を整理する

2. 親の住所地の地域包括支援センターに電話する

3. 職員が訪問して、親に顔を覚えてもらう

4. 介護保険を申請する

5. デイサービス・ヘルパー・配食で、人の目が定期的に入る形にする

見守り機器は、この5段階のあとに置きます。順に見ていきます。

「心配」の正体は何?家族がよく挙げる3つの理由

包括で家族から電話を受けるとき、私が最初にすることは1つ。心配だと思った理由を伺うことです。

理由は、だいたい3つに集まります。

  • 同じ話を繰り返す(電話で気づく)
  • 身体が弱った気がする(会ったときに気づく)
  • 家が掃除できていない(家に入って気づく)

3つとも、気づく場所が違います。電話だけでは1つ目しか分かりません。帰省して顔を見ると2つ目、家に上がると3つ目が見えてきます。裏を返すと、電話で違和感があった時点で、会ったときにはもっと見えるものがあると考えたほうが安全です。

電話する前に、この3つのうちどれが、いつから気になっているかをメモしておいてください。「なんとなく心配」のままでも電話して構いません。ただ、理由が1つでも言葉になっていると、職員は訪問で何を見るかを決めやすくなります。

親の様子で、この3つに当てはまるものはありますか?

地域包括支援センターに電話すると、何が起きる?

電話の先で起きることを、順に書きます。

職員が「心配な理由」を聞く

まず、家族が何を心配しているかを職員が聞きます。同じ話を繰り返すのはいつからか、身体が弱ったと感じたのはどんな場面か、家のどこが片づいていないか。家族が話せる範囲で十分です。

職員が親の家を訪問する

次に、包括の職員が親の家を訪問します。ここでの目的は、サービスを決めることではありません。親に顔を覚えてもらうことです。

私が包括にいたころも、最初の訪問は、地域包括支援センターの職員として名乗り、顔を覚えてもらうところから始めていました。いきなり介護の話をしても、本人からすれば、知らない人が来て何かを勧めている状態です。まずは信頼関係をつくる。順番は、ここが最初です。

家族がいる日に合わせる

訪問の日取りは、家族が実家にいる日に合わせるのが基本です。家族が帰省する日に、包括の職員が一緒に顔を出す。「娘(息子)が心配して相談した、包括の人」として紹介してもらえると、親が受け入れやすくなります。

帰省の予定が決まったら、電話の時点で「この日に実家にいます」と伝えてください。訪問の段取りは、職員と相談して決められます。次の帰省は、いつになりそうですか?

顔を覚えてもらったあと、どう進む?

信頼関係ができたら、次の段階へ進みます。順番は、介護保険の申請 → デイサービスやヘルパー → 必要に応じて配食サービスです。

介護保険を申請する

要介護認定の申請先は、親の住所地の市区町村です。申請は本人や家族が行うほか、地域包括支援センターに手続きを代わってもらうこともできます(介護保険法第27条)。申請後は市区町村などの調査員が自宅を訪問して聞き取り調査を行い、主治医の意見書とあわせて審査されます。結果の通知は、申請から原則30日以内です(厚生労働省 介護サービス情報公表システム「サービス利用までの流れ」)。

離れて暮らす家族にとって、申請の代行を頼めるのは大きいところです。顔を覚えてもらった職員に、申請の代行や書類の相談をそのまま頼めます。申請先そのものは市区町村です。結果を待つ間にできることは、別の記事にまとめています。

▶ 介護認定の結果が1ヶ月半来ない?待つ間にできる5つのこと

デイサービス・ヘルパーで、人の目を定期的に入れる

認定が出たら、デイサービスやヘルパーを使い始めます。結果が要支援なら包括が、要介護なら居宅介護支援事業所のケアマネジャーが担当します。非該当でも、市区町村の総合事業で通いや訪問のサービスが使えることがあります。

ここで見守りの形が変わります。週に何回か、親の暮らしに人が入る。デイなら送迎の職員が玄関で顔を見ますし、ヘルパーなら家の中に入って掃除や調理をしながら様子を見ます。

「同じ話を繰り返す」「家が掃除できていない」という最初の心配は、この段階で人の目が届く形になります。家族が電話で確かめていたことを、週に何回か、専門職が目で確かめるようになる。これが「人の見守り」の中身です。

配食サービスで、食事と安否確認をまとめる

食事の準備が難しくなってきたら、配食サービスを検討します。配食は介護保険の対象外で、費用は自費です。目安は1食800〜1,000円で、事業所や献立によって変わります。市区町村が助成している配食サービスがある地域もあるので、包括に「市の配食はありますか」と聞いてください。

配食の価値は、食事だけではありません。配達のときに安否確認をしてくれる事業所があり、私が関わったケースでも、配達の事業所から異常の発見を知らせてもらったことがあります。毎日玄関で人と顔を合わせる。それ自体が見守りになります。

配食を勧めるかどうかの線引き(本人に作りたい意欲があるかどうか)は、同じシリーズの別記事に書いています。

親が「もう作るのがしんどい」と言ったら?宅配食を頼む前に見る「作りたい気持ち」の線引き

見守りカメラやセンサーは、いつ使う?

ここまで来て初めて、道具の出番です。人の目が入ったあとの補助として考えてください。

見守り機器には、大きく分けて次のような種類があります。

  • カメラで映像を見るタイプ
  • 人の動きや家電の使用を感知して、家族のスマホに知らせるタイプ
  • 本人がボタンを押して知らせるタイプ

包括にいたころ、家族から「カメラを付けようか迷っている」と聞くことがありました。実際に、ホームセキュリティを入れた方も、見守りカメラを設置した方もいます。最近は、ペットカメラのようなものを置く方もいます。

どれも「昨日から動きがない」といった異変を、家族が知る助けになります。一方で、機器は親が同じ話を繰り返しているかどうかを教えてくれませんし、掃除もしません。人が入る仕組みを先に作り、機器は「人が来ない時間帯」を埋めるものとして足す。この順番なら、道具を買って安心して終わり、にはなりません。

もう1つ。カメラを置くときは、親の同意を先に取ってください。本人が「見張られている」と感じると、せっかく職員が作った信頼関係にひびが入ります。置く場所と見る時間を親と決めてから、が順番です。親の家のどこに置くか、話し合えそうですか?

家族からよく出る5つの質問

離れて暮らす家族から、包括やケアマネがよく受ける質問に答えます。当てはまるものはありますか?

Q. 親が「来なくていい」「まだ大丈夫」と言ったら?

家族から先に電話して大丈夫です。本人が拒んでいても、家族の相談として包括は受けます。訪問の入り方は職員が考えるので、「本人は嫌がっています」と正直に伝えてください。帰省の日に合わせて「娘(息子)が心配して相談した、包括の職員」として顔を出す形が、ここでも効きます。職員は名乗ったうえで、介護の話を急がず様子を見に来た人として入ります。

親が電話で「大丈夫」しか言わないときの聞き方は、別の記事にまとめています。

▶ 親が「大丈夫」しか言わない|本音が出る5つの場面と、ケアマネへの伝え方

Q. 帰省できない。電話だけでも相談できる?

できます。まずは電話で、心配な理由を伝えてください。訪問への同席は必須ではなく、家族が来られる日がなければ、職員だけで訪問する段取りも相談できます。その場合も「包括の人が一度顔を出すよ」と、家族から親に一言伝えておいてください。帰省できる日があるなら、その日に合わせるのが一番ですが、待って先延ばしにするより、電話が先です。

Q. すでに要介護認定を受けている場合は?

担当のケアマネジャーに、この記事の「心配な理由3つ」をそのまま伝えてください。同じ話を繰り返す、身体が弱った気がする、家が掃除できていない。この3つが伝われば、ケアプランの見直しで人の目が入る回数を増やせることがあります。

Q. 両親2人で暮らしているから、大丈夫?

2人暮らしでも、入口は同じです。片方が片方を支えている状態なら、支えている側にも人の目が要ります。高齢の夫婦だけで介護が回っている状態については、別の記事に書いています。

▶ 老老介護のリアル完全ガイド|共倒れを防ぐ制度・サービス・心構え

Q. 今日、親と連絡が取れない。どうすればいい?

この記事の手順は、緊急時のものではありません。連絡が取れず安否が分からないときは、近所の方や親の住所地の警察に安否確認を相談するのが先です。倒れていると分かったら、その場で119番。包括への電話は、その後で構いません。

まとめ: 見守りの一歩目は、道具ではなく人

要点は5つです。

  • 最初の一手は、親の住所地の地域包括支援センターに電話すること
  • 電話の前に、心配な理由を1つでも言葉にする(同じ話を繰り返す/身体が弱った気がする/家が掃除できていない)
  • 職員の訪問は家族が実家にいる日に合わせる。目的は、親に顔を覚えてもらうこと
  • その後は介護保険の申請 → デイ・ヘルパー → 配食(安否確認つき)の順
  • 見守り機器は、人の目が入ったあとの補助

今日できることは1つ。親の住所地の地域包括支援センターの電話番号を調べて、次の帰省日を手帳で確かめておくこと。電話の内容は「同じ話を繰り返すようになって心配です。今度の帰省に合わせて、一度顔を出してもらえませんか」で足ります。

働きながら親の介護が始まりそうな方は、最初の30日の動き方をこちらにまとめています。

▶ 働きながら親の介護が始まったら|最初の30日にやることリスト

「家族だけでなんとかしよう」と思い始めている方は、こちらも読んでみてください。

▶ 在宅介護を自分たちだけでやると消耗します|共倒れを防ぐ介護保険サービスの組み合わせ方

【この記事を書いた人】

むむぶどう。社会福祉士として福祉の現場に20年、地域包括支援センターで家族からの相談を受けていた時期があり、現在はケアマネジャーとして働いています。「見守り=機器」と思って電話が遅れる家族を減らしたくて、包括に電話したあとに何が起きるかを順番どおりに書きました。

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ブログでは「制度の使い方」を、noteでは「現場のリアル」を、Xでは「今日の気づき」を発信しています。

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参考資料(一次資料)

※この記事は、離れて暮らす家族が最初の一手を決めるための入口として書いています。地域包括支援センターの訪問の進め方や、配食サービスの有無・費用は、市区町村や事業所によって異なります。介護保険の申請や利用できるサービスは、親の住所地の市区町村または地域包括支援センターにご確認ください。制度の内容は2026年9月時点の情報です。

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