親の担当のケアマネジャーから「見慣れない健康食品の箱が届いていました」と連絡があった。帰省したら、知らない布団が部屋の隅に置いてあった。だまされたのか、今から解約できるのか、焦っていませんか。
先に結論です。使う前に、箱と書類で「いつ・どうやって買ったか」を確かめてください。訪問販売や電話で勧められた契約なら、クーリング・オフの期間は8日間です。
最近なら、消費者ホットライン 188 へ。いつ買ったか分からなくても、自分で「もう無理」と決めずに相談し、同じことが起きないように手を打ちます。
私は社会福祉士として福祉の現場に20年、現在はケアマネジャーとして在宅で暮らす方のお宅を訪問しています。訪問先で見慣れない物に気づくことも、実際にあるんです。その時の動き方をもとに、家族がやる順番をまとめました。
親の家に見慣れない物が届いていたら、まず何をする?

使う前に、箱と書類を取っておきます。 そのうえで、ほかの家族とも共有しておくと安心です。
気づくきっかけは「見慣れない物」
訪問していると、前に来た時にはなかった物が届いていることがあります。そこで「あれ?」と気づくことが多いんです。
私が気づいた時は、まずご家族に伝えます。ご家族が気づいた時も、同じように、ほかの家族やケアマネジャーに伝えておくと動きやすくなります。
家族がやることは4つ
1. 箱・伝票・同封の書類を捨てずに取っておく(使う前に)
2. いつ・どうやって買ったかを確かめる(次の章)
3. 最近なら、188に相談する
4. いつ買ったか分からなくても相談し、次を防ぐ
健康食品のような消耗品は、使ってしまうとクーリング・オフできない場合があります(消費者庁)。「せっかく届いたから」と開けて飲み始める前に、まず書類を確かめませんか。
本人を問い詰めない
「なんでこんな物を買ったの?」と聞きたくなるのは、自然な気持ちです。ただ、責められたと感じると、本人が「自分で頼んだから大丈夫」と話を閉じてしまうと感じる人もいます。
聞くなら、「これ、どこから届いたの?」「電話で勧められた?」くらいで十分です。

現場のひとこと
訪問していて、見慣れないものが届いていることで気づきます。まずはご家族に伝えます。
何が届いていることが多い?

現場で見るのは、サプリメント、布団、健康食品あたりです。
実家の棚や部屋の隅に、見覚えのない箱は増えていませんか。どれも、家にあっても不自然に見えにくい物です。家族が帰省しても「何か買ったんだな」で通り過ぎてしまいやすい。次の2つは、目安として見てみてください。
- 同じ物が、何箱も・何組も届いていないか
- 同じ箱が、毎月のように届いていないか(定期購入になっていることがある)
国民生活センターには、健康食品や化粧品などで「1回だけのつもりが定期購入だった」という相談が寄せられています。毎月届くなら、まず「止める」連絡が要る契約かもしれません。
現場のひとこと
届いていたのは、サプリメント、布団、健康食品あたりです。
いつ・どうやって買ったか、どう確かめる?

「いつ」と「どうやって」で、使える決まりが変わります。 手がかりは家の中にあります。
「いつ」の手がかり
- 箱の伝票:届いた日、送り主
- 同封の書類:契約書、申込書、納品書。日付が書いてあることが多い
- 請求書・払込用紙:支払いの期限や金額
- 通帳やクレジットカードの明細:引き落としの日と、毎月続いているか
「どうやって」の手がかり
本人に、責めずに聞いてみます。
- 「家に誰か来た?」→ 訪問販売
- 「電話で勧められた?」→ 電話勧誘販売
- 「テレビや新聞、チラシを見て、自分で電話した?」→ 通信販売
- 「頼んだ覚えがない」→ 送り付けかもしれない
本人が覚えていなくても大丈夫です。手元の書類から、まず「いつ」を探してみませんか。書類に販売方法が書いてあることもあります。書類は、188に相談する時にそのまま使えます。
自分から電話した場合でも、電話の中での勧められ方によっては扱いが変わることがあります。迷ったら188で確かめてください。
注文した覚えがない物が届いた時
注文や契約をしていないのに一方的に送り付けられた商品は、代金を払う必要はなく、すぐに処分してかまわないとされています(消費者庁)。
ただ、本人が電話で頼んだのを忘れている、ということもありえます。「頼んでいないはず」と思っても、処分する前に188で確かめておくと安心です。

最近買った物なら、クーリング・オフはできる?

訪問販売・電話勧誘販売なら、8日間のうちはクーリング・オフを考えられます。 通信販売には、クーリング・オフはありません。
期間は「書面を受け取った日」から数える
国民生活センターによると、クーリング・オフの期間は取引の種類で違います。
- 訪問販売・電話勧誘販売:8日間(ほかの取引では20日間のものもあります)
- 通信販売(テレビ・新聞・チラシ・ネットを見て自分で申し込む):クーリング・オフはない。広告に返品の決まりがあればそれに従い、なければ受け取った日を含めて8日以内なら返品できる(送料は自分で負担)
8日間は、申込書面か契約書面の、早いほうを受け取った日から数えます。受け取った日を1日目として数えると、次の週の同じ曜日までくらい。気づいた時には過ぎている、ということが起きやすい短さです。
箱が届いた日と、書面を受け取った日は同じとは限りません。数え始めは書面の日付で確かめます。法律で決められた書面を受け取っていない時の扱いは、手元の書類を持って188で確かめてください。
通知は書面かメールなどで
クーリング・オフは、はがきなどの書面か、メールなどの電磁的記録で通知します。はがきなら両面をコピーし、特定記録郵便か簡易書留など、送った記録が残る方法で出します。
クレジットで払っている時は、販売会社とクレジット会社の両方への通知が必要です。
書き方が分からない時、クーリング・オフできる取引か分からない時は、通知を出す前に188へ。自分で決めずに聞くのが近道です。
188はどこにつながる?
消費者ホットライン188は、近くの市区町村や都道府県の消費生活センターなどを案内してくれる番号です。土日祝日も、地元のセンターが開いていない時は国民生活センターが補うので、施設点検日や年末年始を除いて原則毎日使えます。相談は無料ですが、通話料はかかります。
電話の前に、手元にそろえておくと話が早いもの。
- 箱の伝票、契約書・申込書などの書類
- 請求書や、引き落としが分かる明細
- 本人から聞けた「いつ・どうやって」のメモ
現場のひとこと
最近買ったものであれば、クーリング・オフなどを案内することもあります。
いつ買ったか分からない時は、あきらめるしかない?

期間を過ぎていることが多いです。それでも、相談する前にあきらめないでください。
現場では「いつ買ったか分からない」が多い
見慣れない物に気づいた時、実は、いつ買ったかも分からない状態のことが多いんです。書類が見当たらない。本人も覚えていない。8日間は、とっくに過ぎていそうに見えます。
期間を過ぎていても、できる場合がある
それでも、国民生活センターや消費者庁の案内には、こんな場合が書かれています。
- 書面の記載に不備がある時は、期間を過ぎていてもクーリング・オフできる場合がある
- 「クーリング・オフできない」とうそを言われたり、脅されたりして、できなかった時も同じ
- 訪問販売・電話勧誘販売で、暮らしに必要な量を大きく超える量を買わされた時は、契約から1年間は解除できる(過量販売。特別な事情があった時は例外)
- 勧められた時に事実と違うことを言われて、それを信じて契約した時は、取り消せる場合がある
どれに当てはまるかを家族だけで判断するのは難しいです。だから「いつ買ったか分からない」時こそ、分かる範囲の書類を持って188に相談してください。
「もう何年も前のことだし」と思った方もいるかもしれません。相談してみて「できない」と分かるのと、相談せずに終わるのとでは、次に打てる手が変わります。

現場のひとこと
多くは、いつ買ったかもわからないような状態です。
同じことが起きないように、何をする?

続いている契約を止める、気づける人を増やす、必要なら成年後見を考える。 この3つです。
① 定期購入を止める
毎月届いているなら、まず止める連絡をします。止め方や、解約の条件で言われたことに納得がいかない時も、188が相談先です。止めないまま様子を見ていると、その間も届き続けます。
② 気づける人を増やす
親の家に、定期的に訪問している人はいますか。私が見慣れない物に気づけるのも、訪問しているおかげです。家族が毎日は見に行けないなら、訪問している人に頼んでおく手があります。
- ケアマネジャーやヘルパーに「見慣れない物が届いていたら教えてください」と伝えておく
- 帰省した時は、玄関・棚・押し入れの前を見ておく
- 電話で「最近、誰か来た?」と聞いてみる
ケアマネジャーがまだついていない親なら、親が住む地域の地域包括支援センターが相談先です。離れて暮らす親の見守りを、地域包括支援センターから始める順番は、こちらにまとめています。
▶ 離れて暮らす親の見守り、最初の一手はカメラじゃない。地域包括支援センターに電話して「顔を覚えてもらう」順番
③ 何度も続くなら、成年後見制度も考える
ひとりで契約を決めることが心配になってきたら、成年後見制度という選択肢があります。家庭裁判所が、本人を支える人(成年後見人など)を選ぶ制度です。
この制度を使うと、本人が結んだ不利益な契約を、後から取り消せることがあります。ただし、知っておきたい点が3つあります。
- 取り消せる範囲は、種類(補助・保佐・後見)で違う。補助は裁判所が決めた行為だけ、後見は原則すべて(厚生労働省)
- 日用品の購入など、日常生活に関する行為は取り消せない(民法第9条)
- 取り消せるのは、制度を使い始めてから本人がした契約。民法は、後見開始の審判を受けた人を成年被後見人とし(第8条)、その人がした法律行為を取り消せるとしている(第9条)
契約した頃に、親の判断する力が落ちていた様子があれば、188に相談する時にそれも伝えてください。
つまり、すでに届いている物の相談は188へ。成年後見は「これからの契約」を守るための選択肢です。
親のお金の管理そのものが心配になってきた時(通帳が見当たらない、引き出しが増えたなど)の相談先は、こちらにまとめています。
▶ 親が「通帳がない」と言ったら?責めずに一緒に探す場所と、何度も続く時に早めに相談したい2つの制度
なお、成年後見制度は2026年6月に見直しの法律が公布されています(「後見」「保佐」をなくして「補助」にまとめる内容)。始まる日は、これから政令で決まります(法務省)。始まるまでは今の制度のままです。種類の違いや費用、申立ての流れは、こちらにまとめています。
▶ 成年後見制度の完全ガイド|後見・保佐・補助の違いと使い方
よくある質問(FAQ)

Q. 本人が「自分で頼んだから、いいの」と言います。それでも相談していい?
相談するだけなら、本人の気持ちを否定することにはなりません。「毎月いくら払っているか、一緒に確かめておこう」と、お金の話として持ち出すと受け入れられやすいことがあります。続けるかどうかを決めるのは本人です。
Q. 解約の連絡は、家族が代わりにしていい?
契約しているのは本人です。できれば本人と一緒に電話するか、本人のそばで話してください。家族だけで進めていいかどうかも、188に相談する時に聞いておくと安心です。
Q. 業者から何度も電話がかかってきます
特定商取引法は、電話勧誘販売で「契約しません」と伝えた人に、勧誘を続けたり、もう一度勧誘したりすることを禁止しています(消費者庁)。それでも電話が続く時は、どう対応したらいいかを188で相談できます。かかってきた日時と、相手が名乗った名前をメモしておくと、相談の時に役立ちます。
Q. 支払ってしまったお金は、戻ってきますか?
クーリング・オフや取消しができた場合は、支払ったお金を返してもらうことになります。ただ、できるかどうかは契約の中身によります。戻るかどうかを家族だけで決めつけず、書類を持って188に相談してください。
Q. 物忘れも増えている気がします
見慣れない物が増えたことが、物忘れに気づくきっかけになることもあります。認知症の早いサインと相談先は、こちらにまとめています。
まとめ:見慣れない物は、使う前に書類。迷ったら188

要点は4つです。
- 見慣れない物が届いていたら、使う前に箱と書類を取っておく
- いつ・どうやって買ったかを、伝票・書類・明細と本人の話で確かめる
- 訪問販売・電話勧誘販売のクーリング・オフは8日間。通信販売にはない
- いつ買ったか分からなくても、188に相談し、定期購入を止めて次を防ぐ
次のうち1つでも当てはまるなら、今日188に電話していいタイミングです。
- 届いてから、まだ日が浅い
- 同じ物が何箱も、または毎月届いている
- 本人が「誰か来た」「電話で勧められた」と話している
今日できることは1つ。届いていた箱の伝票を、捨てずに1か所にまとめておきませんか。それが、相談する時にいちばん役に立つ材料になります。
この記事を書いた人
むむぶどう🍇
社会福祉士・ケアマネジャー。社会福祉士として福祉の現場に20年、介護施設・在宅サービスでご本人とご家族の支援に関わってきました。福祉の制度を「使える形」にして届けたい、と思って発信しています。
訪問先で見慣れない物に気づいた時は、まずご家族に伝えています。気づいた時に期限が過ぎていても、家族が次の一手を打てるように、現場の目線で書きました。
▶ note(現場のリアル・体験談):https://note.com/mumubudou
▶ X(毎朝のつぶやき・現場の小ネタ):https://x.com/mumubudo
ブログでは「制度の使い方」を、noteでは「現場のリアル」を、Xでは「今日の気づき」を発信しています。
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参考資料
- 国民生活センター「クーリング・オフ」 https://www.kokusen.go.jp/soudan_now/data/coolingoff.html
- 消費者庁 特定商取引法ガイド「訪問販売」 https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/doortodoorsales/
- 消費者庁 特定商取引法ガイド「電話勧誘販売」 https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/telemarketing/
- 消費者庁 特定商取引法ガイド「通信販売」 https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/mailorder/
- 消費者庁 特定商取引法ガイド「送り付け商法(ネガティブ・オプション)Q&A」 https://www.no-trouble.caa.go.jp/qa/negativeoption.html
- 国民生活センター「通信販売での定期購入」 https://www.kokusen.go.jp/soudan_topics/data/subscription_traps.html
- 消費者庁「消費者ホットライン」 https://www.caa.go.jp/policies/policy/local_cooperation/local_consumer_administration/hotline/
- e-Gov法令検索「民法」(第8条・第9条) https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
- 厚生労働省 成年後見はやわかり「法定後見制度とは」 https://guardianship.mhlw.go.jp/personal/type/legal_guardianship/
- 法務省「民法等の一部を改正する法律」(成年後見及び遺言の制度の見直し)について https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00410.html
※この記事は、高齢の親の契約トラブルについての一般的な情報です。クーリング・オフや取消しができるかどうかは、取引の種類や契約の内容によって違います。実際の対応は、消費者ホットライン188(お近くの消費生活センター)にご相談ください。


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