介護もケアマネもできるオールラウンド社会福祉士のむむぶどう🍇です😊
「お父さんの介護、家族で頑張ってるんです」 「人に頼むのは申し訳ないので、できるところまで自分たちで」 「サービスを使うのは、まだ早いと思って」
このセリフを、私はこの20年で何百回聞いたかわかりません。そして、こう話していたご家族の半分以上が、半年から1年以内に「もう限界です」と泣きながら電話をかけてくることになります。
最初にはっきり書きます。
在宅介護を「家族だけ」でやろうとすると、ほぼ確実に共倒れになります。
これは家族の覚悟が足りないわけでも、愛情が薄いわけでもありません。在宅介護というものが、もともと家族だけでは構造的に成立しないようにできているだけです。
本記事では、
- なぜ「自分たちだけで」が必ず破綻するのか
- 在宅介護で家族が消耗する5つの要因
- 共倒れを防ぐために使える介護保険サービスの全体像
- 状態別の組み合わせ方(ケアプラン例)と月額費用
- ケアマネ・地域包括への上手な相談の仕方
- 家族の心構え(罪悪感の手放し方)
を、現場で在宅介護世帯を500件以上担当してきた立場から整理します。
「うちはまだ大丈夫」と思っているご家族こそ、最後まで読んでみてください。今のうちに体制を組んでおけば、共倒れは確実に避けられます。
※制度・統計・金額は2026年5月時点の情報です。最新の詳細はお住まいの市区町村の介護保険担当窓口・地域包括支援センターでご確認ください。
「自分たちだけでやろうとするご家族」の典型パターン3つ
最初に、私が「あ、このご家族は危ないな」と感じる典型的なパターンを3つ紹介します。一つでも当てはまる方は、続きを慎重に読んでください。
パターン①「親に申し訳ない」型
「他人を家に上げるのは親が嫌がるので…」 「デイサービスに行くのは可哀想で…」
このタイプのご家族は、親への気遣いが先に立って、サービス導入を1〜2年遅らせることが多いです。
しかし現場の感覚で言うと、サービスを早く入れた方が、ご本人もご家族も圧倒的に穏やかに過ごせます。サービスを我慢した分だけ、認知症の進行や廃用症候群(動かないことで弱る現象)が早まることも珍しくありません。
「親が嫌がるから」ではなく、「親が嫌がらない形で、どう導入するか」をケアマネと一緒に考えるのが正解です。
パターン②「私が看るのが当たり前」型
「長男の嫁だから」 「実家の近くに住んでいるから」 「仕事を辞めて専念しているから」
このタイプは、主介護者の自己犠牲で全体が回っている状態です。本人は「これが普通」と思っているので、限界が来るまで助けを求めません。
特に危ないのは、主介護者が「私が頑張れば、お金もかからないし、親も喜ぶし、きょうだいも揉めない」という三方良しに見えている時です。実態は、主介護者一人にすべての負荷が集まっている状態で、ほぼ必ず数年以内に破綻します。
パターン③「お金がもったいない」型
「介護保険でも1割負担はかかるし、ヘルパーは贅沢」 「ショートステイは1泊で結構するから、節約のために使わない」
このタイプは、目先の数千円を惜しんで、結果的にもっと大きなものを失うパターンです。
介護者が腰を痛めて入院すれば、医療費は数十万円。介護離職をすれば、生涯収入で数千万円のマイナス。介護うつで治療が必要になれば、年単位の治療費がかかります。
「介護保険サービス代=家族を守る保険料」と考え直すと、判断が変わってきます。
なぜ在宅介護は家族だけでは無理なのか
ここで一度、構造的な話を整理させてください。「気合いの問題」ではないことを理解していただくためです。
在宅介護は「24時間365日のシフトワーク」
介護が必要な方の生活を支えるというのは、医療・福祉の世界では本来複数人のシフト勤務でやる仕事です。
介護施設では、
- 日勤2〜3人
- 夜勤1〜2人
- 早番・遅番
といった形で、最低でも10人前後のスタッフが交代制で対応しています。それでも夜勤明けのスタッフは疲弊しています。
これを家族1〜2人で24時間365日やろうとしたら、どうなるか。答えは明確で、プロでも3日でダウンする量の仕事を、素人の家族が無休でやることになります。
「家族の頑張りが足りない」のではなく、最初から無理な前提でスタートしているのです。
在宅介護の労働時間は1日平均8時間超
ある調査では、要介護3以上の在宅介護で、主介護者が介護に費やす時間は1日平均8時間超というデータがあります。要介護5になるとほぼ終日です。
これに加えて、
- 自分の家事・仕事
- 通院付き添い・買い物
- 夜間の見守り・トイレ介助
- ケアマネ・病院との連絡調整
が乗ってきます。フルタイムの仕事を2つ掛け持ちしているのと同じくらいの負荷です。
これを「家族の愛情」で乗り切ろうとするのは、無理を通り越して、最初から計画として成立していません。
在宅介護で家族が消耗する5つの要因
「なぜ自分はこんなに疲れているのか」を構造で理解しておくと、対策が立てやすくなります。家族が消耗する要因を5つに分解して説明します。
要因①慢性的な睡眠不足
在宅介護で最初に削られるのが睡眠です。
- 夜中のトイレ介助で2〜3回起こされる
- 認知症の方の夜間徘徊で目が離せない
- 「呼ばれたらすぐ起きないと」という緊張で眠りが浅くなる
- 朝は通常通り起きて家事
私が担当したご家族の中には、3年間連続で1日4時間睡眠だった方がいました。当然、その方は最終的に高血圧と心疾患で倒れました。
慢性的な睡眠不足は、
- 判断力の低下
- イライラ・うつ症状
- 免疫力の低下
- 生活習慣病の悪化
を確実に引き起こします。「自分は大丈夫」と思っている方こそ、睡眠時間を1日6時間以上確保できているかを真っ先にチェックしてください。
要因②社会的孤立
介護が始まると、急速に「外との接点」が消えていきます。
- 友人との約束を断り続けて誘われなくなる
- 趣味のサークル・習い事をやめる
- 旅行や帰省ができなくなる
- 親戚との行き来も減る
最初は「介護が落ち着いたら復活すればいい」と思っていても、3年・5年と続くと人間関係そのものが失われます。
社会的孤立は介護うつの最大のリスク因子です。さらに怖いのは、看取りが終わったあと、戻る場所がない状態になることです。配偶者を看取った介護者が、その後3年以内に急激に弱るケースを、現場では何度も見てきました。
要因③経済的負担
在宅介護では、見えにくい支出が積み上がります。
- おむつ・パッド代(月1〜2万円)
- 食事の宅配・お惣菜(月2〜3万円)
- 通院タクシー代(月数千円〜数万円)
- 介護用品・消耗品
- 光熱費の増加(エアコン・お湯)
- 住宅改修・福祉用具の自己負担分
介護保険サービスの自己負担と合わせると、月5〜10万円は出ていくのが普通です。さらに介護離職をすれば収入も減ります。
「年金で何とかなる」と思っていたら、半年で貯金が大きく減っていた──というご家庭は本当に多いです。
要因④心理的負担
在宅介護の心理的負担は、「先が見えない」ことに集約されます。
- いつまで続くのかわからない
- 良くなる見込みがあるのか、悪くなる一方なのか
- 自分の人生はいつ戻ってくるのか
- 「親に死んでほしいなんて思ってないのに、ふと”早く楽になってほしい”と思ってしまう自分」への罪悪感
特に最後の罪悪感は、介護者を深く傷つけます。この感情は介護者なら誰でも経験する自然な反応で、人間性が悪いわけではありません。でも、誰にも話せないので、一人で抱え込んでしまいます。
私はケアマネとして担当したご家族には、最初の面接で必ずこう伝えます。
「介護していると、絶対に”早く楽になってほしい”と思う日が来ます。それは正常な反応です。罪悪感を持たなくていいです。」
これを最初に言われるかどうかだけで、介護者の精神的な持ちこたえ方が変わってきます。
要因⑤自分の時間の消失
「自分の時間」が消えるのも、在宅介護の大きな消耗要因です。
- 美容院に行けない
- 一人でゆっくりお茶を飲めない
- 自分の通院を後回しにする
- 髪の毛を切る時間も惜しい
ある奥様の介護者は、こう話していました。「最後にカフェに行ったのが、いつだったか思い出せません」。
自分の時間が失われると、人は「介護をする道具」になっていきます。自分が一人の人間だという感覚を失い、すべての時間を相手に捧げる状態です。
これは献身ではなく、人格の摩耗です。
共倒れの実態:家族側に起きる4つの破綻
「共倒れ」という言葉を抽象的に使ってしまうので、ここで具体的に何が起きるのかを整理しておきます。
破綻①介護うつ
うつ病の発症率は、介護者では一般人口の2〜3倍というデータがあります。在宅介護を3年以上続けた主介護者の場合、3人に1人前後がうつ症状を経験するという調査もあります。
介護うつのサインは、
- 朝起きるのがつらい
- 何をしても楽しくない
- 食欲がない/食べ過ぎる
- 「自分がいなくなれば」と考える
- 介護対象に対して怒りが抑えられない
これらが2週間以上続いたら、心療内科の受診と、ケアマネへの相談が必要です。
破綻②介護離職
総務省の調査では、年間約10万人が介護を理由に離職しています。
介護離職をすると、
- 収入の途絶
- 社会保険料の自己負担化
- 再就職の難しさ
- 介護終了後の経済的困窮
が連鎖して起きます。介護期間中の生活費だけでなく、自分の老後資金まで削ることになります。
「介護休業93日制度」を使えば、フルタイム勤務を続けながら介護体制を組む時間が確保できます。離職する前に、必ずケアマネと会社の人事に相談してください。
破綻③介護者自身の身体的破綻
介護者の身体に出てくる症状で、現場でよく見るのは、
- 腰椎ヘルニア(移乗・入浴介助で発症)
- 膝の変形性関節症
- 五十肩・腱鞘炎
- 高血圧・心疾患の悪化
- 糖尿病のコントロール悪化
- がん検診の未受診によるがん発見の遅れ
特に「自分の通院を後回しにした結果、進行がんで発見された」というケースを、私は複数件見てきました。
要介護者を支えるはずの介護者が、要介護者より先に亡くなる──これは在宅介護の最大の悲劇です。
破綻④虐待リスクの上昇
厚労省の高齢者虐待調査によると、虐待者の約4割が主介護者です。そして虐待の理由のトップは「介護疲れ・介護ストレス」です。
ここで強調したいのは、虐待をする介護者の大半は、もともと優しい人だったということです。3年・5年と続く介護で、徐々に追い詰められて、ある日「もう無理」と手が出てしまう。
「自分は絶対にそんなことしない」と思っている方ほど、要注意です。サービスを入れずに自分だけで抱え込んだ介護者ほど、虐待リスクが高くなるというのが現場の感覚です。
介護保険で使える在宅サービス完全リスト
ここから本題に入ります。介護保険で使える在宅サービスを、目的別に整理します。
「こんなにあるの?」と驚かれるかもしれませんが、これらを組み合わせて使うのが、共倒れを防ぐ唯一の方法です。
1. 訪問系サービス(家に来てもらう)
訪問介護(ホームヘルパー)
ヘルパーさんが自宅に来て、
- 身体介護(入浴・排泄・食事介助・移乗)
- 生活援助(掃除・洗濯・買い物・調理)
をしてくれます。1回20〜60分。介護者の最大の味方です。
1日複数回、毎日でも入れます。要介護度に応じた利用上限の範囲内なら、自己負担は1〜3割。
訪問看護
看護師さんが自宅に来て、
- バイタルチェック
- 服薬管理
- 褥瘡(床ずれ)処置
- 点滴・注射
- ターミナルケア
をしてくれます。週1回〜複数回。医療ニーズが高くなった在宅介護の生命線です。
主治医の「訪問看護指示書」が必要ですが、ケアマネがすべて手配してくれます。
訪問リハビリ(訪問リハ)
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が自宅に来て、
- 歩行訓練
- 立ち上がり訓練
- 嚥下訓練
- 認知機能訓練
をしてくれます。退院直後や、機能維持が必要な時期に有効です。
訪問入浴
専用の浴槽を持ち込んで、スタッフ3人体制で入浴介助をしてくれます。
寝たきりの方や、自宅の浴室が使えない方に有効です。家族では絶対に再現できないレベルの安全な入浴ができます。
2. 通所系サービス(出かけて行く)
デイサービス(通所介護)
朝迎えに来て、夕方送ってくれます。日中は、
- 入浴
- 食事
- レクリエーション
- 機能訓練
を提供してくれます。介護者の自由時間を作る最強のツールです。
週1〜6回、選んで利用できます。「うちの親は出かけたがらない」というご家庭こそ、まず体験利用から始めてほしいです。
デイケア(通所リハビリ)
デイサービスにリハビリ機能が強化されたものです。医師・理学療法士が常駐していて、本格的な機能訓練が受けられます。
退院後・脳梗塞後・骨折後の回復期に特に有効です。
認知症対応型デイサービス
少人数(最大12人)で、認知症の方が落ち着いて過ごせる環境を作ります。通常のデイサービスより手厚いケアが受けられます。
「普通のデイは賑やかすぎて疲れてしまう」という認知症の方に向いています。
3. 短期入所系(泊まる)
ショートステイ(短期入所生活介護)
特養や老健に1泊〜30日まで泊まれるサービスです。
- 介護者の旅行・冠婚葬祭
- 介護者の入院・通院
- 介護者のリフレッシュ(レスパイト)
で使います。月1〜2回、定期的に使うのが在宅介護を長続きさせるコツです。
「親を施設に預けるなんて可哀想」と感じる方も多いですが、ショートステイを使った介護者の方が、結果的にご本人を在宅で長く看られるというデータがあります。
短期入所療養介護(医療ショート)
医療ニーズが高い方向けのショートステイです。老健・診療所などで実施され、医師・看護師がしっかり対応してくれます。
4. 多機能系サービス
小規模多機能型居宅介護
「通い・訪問・泊まり」を一つの事業所で柔軟に組める仕組みです。
- 普段はデイサービスのように通う
- 必要な時はヘルパーが来る
- 介護者が疲れたら泊まれる
- 月額定額(要介護度により変動)
担当のスタッフが固定されるので、認知症の方でも安心して使えます。在宅介護世帯と本当に相性が良いサービスです。
看護小規模多機能型居宅介護(看多機)
医療ニーズが高いケース(点滴・喀痰吸引・経管栄養など)にも対応できる、訪問看護+小規模多機能のハイブリッド型です。
「医療がないと在宅は無理」と言われたご家庭の、最後の砦になることが多いです。
5. 福祉用具・住環境整備
福祉用具レンタル
- 介護ベッド・マットレス
- 車いす
- 歩行器・歩行補助杖
- 手すり・スロープ
- エアマット(褥瘡予防)
など、月数百円〜数千円の自己負担でレンタルできます。介護者の腰・膝を守る最強のアイテムです。
「介護ベッドは病人みたいで嫌」と拒否される方もいますが、畳に布団のまま介護を続けると、ほぼ確実に介護者が腰を痛めます。
福祉用具購入
- ポータブルトイレ
- 入浴用いす
- 簡易手すり
など、レンタル不可の品目は購入になります。年間10万円まで、自己負担1〜3割で買えます。
住宅改修
- 手すりの設置
- 段差解消
- 滑り止め床への変更
- 引き戸への変更
- 洋式トイレへの変更
生涯20万円まで、自己負担1〜3割で使えます。要介護度が3段階上がるごとにリセットされて再度使える特例もあります。
6. 居宅療養管理指導
医師・歯科医師・薬剤師・管理栄養士などが自宅を訪問して、療養上の管理・指導をしてくれるサービスです。
特に訪問歯科は重要で、誤嚥性肺炎の予防に直結します。「歯科に通えないから諦めている」というご家庭こそ、ケアマネに相談してください。
状態別ケアプラン例:実際にどう組み合わせるか
ここからが現場の知恵の見せどころです。「サービスをどう組み合わせるか」で、在宅介護の負担は劇的に変わります。
4つの典型ケースで、具体的な組み合わせ方を示します。
ケース①要介護1・ひとり暮らしの認知症初期
状況:80歳女性、軽度認知症、ひとり暮らし。娘が車で30分の距離に住む。
組み合わせ例:
- 訪問介護(週2回・各1時間):服薬確認・買い物・調理
- デイサービス(週2回):日中の安全確保・社会交流
- 福祉用具レンタル:歩行器・手すり
- 居宅療養管理指導(月2回):薬剤師の服薬管理
月額自己負担:約1.5〜2万円(1割負担の場合)
ポイント:娘さんは平日仕事を続けながら、週末だけ実家を訪問。週4日は誰かが関わっている状態を作って、安否確認と認知症進行の早期発見をする体制です。
ケース②要介護3・主介護者は70代の妻
状況:85歳男性、脳梗塞後の片麻痺、要介護3。妻が主介護者(72歳)。
組み合わせ例:
- デイサービス(週3回):入浴・リハビリ・日中の介護者休息
- 訪問介護(週3回・各1時間):朝の起床介助・夕方の食事介助
- 訪問看護(週1回):血圧・服薬管理
- ショートステイ(月1回・3泊4日):妻の完全レスパイト
- 福祉用具:介護ベッド・車いす・ポータブルトイレ
月額自己負担:約3〜4万円(1割負担の場合)
ポイント:「妻を倒さないこと」を最優先のケアプラン目標にしています。デイで身体介助の負担を減らし、ショートステイで月1回必ず妻が完全に休む時間を確保します。
ケース③要介護4・認知症あり・家族介護
状況:82歳女性、アルツハイマー型認知症、夜間徘徊あり。同居の長男夫婦が介護。
組み合わせ例:
- 認知症対応型デイサービス(週5回):日中の見守り・生活リズム作り
- 訪問介護(週3回):入浴介助・排泄介助
- ショートステイ(月2回・各3泊4日):家族の睡眠確保
- 訪問看護(週1回):服薬管理・認知症の経過観察
- 福祉用具:センサーマット・介護ベッド・車いす
月額自己負担:約4〜5万円(1割負担の場合)
ポイント:認知症の夜間徘徊は家族が一番消耗するポイントです。週5日のデイで日中の活動量を確保して夜の睡眠を促進、月2回のショートステイで家族がまとめて熟睡できる時間を作ります。
ケース④退院直後・要介護2・脳梗塞後
状況:75歳男性、脳梗塞退院直後、軽度の右麻痺、要介護2。妻が主介護者。
組み合わせ例:
- 訪問リハビリ(週2回):在宅での機能訓練
- デイケア(週2回):本格的なリハビリ
- 訪問看護(週1回):血圧・服薬・再発予防
- 訪問介護(週2回):入浴介助
- 福祉用具:手すり・歩行器・介護ベッド
- 住宅改修:玄関・トイレ・浴室の手すり設置
月額自己負担:約3〜4万円(1割負担の場合)+ 住宅改修自己負担
ポイント:退院直後の3〜6ヶ月はリハビリの黄金期です。この時期にリハビリを集中投下すると、その後の介護負担が劇的に変わります。「家でゆっくり休ませる」ではなく、「家で集中的にリハビリする」が正解です。
月額費用シミュレーション:本当はいくらかかるのか
「介護保険を使うとお金がかかる」と思われがちですが、実際の自己負担はそこまで高くありません。具体的な金額を示します。
介護保険の自己負担割合
所得段階によって、自己負担割合は以下のように決まります。
- 住民税非課税世帯:1割負担
- 一般所得:1〜2割負担
- 現役並み所得(年金収入+その他所得340万円超など):2〜3割負担
要介護度別・利用上限額(区分支給限度基準額)
介護保険で1〜3割負担で使えるサービスには、要介護度ごとの月額上限があります(2026年5月時点)。
- 要支援1:約5万円
- 要支援2:約11万円
- 要介護1:約17万円
- 要介護2:約20万円
- 要介護3:約27万円
- 要介護4:約31万円
- 要介護5:約37万円
この範囲内なら自己負担は1〜3割。超えた分は全額自己負担です。
高額介護サービス費(月の上限あり)
介護保険の自己負担額には月の上限が設定されています(2026年5月時点)。
- 住民税非課税世帯:月24,600円
- 一般所得:月44,400円
- 現役並み所得:月44,400円〜140,100円
超えた分は申請すれば戻ってきます。初回だけ申請すれば、翌月以降は自動振込になります。
介護費用のリアル:月額10万円問題
介護保険サービスの自己負担に加えて、
- おむつ・パッド代
- 食事の宅配
- 通院タクシー
- 光熱費の増加
など保険外の出費が積み上がります。在宅介護の総支出は、月5〜10万円になることが多いです。
これを「高い」と感じるか、「家族の人生を守る保険料」と感じるかで、選択が変わってきます。
経済的負担を軽減する制度
経済的な不安があるご家庭は、以下の制度を全部使い切るのが鉄則です。
- 高額介護サービス費:月の上限を超えた分が戻る
- 高額医療・高額介護合算療養費:年間の医療費+介護費の上限あり
- 負担限度額認定証:ショートステイの食費・居住費が下がる(住民税非課税世帯)
- 介護休業給付金:休業中の収入の67%が雇用保険から支給
- 医療費控除:訪問看護・デイケア・通院交通費が対象
- 障害者控除:要介護認定者は税制上の障害者扱いになる場合あり
どれか1つでも使い忘れていると、年間で数万円〜数十万円損していることになります。最寄りの地域包括支援センターで「使える制度を全部教えてください」と聞くのが最短ルートです。
ケアマネ・地域包括への上手な相談の仕方
サービスを組み合わせるのは、最終的にケアマネジャー(介護支援専門員)の仕事です。ここで、ケアマネに上手に相談するコツをお伝えします。
ケアマネは「使うもの」です
ケアマネを「先生」のように扱って、お任せにする家族が多いです。でも、ケアマネは本来、家族の希望を実現するためのコンサルタントです。
「ケアマネさんの言う通りにします」ではなく、
- 家族の生活でしんどい部分を具体的に伝える
- 「私はこういう生活を取り戻したい」と希望を伝える
- 提案されたプランに納得いかなければ「もう少し違う組み方はないか」と相談する
という姿勢で関わってください。
ケアマネへの伝え方の例
「お父さんを在宅で看たい。でも、私(妻)が倒れないプランにしてください。月に1回は完全に休める日を作りたいです。」
このように伝えると、ケアマネは「介護者を倒さない」を最優先のプラン目標にできます。
「サービスはなるべく少なく」「迷惑をかけたくない」と曖昧に伝えると、ケアマネも遠慮した薄いプランしか組めません。遠慮はプロにとっての足かせです。
ケアマネとの相性が合わなかったら変更できる
「うちのケアマネとは話が合わない」「提案が薄い」と感じたら、ケアマネは変更できます。
事業所を変えるか、同じ事業所の中で担当変更を依頼するか、二択です。「ケアマネを変えたい」と地域包括支援センターに伝えれば、変更手続きをサポートしてくれます。
ケアマネは合計5〜10年付き合うパートナーです。相性は本当に大事です。
地域包括支援センターは「介護の総合相談窓口」
中学校区ごとに必ず設置されている、無料の総合相談窓口です。
- 介護保険の申請代行
- ケアマネの紹介
- 虐待・困窮の相談
- 認知症初期集中支援
- 介護者支援
- インフォーマルサービスの紹介
「実家の住所+地域包括」で検索すれば、担当センターがすぐ出てきます。料金は完全無料、何度でも相談できます。
「ケアマネがついていないので相談しにくい」と思っているご家族こそ、まず地域包括に電話してみてください。
「サービスを使うのは甘えではない」家族側の心構え
ここまでサービスの話をしてきましたが、最後に一番大事な話をします。それは家族の心構えです。
罪悪感は「愛情の証」だけど、判断材料にはならない
「サービスを使うのは、親に申し訳ない」 「自分が看てあげないと、可哀想」
この罪悪感は、ご家族が親御さんを大切に思っている証拠です。否定するつもりはありません。
でも、この罪悪感を判断材料にすると、ほぼ確実に間違えます。
罪悪感に従って「自分でやる」を選ぶと、共倒れになる。共倒れになると、結局親御さんは施設に入ることになる。結果として、罪悪感に従った方が、親御さんを家に置いておけなくなるのです。
判断は罪悪感ではなく、「どうすれば長く在宅で看られるか」という視点でしてください。
「介護のプロを頼る」は最高の親孝行
ヘルパー・看護師・デイサービススタッフは、何年〜何十年も介護をやってきたプロです。家族では絶対に再現できない技術と知識を持っています。
- 安全な入浴介助
- 床ずれの予防処置
- 認知症の方への声かけ
- 嚥下機能を保つ食事の工夫
- 廃用症候群を防ぐ離床介助
家族が手作りで頑張るより、プロに任せた方が親御さんの健康状態は良くなります。
「家族の手で看るのが愛情」という古い考え方は、もう手放しましょう。プロを呼ぶこと自体が、現代の介護の愛情表現です。
「自分の人生」を捨てないでください
介護者の方によく言うことを書いておきます。
「あなたの人生は、あなたのものです。親御さんを大切にすることと、あなたが自分の人生を生きることは、両立できます。」
- 仕事は辞めなくていい
- 趣味は続けていい
- 友人と会っていい
- 旅行に行っていい
これら全部、罪悪感なくやってください。それを可能にするために、介護保険があります。
親御さんが元気だった頃、子であるあなたに望んでいたのは「自分の人生を捨てて介護に専念する姿」ではなかったはずです。親御さんは、あなたが幸せに生きることを望んでいるはずです。
その気持ちに応える形が、「サービスを使って、自分の人生も大事にする介護」です。
まとめ|共倒れを防ぐ3つの行動指針
長くなりましたが、最後に行動指針を3つに絞ってお伝えします。
①「自分たちだけで」を今日でやめる
家族だけで在宅介護を完結させようとするのは、最初から無理な計画です。今日この瞬間から、「家族だけで」という発想を手放してください。
要介護認定を受けていなければ、まず地域包括支援センターに電話。要介護認定を受けていれば、ケアマネに「もっとサービスを増やしたい」と相談。動き出すのは今日でいいです。
②「介護者を倒さない」をプラン目標にする
ケアプランを組む時、「介護者が倒れないこと」を最優先目標に据えてください。
- 主介護者の睡眠時間が確保できているか
- 主介護者が月に何日休めているか
- 主介護者の通院・健康診断が続いているか
- 主介護者に「自分の時間」があるか
このチェックリストでプランを評価して、足りなければサービスを増やします。要介護者の状態だけでなく、介護者の状態もケアプランの対象です。
③罪悪感ではなく「持続可能性」で判断する
「サービスを使うのは申し訳ない」という罪悪感ではなく、「この体制で5年・10年続けられるか」で判断してください。
続けられない体制は、必ずどこかで破綻します。破綻する前に体制を組み替えるのが、家族と本人を守る唯一の方法です。
最後に、現場で介護者の方によく言うことを書いておきます。
「家族だけで頑張ることが、ご本人にとって一番幸せだとは限りません。プロを呼んで、家族は『家族の役割』に専念する。それが、ご本人もご家族も長く続けられる介護のかたちです。」
「家族の役割」とは、介助者ではありません。子としての役割、配偶者としての役割、一緒に過ごす役割です。
介助はプロに任せて、あなたは「お父さんの娘」「お母さんの息子」「夫の妻」のままでいてください。
それが、共倒れを防ぐ最大のコツです。
困った時は、地域包括支援センターに電話してみてください。無料で何度でも相談できます。動き出すのは、今日からで間に合います。
この記事を書いた人
むむぶどう
社会福祉士・ケアマネジャー20年。介護施設・在宅サービスの現場で、ご本人とご家族の支援に関わってきました。福祉の制度を「使える形」にして届けたい、と思って発信しています。
▶ note(現場のリアル・体験談):https://note.com/mumubudou
▶ X(毎朝のつぶやき・現場の小ネタ):https://x.com/mumubudo
ブログでは「制度の使い方」を、noteでは「現場のリアル」を、Xでは「今日の気づき」を発信しています。
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