「療育手帳があれば、電車は半額になるんでしょ?」
そのとおりです。でも、どの切符を買って、どこで手帳を見せるのかまでは、意外と知られていません。福祉の窓口で働いていた人でも知らなかった、ということがあるくらいです。
先に結論です。
- まず手帳の「第1種・第2種」を見る。付き添いと一緒に乗って割引になるのは、多くの会社で第1種の場合です
- 本人が大人で、近い距離(JRは片道100kmまで)を乗る時、券売機に障害者割引のボタンが無ければ、子ども用の切符を本人と付き添いの2枚。この代用ができるかどうかや条件は会社ごとに違います。本人が子どもの時は、窓口で買います
- 子ども用の切符で乗る時は、乗る駅でも降りる駅でも、自動改札ではなく係員のいる改札(窓口)で手帳と切符を出す
- その改札は混むことがあります。混む時間を外す・早めに降りて早めに通る・ゆっくり降りて列が消えてから通るの3つで、列を避けられます
私は社会福祉士として福祉の現場に20年。障害のある方の外出に付き添った経験から、電車の乗り方を手順の形でまとめました。
療育手帳で電車は安くなる?まず手帳の「第1種・第2種」を見る

割引の条件は、手帳に書かれた「第1種」か「第2種」かで変わります。 出かける前に、ここを1回だけ確かめておきませんか。
手帳のどこを見る?
療育手帳には、「旅客鉄道株式会社旅客運賃減額」という欄があります。ここに「第1種」か「第2種」が書かれています。JR西日本の案内では、顔写真が貼られ、この欄に記載のある手帳が割引の対象です。
この欄は、手帳の「A・B」などの区分とは別に書かれています。区分から決めつけず、欄の記載で確かめてください。記載が見当たらない時は、手帳を出した市区町村の窓口に聞いてください。(自治体によって手帳の名前や形が違います。東京都は「愛の手帳」など)
身体障害者手帳・精神障害者保健福祉手帳も、多くの会社で第1種・第2種に分けて扱われます。精神の手帳は欄の記載がないこともあり、会社によって扱いが違うので、乗る会社の案内で確かめてください。
第1種と第2種で、何が違う?
JR西日本の案内をもとにすると、こうなります。
- 第1種で、付き添い(介護者)と一緒に乗る:距離に関係なく、本人も付き添いも普通乗車券が5割引
- 第1種・第2種で、ひとりで乗る:片道の営業キロが100kmを超える時だけ、普通乗車券が5割引
- 第2種で、付き添いと一緒に乗る:片道100km以下なら、本人も付き添いも普通乗車券は割引になりません(100kmを超えれば本人だけ5割引。12歳未満の定期券は例外あり)
特急券やグリーン券は、割引になりません。付き添いの割引は、本人1人につき1人です。
数字にすると、片道200円の区間なら、2人分400円が200円になります。往復なら400円の差。月に何度も出かける家族には、小さくない金額です。
会社によって、条件が違う
ここが一番の注意点です。割引の条件は、鉄道会社ごとに違います。
- 東武鉄道は、第1種の付き添いつきなら、普通券もICカードも本人・付き添いとも5割引
- 京阪電車は、障がい者割引は付き添いと一緒の時だけ(ひとりで乗る時は割引なし)
第2種の人が近くの駅まで乗る時は、割引にならない会社が多いです(JR西日本・東京メトロ・東武鉄道・京阪電車で確認した範囲)。乗る会社の公式ページか、駅の係員に確かめてください。
どの切符を買う?券売機にボタンがない時・ある時

券売機に障害者割引のボタンがあるかどうかで、買う切符が変わります。 地域や鉄道会社によって、ある駅とない駅があります。
ボタンがない時は、子ども用の切符を2枚
私がよく使う駅の券売機には、障害者割引のボタンがありません。ボタンがない券売機では、子ども用(小児用)の切符を、本人の分と付き添いの分の2枚買います。子ども用の切符は大人の半額なので、5割引と同じ金額になります。
この代用は、本人が大人の時の方法です。本人が子どもの時は、子ども運賃のさらに半額になるため、窓口で買います(JR西日本)。
JR西日本の案内では、この「代用」ができるのは100kmまでの普通乗車券に限られます。
ボタンがある時は、その切符を買う
券売機に障害者割引のボタンがある会社では、その切符を買います。
たとえば京阪電車は、京阪線の各駅のタッチパネル式券売機で割引の乗車券を売っています。買う時に、手帳を駅の係員に見せる形です。
券売機で買えない時は、窓口で
次の時は、券売機ではなく窓口で買います。
- 本人が子ども(小児・乳幼児)の時:JR西日本では、券売機での代用はできず、窓口で買う案内です
- 100kmを超える時や、ほかの会社の線へ乗り継ぐ時:窓口で相談します(東京メトロは、他社線との連絡乗車券は券売機で買えない案内です)
窓口では手帳を見せます。JR西日本では、手帳のコピーでは買えません。マイナポータルと連携した障害者手帳アプリ「ミライロID」でも買えますが、その場合も手帳の携帯は必要です。
次に乗る駅の券売機に、ボタンがあるか見てみませんか。

どこで手帳を見せる?自動改札ではなく、係員のいる改札へ

子ども用の切符で乗る時は、乗る駅でも降りる駅でも、自動改札を通りません。 係員のいる改札(有人改札・窓口)で、手帳と切符を出します。
子ども用の切符で乗る時
JR西日本の案内では、子ども用の切符で代用した時は、係員のいる改札を通り、手帳かミライロIDを見せます。
付き添いの分も子ども用の切符なので、2枚とも手帳と一緒に出します。 降りる前に、切符2枚と手帳を付き添いが手に持っておくと、改札で探さずに済みます。
見せるタイミングは、会社で違う
子ども用の切符で代用するJRなどでは、上のとおり乗る駅・降りる駅の両方で係員のいる改札を通ります。そのほかの会社では、手帳を見せる場面が違うことがあります。
- 乗る時に見せる:東武鉄道は、大人が東武線内だけを乗る時、券売機で子ども用を買い、入場時に手帳を見せる案内です。東京メトロは、券売機で子ども用を買い、駅係員から乗車券に割引の証明を受けます
- 買う時に見せる:京阪電車は、券売機で買う時に係員に手帳を見せ、京阪線は自動改札で出入りします
迷ったら、乗る駅で係員に「療育手帳で、付き添いと2人です」と伝えてみませんか。
ICカードで乗れる会社もある
「ICカードでは割引にならない」と思われがちですが、これも会社で違います。
- 東京メトロ・東武鉄道は、第1種の人と付き添いがICカードで乗る時、乗る駅はタッチし、降りる駅でタッチせずに係員に手帳を見せると5割引になります
- 首都圏の「障がい者用PASMO」や、JR西日本の「特別割引用ICカード」のように、第1種の本人と付き添い用のICカードもあります。東武鉄道では、障がい者用PASMOの2人が一緒に乗れば自動改札を使えます
使える地域や手続きは限られます。気になる時は、乗る会社の窓口で聞いてみてください。

窓口の列で困らないためには?通り方は3つ

係員のいる改札は1か所だけのことが多く、混むと列ができます。 付き添った外出で、降りた駅の窓口にいつもより長い列ができて、時間がかかったことがありました。乗る駅の窓口が混むこともあります。
自動改札は流れているのに、窓口の前だけ人が止まっている。そこで待つ時間が、外出のいちばんの山になることがあります。
だから、列に並ばずに済む通り方を、乗る前に決めておきます。
① 混む時間を外す
通勤・通学の時間帯や、イベントのある日は、窓口にも人が集まります。出かける時間を少しずらすだけで、列に当たりにくくなります。
② 早めに降りて、早めに通る
降りる駅が近づいたら、ドアの近くで降りる準備をします。ほかの人より先に改札へ向かえば、列ができる前に窓口を通れます。 ただし、ホームでは急がず、走らないこと。混んでいる時は無理をせず、③に切り替えます。
③ ゆっくり降りて、列が消えてから通る
反対に、急がない方法もあります。ホームのベンチでひと息ついてから改札へ向かうと、列がなくなった頃に通れます。
どれが合うかは、その人と、その日の駅の様子で変わります。①〜③を、いくつか持っておくと動きやすくなります。あなたの家族には、どれが合いそうですか。

待つのが苦手な人には?列の前でかける声

並ぶことが分かりにくい人には、「待つ理由」と「あとどれくらいか」を先に伝えます。 それでも難しい時は、列から離れます。
苛立ってしまうのは、おかしなことではない
付き添った方には、列で待つ意味が伝わりにくく、苛立ってしまいました。
並ぶ理由が見えないまま、止まって待たされる。これは、誰にとってもしんどいことです。苛立ちを止めようとするより、待つ理由と終わりが見えるようにするほうが近道です。
見通しを伝える
その場では、なだめながら、見通しを伝えました。以下は、実際の言葉ではなく、伝え方の例です。
- 「手帳を見せたら、外に出られるよ」
- 「あと3人で、私たちの番だよ」
「いつ終わるか」が分かると、待つ時間に区切りがつきます。言葉は、その人に伝わりやすいものに置きかえてみませんか。指で残りの人数を示す・指差しで「あそこを出たらおしまい」と見せる、など目で見える形もあります。
窓口から離れる
それでも落ち着かない時は、窓口から離れるように促しました。 列の前に立ち続けるより、少し離れた壁ぎわやベンチで待つほうが、本人も周りも楽になります。
以下も、実際の言葉ではなく、伝え方の例です。
- 「先にベンチで座って待とう」
離れたあとは、列が短くなってから戻れば大丈夫です。待つのが苦手な人と出かける時は、①〜③の通り方を先に決めて、列そのものに当たらないようにしておくと、こうした場面を減らせます。
よくある質問

Q. 手帳を忘れたら、割引で乗れますか?
JR西日本では、手帳を持っていないと割引の切符は買えません。コピーでも買えません。ミライロIDで買った時も、手帳の携帯を求めています。出かける前に、財布と一緒に手帳を確かめてください。
Q. 特急や新幹線も半額になりますか?
運賃(乗車券)は、第1種で付き添いと一緒の時や、片道100kmを超える時は割引の対象ですが、特急券・グリーン券は割引になりません(JR西日本)。
Q. 窓口に並ばずに切符を買う方法はありますか?
JR西日本では、マイナンバーカードを持っている人は、ネット予約「e5489」で割引の切符を買い、駅のみどりの券売機で受け取れます。乗る会社に同じような方法があるかは、公式ページで確かめてください。
Q. 外出の付き添いを頼めるサービスはありますか?
障害のある方の外出を支えるサービスは、障害福祉サービスの中にあります。種類と使い方は、こちらにまとめています。
▶ 障害福祉サービス完全ガイド|種類・対象・利用の流れを現役の社会福祉士が解説
まとめ:手帳の種別を見て、切符と通り方を先に決める

要点は4つです。
- 手帳の「第1種・第2種」を見る。付き添いと一緒の割引は、多くの会社で第1種
- 本人が大人で近い距離なら、券売機にボタンが無ければ子ども用の切符を本人と付き添いの2枚(できるかどうかは会社による)
- 子ども用の切符で乗る時は、乗る駅でも降りる駅でも、係員のいる改札で手帳と切符を出す
- 窓口の列は、混む時間を外す・早めに降りる・ゆっくり降りるで避ける
次のうち1つでも当てはまるなら、乗る前に会社の案内を1回見ておくと安心です。
- 手帳が第2種で、近くの駅まで乗る
- 本人が子ども(小学生以下)
- ほかの会社の線に乗り継ぐ
今日できることは1つ。次に乗る会社の「障害者割引」のページを、前の晩に開いてみませんか。
このあとは、バスやタクシーに乗る時の話も、順に書いていく予定です。
この記事を書いた人
むむぶどう🍇
社会福祉士・ケアマネジャー。社会福祉士として福祉の現場に20年、ご本人とご家族の支援に関わってきました。福祉の制度を「使える形」にして届けたい、と思って発信しています。
電車の割引は、知っていれば外出のたびに助かる制度です。切符と通り方を先に決めて、出かける日を少しでも楽にしてください。
▶ note(現場のリアル・体験談):https://note.com/mumubudou
▶ X(毎朝のつぶやき・現場の小ネタ):https://x.com/mumubudo
ブログでは「制度の使い方」を、noteでは「現場のリアル」を、Xでは「今日の気づき」を発信しています。
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参考資料(2026年10月10日確認)
- JR西日本「割引制度のご案内」 https://www.jr-odekake.net/railroad/service/barrierfree/discount/
- JR西日本「特別割引用ICカード」 https://www.jr-odekake.net/railroad/service/barrierfree/discount/ic-card/
- JR西日本「知的障害者旅客運賃割引規則」(2026年3月14日現行) https://www.jr-odekake.net/ticket/guide/assets/pdf/stipulation/2023/covenant_chiteki.pdf
- 東武鉄道「お体の不自由なお客さまへの運賃割引」 https://www.tobu.co.jp/railway/ticket/disability/
- 東京メトロ「障がい者割引」 https://www.tokyometro.jp/ticket/guide/disability/index.html
- 京阪電車「割引乗車券」 https://www.keihan.co.jp/traffic/ticket/discount.html
※この記事は、療育手帳などで電車に乗る時の一般的な流れです。割引の条件・切符の買い方・手帳を見せる場所は、鉄道会社ごとに違い、変わることもあります。乗る前に、利用する鉄道会社の公式ページか駅の係員にご確認ください。


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