親が「もう作るのがしんどい」と言ったら?宅配食を頼む前に見る「作りたい気持ち」の線引きと、1食800〜1,000円の目安

宅配食を頼む前に、1つだけ見ること 在宅介護のリアル

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離れて暮らす親から「もう作るのがしんどい」と聞いて、宅配食を検索していませんか。頼めば楽になる気はするけれど、本人が喜ぶのか、いくらかかるのか、そもそも介護保険で何とかならないのか。決めきれないまま、また冷蔵庫の中が気になる。

先に結論をお伝えします。宅配食を頼むかどうかは、値段より先に「本人に作りたい気持ちがあるか」で決めます。作りたい気持ちがあるなら、買い物の支援を入れて「作る側」を残す。もともと料理が苦手、買い物はできても作れない、という方なら配食。ここが分かれ目です。費用の目安は1食800〜1,000円、味は相性なので複数を順に試すのが現場の定番です。

私は社会福祉士として福祉の現場に20年。地域包括支援センターにいた頃、「食事の準備をするのが大変」は本当に多い相談で、特に一人暮らしの方から届きました。現在はケアマネジャーとして、配食を入れるか、買い物支援で作る側を残すかを、ご本人と一緒に決めています。

「もう作るのがしんどい」に、最初に見るのは値段?

値段ではありません。本人に、作りたい気持ちがあるかどうかです。

同じ「作るのがしんどい」でも、中身は2つに分かれます。

  • 買い物に行くのがつらい。でも台所に立つのは嫌いじゃない
  • もともと料理が苦手。買い物はできても、作るのがしんどい

前者は、しんどいのは「買い物」で、作ることではありません。ここに配食を入れると、本人が持っていた「作る側」の役目まで奪ってしまいます。後者は、買い物を手伝っても台所が動きません。この方には配食が合います。

ご本人の望むものが何かによって、提案は変わります。お弁当よりも、買い物支援でスーパーの物を買って食べたい、という方もいます。「作れないなら配食」と決める前に、本人が何を望んでいるかを聞くところから始めます。

買い物支援か、配食か

だから、最初に聞くのはこれです。「買い物がしんどいの? それとも作るのがしんどいの?」。親に、この2つを分けて聞いたことはありますか。

答えが「どちらも」だったり、本人も分からなかったりする場合は、担当のケアマネジャーか地域包括支援センターに、そのまま伝えてください。一緒に分けてもらえます。

訪問介護(ヘルパー)に頼めるのはどこまで?

「作る側を残す」の具体的な形が、訪問介護の買い物支援や調理の支援です。介護保険の訪問介護には、掃除・洗濯・調理・買い物といった家事を手伝う「生活援助」があります。

ただし、誰でも使える家事代行ではありません。厚生労働省の通知(老計第10号)に、生活援助の対象が書かれています。「利用者が単身、家族が障害・疾病などのため、本人や家族が家事を行うことが困難な場合」。一人暮らしの方や、同居家族が病気などで家事ができない場合が対象で、家族が同居していて家事ができるなら、原則は入りません。

同じ通知には、生活援助の例として「一般的な調理」「日常品等の買い物」が挙げられています。もう1つ、見落とされやすい形があります。ヘルパーが代わりに作るのではなく、本人と一緒に手助けしながら行う調理や、店に一緒に行って本人が品物を選べるよう援助する形です。これは通知の中で、身体介護の「自立生活支援・重度化防止のための見守り的援助」として例示されていて、ケアプランに位置づけたうえで使います。

ただしこれは、通知の見出しにあるとおり「安全を確保しつつ常時介助できる状態で行う見守り」が前提です。一人で台所に立てる方に「話し相手として一緒に作る」形は当てはまりません。

つまり、作りたい気持ちがある方には、本人の状態によってこういう組み立てがあり得ます。

  • 買い物だけヘルパーに頼み、調理は本人がする
  • ヘルパーと一緒に買い物に行き、自分で選ぶ
  • ヘルパーと一緒に台所に立って作る

どれにするかは、ケアマネジャーが本人の状態を見て、ケアプランで決める部分です。要支援の方は総合事業の訪問型サービスになり、市町村で内容が違います。運用は自治体や保険者で差があるので、「うちの親の場合はどこまでできますか」と担当に聞いてみてください。訪問介護で頼めないことの全体像は、別の記事にまとめてあります。

ヘルパーに頼めないこと完全ガイド|現役の社会福祉士20年が見た訪問介護の境界線と、家族が知っておきたい相談先

配食サービスには、どんな種類がある?

作りたい気持ちがない、あるいは作れない方には配食です。配食は介護保険のサービスではなく、基本は自費(保険外)のサービスですが、入口は1つではありません。大きく3つに分かれます。

配食の主な3つの入口

市町村の配食サービス

厚生労働省の資料では、介護予防・日常生活支援総合事業の「その他の生活支援サービス」の例として、「栄養改善を目的とした配食、定期的な安否確認・緊急時の対応等」が挙げられています。同じ資料に「事業内容は、市町村の裁量」ともあるので、あるかどうか、誰が対象か、いくらかかるかは市町村で違います。総合事業の配食は主に要支援・事業対象者向けで、要介護の方向けには市町村独自の配食サービスを持つところもあります。親の住む市町村に配食サービスがあるか、調べたことはありますか。まず地域包括支援センターか市区町村の高齢者担当の窓口に、「配食サービスはありますか」と聞いてみてください。

民間の宅配食

事業所が自宅に届けるお弁当です。毎日届くお弁当型もあれば、冷凍でまとめて届いて電子レンジで温める型もあります。ケアマネジャーや包括は地域で使われている事業所を複数知っているので、「合いそうなところを2〜3か所教えてください」と聞くのが早いです。

治療食・ムース食など

エネルギー・たんぱく質・塩分を調整した食事(糖尿病食や腎臓病食など)や、飲み込む力が落ちた方向けにやわらかさに配慮した食事に対応している事業所があります。厚生労働省の配食事業のガイドラインでは、前者を「栄養素等調整食」、後者を「物性等調整食」と呼んでいます。同じガイドラインで利用者に求められているのが、医師や管理栄養士から栄養食事指導を受けている場合は、その内容を事業者に正確に伝えること。指導から時間がたっていたり、体の状態に変化があったりする場合は、かかりつけ医に相談したうえで注文する、ともあります。

ここで1つ注意です。配食は食品であって、薬ではありません。どの食事にも「これで良くなる」と期待して頼むのではなく、医師の指示に合った食事を続けやすくする道具として考えてください。

味が合わなくてやめる人が多いって本当?

本当です。私の現場で、配食がすぐ中止になる理由の定番は「味が好みじゃない」。栄養も配達も問題ないのに、口に合わないと続きません。

だから私は、1か所に決め打ちしません。複数の事業所を順に紹介して、合うところを探します。1か所目が合わなければ2か所目、それでも合わなければ3か所目。好みの味と合うかどうかは相性で、事前に当てるのは無理だと思っています。

厚生労働省のガイドラインにも、「味が合わない」「食形態が合わない」「量が多い・少ない」場合は速やかに事業者に相談する、という項目があります。ガイドラインが事業者に求めている項目です。つまり「合わない」と言うのは、わがままではなく想定内の話です。

うまくいった例も書いておきます。一人暮らしの方に配食を入れて、ちゃんと栄養のある食事が取れるようになった方がいます。届いたお弁当なら、主菜も副菜もそろった食事を毎日とれる。ここが配食の一番の価値です。

親が「まずい」と言ったら、そこでやめずに、次の事業所を聞いてみませんか。

配達のときの安否確認は、どこまで期待していい?

配達のときに声をかけてもらえるのか。答えは、してくれる事業所もある、です。全部ではありません。

配達のときに手渡しで安否確認をしてくれる事業所があり、私の現場では、配達の事業所から異常の発見を知らせてもらったケースもあります。ご飯だけでなく「目」も届く。一人暮らしの方には、これが大きいです。

ただし、玄関先に置いて帰る形の事業所もありますし、冷凍でまとめて届く型なら配達の回数そのものが少なくなります。安否確認を期待するなら、申し込む前に2つを聞いてください。

  • 手渡しか、置き配か
  • 本人が出てこなかったとき、誰に連絡してくれるか

この2つで、期待とのずれがなくなります。市町村の配食サービスには、安否確認を組み込んでいるものもあるので、そこも窓口で聞いてみてください。

費用はいくらかかる?

私の現場での目安は、1食800〜1,000円です。糖尿病食やムース食など、一般食でないものはもう少しかかることもあります

月にいくらになるかは、1日に何食頼むかで大きく変わります。夕食だけ毎日なのか、昼と夕の2食なのか。何食にするつもりか、決めていますか。「食数×単価」で、まず自分で見当を付けてみてください。介護保険の1〜3割負担に慣れていると、全額自費の配食は高く感じます。買い物に行けずに食事が偏る状態を放っておいたときの負担と、並べて考えてみてください。

在宅介護の月額全体の中で、配食をどこに置くか。こちらの記事で計算してみてください。

在宅介護にかかる月額費用シミュレーション|要介護1〜5の現実と、家計を守る制度の使い方

頼むまでの流れは?

「作りたい気持ちがない」「作れない」と分かってから、配食が定着するまでの流れです。

相談から定着まで

1. 相談先に「食事の準備が大変」と伝える

要介護認定を受けているなら担当のケアマネジャー、まだなら地域包括支援センターです。「配食を頼みたい」より、「食事の準備が大変と言っている」と伝えてください。そのほうが、買い物支援も含めて選択肢を出してもらえます。

2〜3. しんどい中身を分けて、入口を選ぶ

作りたい気持ちがあるなら訪問介護の買い物支援、なければ配食。相談員やケアマネジャーが本人と話して分けてくれるので、家族は「本人がどっちに見えるか」を伝えるだけで十分です。市町村の配食があるか、民間はどこが使われているか、治療食なら医師の指示内容はどうか。ここは相談先が地域の情報を持っています。

4〜5. 1か所目を試して、安否確認の形を聞く

味が合わなければ、遠慮なく次へ。お試しができるかどうかは事業所ごとに違うので、申し込むときに聞いてください。手渡しか置き配か、出てこなかったとき誰に連絡するかも、契約のときに確認しておくと「思っていたのと違う」がなくなります。

家族からよく出る3つの質問

Q. 本人が「配食なんて嫌だ」と言うときは?

無理に入れません。嫌がる理由が「まだ自分で作りたい」なら、それは最初の線引きで言う「作りたい気持ちがある」側です。まず、買い物だけ手伝う形から入ってみませんか。台所に立てている間は、その役目を残す。作れなくなってきたときに、もう一度話します。

Q. 同居しているけれど、日中は仕事で親が1人。生活援助は使える?

同居家族がいるだけで、一律に使えないとはされていません。厚生労働省の通知(老振発1224第1号)に、同居家族がいることのみを判断基準にして一律機械的に支給の可否を決めないよう、と書かれています。ただし、家族が「できるのにしない」場合は対象外です。日中は本人だけでは食事の準備ができない、家族は仕事で戻れない、といった事情をケアマネジャーに伝えて、個別に判断してもらってください。運用は保険者で差があります。配食なら、同居の有無に関係なく自費で頼めます。

Q. 治療食が必要と言われた。普通の宅配食ではだめ?

医師や管理栄養士の指導を受けているなら、その内容(食事計画)を事業者に伝えて、対応している食種を選んでください。対応していない事業所もあるので、ケアマネジャーに「治療食に対応している配食を」と伝えると早いです。

まとめ: 配食は「作れない」を埋める道具、「作りたい」は奪わない

要点は5つです。

  • 最初に見るのは値段ではなく、本人に作りたい気持ちがあるか
  • 作りたい気持ちがあるなら訪問介護などの買い物支援で「作る側」を残す。もともと苦手・買えても作れないなら配食
  • 配食の入口は市町村の配食・民間の宅配食・治療食などの3つ。あるかどうかは市町村で違う
  • 味は相性。合わなければ次の事業所へ。複数を順に試す
  • 費用の目安は1食800〜1,000円、治療食はもう少し。安否確認をしてくれる事業所もあるので、手渡しか置き配かを申し込む前に聞く

今日できることは1つ。親に「買い物がしんどいの? 作るのがしんどいの?」と分けて聞いてみてください。その答えを、担当のケアマネジャーか地域包括支援センターに、そのまま伝えれば話が進みます。

選択肢の置き場(宅配食を比べたい方へ)

「複数を順に試す」の入口として、民間の宅配食をいくつか並べておきます。ここに載せるのは選択肢の一部です。地域の事業所は、ケアマネジャーや包括に聞くのが早いです。

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  • メディカルフードサービス(栄養価を管理した宅配食。エネルギーや塩分を調整した食事を探すときの入口)
  • 食楽膳(管理栄養士監修・飲み込みに配慮した冷凍惣菜。やわらかさに配慮した食事を探すときの入口)

医師や管理栄養士の指導を受けている方は、「治療食・ムース食など」の章で書いたとおり、その内容を事業者に伝えてから選んでください。地域で使われている事業所は、担当のケアマネジャーや地域包括支援センターに聞くのが早いです。


【この記事を書いた人】

むむぶどう。社会福祉士として福祉の現場に20年、現在はケアマネジャーとして働いています。「もう作るのがしんどい」と言う方に配食を入れるか、買い物支援で作る側を残すかは、今も毎回ご本人と一緒に決めています。その分け方を、家族の側にも持っていてほしくて書きました。


参考資料(一次資料)

※この記事の費用は筆者の現場での目安で、地域や事業所、食種によって変わります。訪問介護の生活援助が使えるかどうかや、市町村の配食サービスの有無・対象・費用は、担当のケアマネジャー、お住まいの地域包括支援センター、市区町村の介護保険担当課にご確認ください。治療食が必要な方は、かかりつけ医や管理栄養士の指導に沿って選んでください。

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