「サービス担当者会議を開きます」
そう書かれた紙が届いても、書いてあるのは日時と場所くらい。何をする場で、自分は何をすればいいのかまでは、たいてい書いてありません。
当日、部屋には知らない人が5人も6人も座っています。ケアマネジャーが資料を配り、書いてあることを順番に読み上げていく。うなずきながら聞いているうちに会議が終わり、最後に署名だけして帰る。
ケアマネジャーの側にも事情があります。5つも6つもの事業所と本人の予定を突き合わせて日を決め、限られた時間の中で決めるべきことを決めなければならない。だから進行は、どうしても「説明して確認する」形になりがちです。
そうなるのは、家族が遠慮しているからではありません。そこが何を話す場なのか、誰からも知らされていないからです。
この記事では、家族が担当者会議で話すことを2つに絞って整理します。前の日に何をメモしていけばいいか、当日どのタイミングで口を開けばいいか、行けないときはどうするかまで、順番に書きました。
結論:家族が担当者会議で話すことは2つだけ
話すことは、この2つです。
1. 各事業所に、お願いしたいこと
2. 自分の親に、どう過ごしていてほしいか
1つ目は具体的な注文です。「デイのトイレのとき、立ち上がるタイミングで一声かけてほしい」「訪問のあとに、冷蔵庫の中を一言メモしておいてほしい」といった、その事業所にしか頼めないこと。
2つ目は方向です。「一日中テレビの前に座っているのではなく、週に一度は誰かと話して笑っていてほしい」「なるべく自分で歩いていてほしい」といった、暮らしの向き。
なぜ「2つ」に絞るのか
会議に出る人は多く、時間は短い。全部を話そうとすると、たいてい何も話せずに終わります。
家族が話す内容を2つに絞ると、家族にしか答えられないことだけが残るからです。体の状態はサービス事業所が見ています。認定の区分は市町村が決めています。けれども、その人が何十年どう暮らしてきて、家族としてこの先どうあってほしいかを知っているのは、そこに座っている家族だけです。
前の晩にメモ用紙1枚。上半分にお願いごと、下半分に「どう過ごしていてほしいか」。これだけで、当日の座り方が変わります。
そもそもサービス担当者会議とは、何をする場?
まず、この会議が何のために開かれるのかを押さえておきます。ここを知らないまま座ると、どうしても「聞く側」になってしまうからです。
集まるのは誰か
ケアマネジャーが招集し、ケアプランに位置づけられたサービスの担当者が集まります。デイサービスの相談員、訪問介護の責任者、福祉用具の担当者、必要に応じて主治医(多くは書面でのやりとりになります)や訪問看護。そこに、本人と家族が加わります。
ここから先は、要介護1〜5の人が使う「居宅介護支援」の話です。要支援1・2の人の場合は、担当が地域包括支援センターなどになり、根拠となる決まりも別になります。ただし、家族が話すことの中身は変わりません。
介護保険の運営基準は、この会議を次のように定義しています。
サービス担当者会議(介護支援専門員が居宅サービス計画の作成のために、利用者及びその家族の参加を基本としつつ、居宅サービス計画の原案に位置付けた指定居宅サービス等の担当者(中略)を招集して行う会議(中略)をいう。)
——指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第38号)第13条第9号
「利用者及びその家族の参加を基本としつつ」。 家族が出席するのは、席が余っているからでも、付き添いだからでもありません。条文に、家族が加わることが前提として書かれています。
家族が「話していい」根拠は、別の条文にある
ただし、この条文が保証しているのは「参加」までです。同じ第9号の本文は、原案の内容について「担当者から、専門的な見地からの意見を求める」と定めています。ここで名指しされているのは、サービス事業所の担当者のほうです。
では、家族が話していい根拠はどこにあるのか。ケアプランの作り方を定めた条文のほうにあります。
運営基準は、ケアプランの原案について2つのことをケアマネジャーに義務づけています(第13条第8号)。「利用者の家族の希望」を勘案して作ること。そして「利用者及びその家族の生活に対する意向」を計画に記載すること。 さらに事前の聞き取り(アセスメント)は、「利用者の居宅を訪問し、利用者及びその家族に面接して行わなければならない」とされています(同第7号)。
家族の希望と意向は、ケアプランの中身そのものです。 会議はその原案を検討する場ですから、家族が話すのは進行の脱線ではありません。議題の一部です。
いつ開かれるか
会議が開かれる主な場面は、次のとおりです。
- ケアプランを新しく作るとき(第13条第9号)
- 要介護更新認定を受けたとき(第13条第15号イ)
- 要介護状態区分の変更の認定を受けたとき(同号ロ)
- ケアプランを変更するとき(第13条第16号。新規作成のときの手順が変更時にも準用されます)
- 福祉用具のレンタルを続けるかどうかを検証するとき(第13条第22号。必要に応じて随時開くとされています)
つまり、認定が更新されたときや区分が変わったときには、会議を開いて計画を見直す必要性を検討することになっています。「認定の結果が届いたあと、しばらくして会議の案内が来た」というのは、この流れです。認定の結果を待っている段階でできる準備は、介護認定の結果が来ない?原則30日の実際と待つ間の5つの準備にまとめています。
なお、担当者会議は毎月開くものではありません。 毎月あるのはケアマネジャーの訪問のほうです。運営基準は、少なくとも1か月に1回は利用者に面接すること、その面接は居宅を訪問して行うことを求めています(第13条第14号。要件を満たす場合に、訪問しない月をテレビ電話などに置き換える例外はあります)。
会議のほうは、たとえば「利用者の状況以外の理由で事業所が変わるだけで、目標もサービス内容も変わらない」といった軽微な変更にあたる場合、必ずしも開かなくてよいとされています。ただしこれは例示で、軽微かどうかは変更の内容ごとに判断されます。しばらく会議の案内が来なくても、それ自体がおかしいわけではありません。
話した内容は記録に残る
もうひとつ、知っておくと役に立つことがあります。
運営基準は、サービス担当者会議等の記録を居宅介護支援台帳に整備し、完結の日から2年間保存することを事業者に義務づけています(第29条第2項第2号ハ)。この年限は市町村の条例で定めることになっており、5年としている市町村もあります。
会議で出た話は、記録に残る前提で扱われます。 何をどこまで書くかはケアマネジャーの判断ですが、その場で出た要望や意向は、次に計画を見直すときの材料として残ります。逆に、黙って座って終わった会議からは、何も残りません。
なぜ、家族は黙ってしまうのか
制度の話はここまで。ここからは現場の話です。
私はケアマネジャーになる前、サービスを提供する事業所の側で担当者会議に出ていました。今も、高齢者の訪問介護や障害のある方の居宅介護に関わっているので、両方の椅子に座ることがあります。
事業所の椅子に座っていたころ、ケアプランをただひたすら読み上げるだけの会議に何度か当たりました。原案の文字を上から順に読み、確認だけして終わる。モヤっとしたのを覚えています。
その会議で何がしたかったのかというと、参加者がそれぞれ、その人の課題といいところを持ち寄ることでした。デイで見えている顔と、家で見えている顔は違います。持ち寄れば、原案に書ききれていなかったことが出てくる。読み上げるだけでは、そこに届きません。
そして、そういう会議のとき、家族はたいてい静かにしていました。困っている様子でもなく、納得している様子でもなく、なんのために集まっているのか分かっていない感じもありました。
それは「ケアマネが中心」という空気のせい
なぜ言い出せないのか。私自身、事業所側の椅子に座っていたときに言い出せなかったので分かります。
担当者会議はケアマネジャーが中心、という雰囲気があるのです。
これは、目の前のケアマネジャーが偉そうにしているという話ではありません。招集するのがケアマネジャーで、資料を作るのもケアマネジャーで、進行するのもケアマネジャー。そうなると、その場の空気が自然と「説明を聞く会」の形になります。誰が悪いという話ではなく、場の構造がそうなりやすいということです。
だから家族が黙るのは、性格でも遠慮でもありません。話していい場だと、誰も言っていないだけです。
現場のひとこと
「家族の一言で会議の空気が変わった場面」を、私は正直あまり覚えていません。それは家族の力が足りないからではなく、そもそも家族が話す場になっていなかったからだと思っています。だから今、自分が回す側になったときは、できるだけ多くの人にできるだけ多く話してもらえるように意識しています。担当者会議は、今その人に関わっている人が一堂に集まる貴重な場です。本人が中心にいて、各事業所もそれぞれ主人公です。
会議の前に用意する「メモ1枚」
ここから準備の話に入ります。用意するのは資料ではなく、メモ用紙1枚です。
まず、直近1週間を思い出す
書く材料は、記憶をたどるより、直近の出来事から拾うほうが早く出ます。
- ここ1週間で、ヒヤッとしたこと(浴室で滑りかけた、薬が2日分残っていた)
- ここ1週間で、本人が口にした言葉(「もう行きたくない」「あの人は話しやすい」)
- ここ1か月で、できなくなったこと・できるようになったこと
- 自分が今いちばん不安に思っていること
固有名詞と日付が入っていれば十分です。文章にする必要はありません。
メモの上半分:各事業所にお願いしたいこと
拾った材料を、どの事業所に頼むことかで仕分けします。
- デイサービスへ:入浴のとき、洗い残しを一言声かけしてほしい
- 訪問介護へ:冷蔵庫の中で傷んでいるものがあったら、連絡ノートに書いてほしい
- 福祉用具へ:玄関の段差で手すりの位置が合っていない気がするので見てほしい
宛先を書くのが肝心です。「なんとなく心配です」では誰も動けませんが、「デイの入浴で」と言えば、その場でデイの相談員が「では、こうします」と答えられます。
デイサービスに何を聞き、何を頼めるのかについては、デイサービスの選び方|見学で聞く4つの質問に、見学のときの質問例をまとめました。同じ考え方が会議でも使えます。
メモの下半分:親にどう過ごしていてほしいか
こちらは注文ではなく、方向です。うまく書こうとせず、思っていることをそのまま書いてください。
- 一日中テレビの前に座っているのではなく、週に一度は誰かと話していてほしい
- 転ぶのは怖いけれど、家の中は自分の足で歩いていてほしい
- 昔から料理の人だったので、味付けだけでも自分でやらせてあげたい
この項目は、家族以外の誰も書けません。 サービス事業所は今の状態は見ていますが、その人が何十年どう暮らしてきたかは知らないからです。
在宅か施設かで迷っている段階なら、在宅介護か施設か|本当の判断基準もあわせて読んでみてください。「どこで暮らすか」より先に「どう過ごしてほしいか」が決まると、判断の軸が持てるはずです。
前日までに送っておくと、さらに通りやすい
書いたメモは、出席するときでも、当日持っていくだけではもったいない。前日までに写真に撮って、ケアマネジャーへ送っておいてください。
事前に分かっていれば、ケアマネジャーは会議の議題に組み込んだり、原案にあらかじめ反映したりできます。当日はじめて出た要望は、その場では結論が出ず、次回に持ち越しになることもあります。
当日、どのタイミングで話す?
会議そのものは、30分前後で終わることが多いです。ケースによって前後しますが、たっぷり時間があるわけではありません。だからこそ、その場で考えながら話すより、書いてきたメモを読むほうが確実です。
メモを持っていっても、口を開くきっかけがなければ持ち帰るだけ。タイミングを2つ用意しておきます。
会議は、だいたいこの順で進む
進行の仕方はケアマネジャーによって違いますが、細かく分けると、おおよそこの流れです。
1. 開始の挨拶と、今日の目的の説明
2. 参加者の自己紹介
3. 本人と家族の状況、そして意向の確認
4. ケアマネジャーから、現場の状況の説明
5. ケアプランの原案の説明
6. 各事業所から意見や提案をもらう
7. ケアの方針と、役割分担の確認
8. 残った課題があれば、その確認と共有
9. 終わりの挨拶
注目してほしいのは3番です。 家族の意向を聞く場面は、原案の説明よりも前に置かれています。あとから付け足す機会ではなく、そこから組み立てる材料として最初に聞かれるということです。前の章で見た第13条第8号が「家族の生活に対する意向」を計画に記載するよう求めているのは、まさにここに対応しています。
つまり、家族が話す枠は、はじめから用意されています。
振られたときに話す
多くの場合、3番のあたりで「ご家族はいかがですか」と振られます。ただし進行は会議によって違うので、最初からメモを開いて膝に置いておきます。
このとき、メモの上半分(お願いごと)から先に出します。 具体的な注文のほうが、その場で答えが返ってきやすいからです。デイの担当者が「では次回から」と応じたところで、下半分(どう過ごしていてほしいか)を続けます。順番が逆だと、方向の話だけで終わって注文が流れます。
上半分のお願いごとは、6番で各事業所から意見が出たあとにもう一度出番があります。原案を聞いて「それなら、これもお願いできますか」と思いついたことは、そこで足せます。
振られなかったら、自分から挟む
振られずに終わりそうなときは、こう言えば十分です。
- 「1つだけ、デイさんにお願いしたいことがあるのですが、いいですか」
- 「メモを持ってきたので、最後に読ませてもらってもいいですか」
「いいですか」まで言ってしまうのがコツです。 手を挙げるだけだと、進行の流れに飲まれます。
割って入ったら迷惑ではないか、と気にする必要はありません。 回す側からすると、家族から「1つだけいいですか」と声が出るのは、むしろ助かります。
会議は長くありません。全部を話そうとせず、上半分から2つ、下半分から1つ。それで十分に伝わります。話しきれなかったことは、会議のあとにケアマネジャーへ個別に伝えれば、次の見直しに回ります。その場で結論が出ず持ち帰りになることもありますが、それは失敗ではありません。
伝え方のコツ:お願いは「要望」、暮らし方は「情景」
同じ内容でも、言い方ひとつで伝わり方は変わる。2つの項目は、それぞれ形を変えて出すのがおすすめです。
お願いは、要望の形にする
不安をそのまま口にすると、相手は受け止め方に困ってしまう。「誰に・何を・どうしてほしいか」まで言い切ると、その場で答えが返ってきます。
- △「お風呂が心配で……」
- ○「デイの入浴のときに、背中の洗い残しを一言声かけしてもらえませんか」
- △「薬をちゃんと飲めているか分かりません」
- ○「訪問のときに、お薬カレンダーの残りを見て、連絡ノートに書いてもらえませんか」
ただし、言い切るのは「してほしいこと」までです。 「絶対に一人にしないでほしい」のように、本人の行動を止めることを求める形にすると、事業所は受けられません。運営基準は、緊急やむを得ない場合を除いて、利用者の行動を制限する行為を禁じているからです(第13条第2号の2)。
転ぶのが怖いという心配を伝えて、そのうえで「では、こうしましょう」を一緒に決める。そのほうが、結果として安全に近づきます。
暮らし方は、情景で伝える
こちらは逆に、言い切らないほうが伝わります。目に浮かぶ場面で話すと、その人らしさが共有されます。
- △「もっと活動的に過ごしてほしいです」
- ○「昔から人と話すのが好きな人で、近所の集まりでは一番よくしゃべっていました。今は一日誰とも話さない日があるので、週に一度でも誰かと話して笑っている時間があるといいなと思っています」
△の言い方は、抽象的すぎて事業所が何をすればいいか決められません。○の言い方なら、デイの相談員が「では席の配置を考えましょうか」と動けるはずです。
初回の会議で家族が言う一言(セリフ例3つ)
はじめての担当者会議は、原案の説明が長くなり、家族は「聞いて終わり」になりやすい。
だから初回は、口を開く場面を3つだけ決めておきます。 言うことは短くて構いません。
1. 自己紹介:自分が見ている時間帯を言う
「長女の◯◯です。平日の日中は仕事で、母といるのは夜と土日です。今日は2つ、お願いしたいことを持ってきました」
「夜と土日」と言うだけで、事業所は昼の様子を家族に聞いても分からないと理解できます。 最後の一言は予告です。あとで振ってもらいやすくなります。
2. 意向を聞かれたとき:本人の言葉と自分の希望を分ける
「本人はデイについて『行ってもいいけど、朝が早いのはつらい』と言っていました。私としては、週に1回でも外で誰かと話していてほしいです」
ケアプラン(第1表)には本人と家族の意向を書く欄があり、ケアマネジャーは「本人:〜」「家族:〜」と分けて書くことが多いです。混ぜて話すと、その書き分けができません。
3. 終わりぎわ:家でやることと次の見直しを聞く
「今日決まったことで、家で私がやることはありますか。次に見直すのはいつごろでしょうか」
この一言で、家族の役割と次の機会が、その場で言葉になります。
3つとも言えなくても大丈夫です。まだ判断がつかないときは、「1か月やってみてから、また相談させてください」と言ってみませんか。
本人(親)が同席するときに、気をつけたいこと
会議は原則として本人も参加します。だからこそ、注意したいことが3つあります。
1. 本人の前で言えないことは、事前に伝える
「最近すぐ怒る」「もう限界です」といった話は、本人の目の前で出すと、その日から家の空気が変わってしまうことがあります。
言いにくいことは、会議の前にケアマネジャーへ電話やメールで伝えておくのがおすすめです。ケアマネジャーは、本人を傷つけない形に言い換えて場に出す方法を考えられます。
ただし、事前に伝えるのは議題に載せてもらうためであって、本人抜きで方向を決めるためではありません。暮らし方が変わるような話は、言い方を整えたうえで、最後は本人のいる場に戻します。ケアプランの原案は本人か家族に説明し、文書で本人の同意を得ることになっているからです(第13条第10号)。
2. 本人の話す時間を、家族が奪わない
家族が代わりに全部答えてしまうと、本人が困っていることを直接聞き取る機会が消えます。会議でいちばん大事なのは、本人が今何に困っていて、どう感じているかを、その場の全員が聞くことです。
本人が黙っているときは、答えを引き取らずに少し待つ。それだけで、本人の言葉が出てくることがあります。
3. 会議の場では出てこない本音がある
とはいえ、大勢の前で本音を言う人はそう多くありません。本人の本当の気持ちは、もっと日常の隙間で出てきます。どんな場面で本音がこぼれるのかは、利用者の本音はどこで聞ける?送迎車内で本音が出る理由に書きました。
会議で本人が「大丈夫です」としか言わなかったとしても、それが結論とは限りません。家族が別の場面で聞いた言葉を会議に持ち込むと、そこが埋まります。
本人(親)が会議に出られないときは?
入院中で外に出られない。体調が不安定で、30分座っていられない。本人不在で担当者会議を開く場面は、実際にあります。
先に結論です。本人が出られなくても、会議が開かれることはあります。ただし本人の意向は、会議の前と後に本人へ戻します。 本人が出られなかった理由と、意向をどう確かめたかは、会議の記録(要点)に残るのが通例です。
本人不在でも開ける根拠
条文は「利用者及びその家族の参加を基本としつつ」と書いています(第13条第9号)。「基本」であって、出席が開催の条件とは書かれていません。解釈通知は、さらにこう書いています。
利用者やその家族の参加が望ましくない場合(家庭内暴力等)には、必ずしも参加を求めるものではないことに留意されたい。——「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準について」(平成11年老企第22号)第2の3(8)「サービス担当者会議等による専門的意見の聴取(第9号)」の項
例示は家庭内暴力ですが、本人の参加が現実的でないときに本人抜きで開くこと自体は妨げられていない、と読めます。実際の扱いは担当のケアマネジャーに聞いてみてください。
会議の前に聞き、会議のあとに伝える
家族がやることは2つです。
- 会議の前に、本人に聞いておく。 「デイは行ってみてどう?」「家で何がいちばんしんどい?」。返ってきた言葉を、メモの下半分に本人の言葉のまま書きます。当日は「本人はこう言っていました」と読み上げれば十分です
- 会議のあとに、決まったことを本人に伝える。 先に書いたとおり、原案は本人か家族に説明したうえで、文書で本人の同意を得ることになっています(第13条第10号)。本人不在で開いても、本人の同意なしにプランは動きません。本人が署名しづらいときの扱い(家族の代筆など)は、ケアマネジャーに聞いてください
本人と家族の希望が食い違うときは、「本人は家にいたいと言っている。私は日中ひとりが心配」と、混ぜずに並べて出してください。それだけで、本人のいない会議でも本人が中心にいる形は保てませんか。
参加できないときは、どうする?
仕事が休めない、遠方に住んでいる、当日どうしても行けない。そういうときの選択肢を、通りやすい順に整理します。
会議に出られないことそのものより、仕事と介護をどう並走させるかで悩んでいるなら、働きながら親の介護が始まったら|最初の30日にやることリストに、休みの取り方と職場への伝え方をまとめています。
まず、日程を相談できないか聞く
案内が届いたあとでも、「その日は動けないのですが、別の日は難しいでしょうか」と聞いて構いません。
日程は、ケアマネジャーが複数の事業所と本人の都合をすり合わせて決めています。全員の希望どおりにはなりませんが、言っていない希望は、最初から候補に入りません。
オンラインで参加できる場合がある
運営基準は、サービス担当者会議をテレビ電話装置その他の情報通信機器を活用して行うことができると定めています。ただし、本人や家族が参加する場合は、その活用について本人・家族の同意を得ることが必要とされています(第13条第9号)。
これは家族の側のハードルではありません。本人や家族の意向を無視して、勝手にオンラインに切り替えてはいけない、という利用者を守るための決まりです。 家族のほうから希望する分には、同意はその場で成立します。
実際にオンラインでつなげるかどうかは、事業所の設備や自治体の運用によって差があります。まずはケアマネジャーに「オンラインで参加できませんか」と聞いてみてください。 頭から無理と決めつける必要はありません。
書面やメールで、事前に意見を出しておく
ここは正確に押さえておきたいところです。
条文には「やむを得ない理由がある場合については、担当者に対する照会等により意見を求めることができる」という定めがあります(第13条第9号ただし書き、第15号ただし書き)。ただし、この照会はケアマネジャーからサービス事業所の担当者に向けたもので、家族の欠席を代わりに埋めるための制度ではありません。
では家族はどうするか。制度の話ではなく運用の話として、会議の前にケアマネジャーへ意見を渡しておくのが現実的です。
- メモの内容を、そのまま写真に撮ってメールやメッセージで送る
- 手書きのメモを、前日までにファクスや郵便で届ける
- 前日に電話をもらい、口頭で伝える
送るときに「会議で共有していただけると助かります」と一言添えておくと、意図が伝わりやすくなります。先に書いたとおり、会議の記録は事業所に残ることになっているので、伝えた内容が次の見直しの材料として残る可能性もあります。
毎回は出られない事情も、伝えておく
「平日の日中は動けないので、土曜か夕方なら出られます」。この一言を早めに渡しておくと、次の日程を組む段階から候補に入ります。 案内が届いてから断るより、動かせる余地が大きくなります。
自宅以外で開くこともある?(病院・施設・事業所)
案内に「◯◯病院 3階カンファレンス室」と書かれていて戸惑う。
自宅以外で開くことは、あります。場所が変わっても、家族が持っていくメモは同じです。
運営基準の第13条には、会議を開く場所の定めはありません。
病院で開く:退院前カンファレンスとの関係
退院が近づくと、病院の側が「退院前カンファレンス」を開くことがあります。ケアマネジャーが病院の職員から情報を得てケアプランを作ることには、退院・退所加算という報酬上の評価があり、カンファレンスに出た場合はその区分が上がる仕組みです(老企第36号)。
退院前カンファレンスは病院が開く会議、担当者会議はケアマネジャーがケアプランの原案をもとに開く会議です。同じ日に兼ねることも、別に開くこともあります。このカンファレンスを担当者会議として扱うか、退院後に自宅であらためて開くかは、ケアマネジャーの判断や保険者(市町村)の運用で差があります。案内が病院なら、「退院したあとに、あらためて担当者会議はありますか」と聞いておいてください。
病院で家族が話すことも、メモのままです。「玄関に段差が3段ある」「日中は誰もいない」。病院の職員には、家の中が見えていません。 家族しか出せない情報がここに集まります。
施設で開く:入所後は施設のケアマネジャーが計画を作る
特別養護老人ホームなどに入所すると、ケアプランを作るのは施設の計画担当介護支援専門員に変わり、会議も施設で開かれます(特別養護老人ホームは平成11年厚生省令第39号第12条第6項)。家族が話すことは変わりません。 上半分と下半分、そのままです。
事業所で開く:集まりやすさで決まることがある
本人が通っている日にデイサービスで開くなど、集まりやすい場所が選ばれることがあります。家族が遠方なら、前の章のとおりオンラインで加わる選択肢もあります。
家族が決めるのは場所ではなく、持っていくメモの中身。次に案内が来たら、場所の欄より先に、メモ用紙を1枚出してみませんか。
まとめ:メモ1枚を持って座る
長くなったので、持ち帰ることを整理します。
この記事のまとめ
– 家族が担当者会議で話すことは2つ。①各事業所にお願いしたいこと ②親にどう過ごしていてほしいか
– 前の晩にメモ用紙1枚。上半分にお願い(宛先つき)、下半分にどう過ごしてほしいか。前日までに写真で送っておくと、さらに通りやすい
– お願いは「誰に・何を・どうしてほしいか」まで言い切る。ただし本人の行動を止めることは頼まない。暮らし方は情景で話す
– 振られなければ「1つだけいいですか」で自分から挟む
– 本人の前で言いにくいことは、事前にケアマネジャーへ
– 行けないときは、まず日程を相談。それが無理ならオンライン参加の可否を聞く/メモを事前に渡す
家族が黙っているのは、遠慮ではありません。話す場だと知らされていないだけです。そして条文は、家族の参加を基本とするだけでなく、家族の希望と意向をケアプランに書くよう求めています。
次の会議の案内が届いたら、まずメモ用紙を1枚出してみてください。 書くことは2つだけです。
▶ あわせて読みたい: 働きながら親の介護が始まったら|最初の30日にやることリスト
【参考にした資料】
- 指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第38号)第13条・第29条/e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/411M50000100038
- 介護保険法(平成9年法律第123号)第81条/e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/409AC0000000123
- 「居宅介護支援等に係る書類・事務手続や業務負担等の取扱いについて」(令和3年3月31日老介発0331第1号ほか。令和6年3月15日一部改正)別添「居宅介護支援・介護予防支援・サービス担当者会議・介護支援専門員に係る項目及び項目に対する取扱い」(厚生労働省) https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001221646.pdf
- 「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準について」(平成11年7月29日老企第22号)第2の3(8)「サービス担当者会議等による専門的意見の聴取(第9号)」の項/介護保険最新情報Vol.1213(令和6年3月15日)別紙12(厚生労働省) https://www.mhlw.go.jp/content/001227724.pdf
- 「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(訪問通所サービス、居宅療養管理指導及び福祉用具貸与に係る部分)及び指定居宅介護支援に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について」(平成12年老企第36号)第3「退院・退所加算について」
- 指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第39号)第12条第6項/e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/411M50000100039
※制度の運用は市町村や事業所によって差があります。実際の進め方については、担当のケアマネジャーや地域包括支援センターにご確認ください。
【この記事を書いた人】むむぶどう
社会福祉士として福祉の現場に20年。デイサービス、地域包括支援センター、老人保健施設の相談員、病院のソーシャルワーカーを経て、現在はケアマネジャーとして約20件を担当しています。高齢者の訪問介護や、障害のある方の居宅介護・行動援護にも携わっており、ケアプランを作る側と、サービスを提供する側の両方の席に座っています。


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