手すりはレンタルできる?月100円台から借りられる「置き手すり」と壁工事の違い

手すりはレンタルできる?置き手すりと壁工事の違いのアイキャッチ 介護とお金

帰省するたび、ソファから立ち上がる親の「よいしょ」が大きくなっている。手すりを付けたいけれど、壁の工事は大ごとだし、親も嫌がりそう——そう思って、何もできずにいませんか?

先に結論をお伝えします。手すりは、壁に工事で付けるものだけではありません。床に置くだけの「置き手すり」が介護保険でレンタルでき、1割負担なら月100〜500円程度が目安です(地域や事業所、機種によって変わります)。工事はゼロ。合わなければ変更も返却もできます。

私は社会福祉士として福祉の現場に20年。現在はケアマネジャーとして、立ち上がりに不安が出てきた方へ置き手すりを提案する場面が何度もあります。この記事では、レンタルできる手すりの種類、使える場面、月額の目安、借りるまでの流れをまとめます。

「手すりがレンタル???」——なぜ意外に聞こえるの?

現場で手すりの話をすると、「手すりがレンタル???」と驚かれることがよくあります。

理由はシンプルです。手すりといえば、壁にネジで留める工事のイメージが強いから。トイレや廊下の壁に付いているあの手すりを思い浮かべたら、「借りる」という発想にならないのは自然な反応です。あなたも今、同じイメージを持っていませんか?

でも介護保険の世界では、手すりはレンタルの定番品目です。厚生労働省が定めるレンタル(正式には「福祉用具貸与」)の対象13種目の中に、「手すり」がはっきり入っています。条件はひとつだけ。告示の言葉を借りると「取付けに際し工事を伴わないものに限る」。つまり「置くだけ・突っ張るだけ」の手すりが、レンタルの対象なんです。

じゃあ壁に工事で付ける手すりはどうなるのか。そちらは「住宅改修」という別の制度でカバーされます(後の章で説明します)。まずは、工事しない手すりがどんなものかを見てみませんか?

レンタルできる「置き手すり」って、どんな形?

言葉で説明すると、たいてい「半分納得・半分ハテナ」という顔をされます。「置くだけの手すりって、倒れないの?」というハテナです。実際に画像で見てもらうと、そこで初めて「ああ、これか」と納得されます。だからこの記事にも、図を置きます。

置き手すりの2タイプ(据え置き型・突っ張り型)
置き手すりの2タイプ(据え置き型・突っ張り型)

現場でよく提案する形は、大きく2つです。

  • 据え置き型: 重い板状の土台を床に置き、その上に握り棒が立っている形。土台の重さで安定させるので、床に置くだけで使えます。ソファやベッドの脇に「立ち上がり用のつかまり場所」を作るイメージです
  • 突っ張り型: 床と天井の間で突っ張らせて固定する、縦のポール型。ただし天井の強度など設置場所の条件があるため、後述の専門職による現地確認が前提です。土台を置くスペースが取りにくい場所や、立ったまま体を支えたい動線上で使います

据え置き型には高さや形の幅があり、床に敷いた布団から立ち上がる場面に合わせて、低い位置から順に握っていけるタイプもあります。どれを選ぶかは、後の章で出てくる福祉用具の専門職が、体と部屋に合わせて提案してくれます。

どんな場面で使える?ソファ・ベッド・布団の立ち上がり

置き手すりの出番は、廊下やトイレだけではありません。毎日の暮らしの中の「立ち上がる瞬間」こそが主戦場です。

置き手すりが活躍する3つの場面(ソファ・ベッド・布団)
置き手すりが活躍する3つの場面(ソファ・ベッド・布団)
  • ソファから立ち上がるとき: 低いソファは、実は立ち上がりの難所です。脇に据え置き型を置けば、つかまって体を起こせます
  • ベッドから立ち上がるとき: 端に腰かけてから立つ瞬間、支えがあるかないかで動きやすさが変わります
  • 布団から立ち上がるとき: 床からの立ち上がりは、一番力が要る動作です。低い位置から握れるタイプの据え置き型を布団の脇に置く、という使い方があります

立ち上がった後の動きに合わせて、部屋の中の通り道に突っ張り型を立てて「次のつかまり場所」を作る、という組み合わせ方もあります。夜中にベッドからトイレへ向かう動線は、その代表例です。

思い出してみてください。親がつらそうにしているのは、廊下を歩いているときですか?それとも、ソファや布団から立ち上がる瞬間ではありませんか?「壁に付ける場所」から考えると出てこない答えが、「立ち上がる場所」から考えると見えてきます。

レンタル代は月いくら?

私の現場の実感では、置き手すりのレンタル代は月100〜500円程度です。

ただし、この数字には前提があります。

  • 1割負担の場合の金額です(所得によっては2割・3割負担になります)
  • レンタル価格は事業所ごとに違うため、地域や事業所、機種によって変わります
  • あくまで私の担当地域での実感値です。正確な金額は、見積もりの段階で確認してください

それでも、月に数百円というケタ感は伝わりませんか?私が金額まで含めて提案すると、返ってくるのは「おおー」という驚きと喜びの声です。「これはありがたい」「提案してくれてありがとう」と言われることが多いんです。壁の工事を覚悟していた家族ほど、この金額に驚かれます。

壁に付ける手すりとは、制度が違うの?

違います。ここが、この記事で一番持ち帰ってほしい線引きです。

レンタルと住宅改修の分かれ道
レンタルと住宅改修の分かれ道
  • 工事しない手すり(置く・突っ張る)→ 福祉用具貸与=月額レンタル。この記事の主役
  • 壁に工事で付ける手すり住宅改修=別の制度。工事費について、原則20万円の枠を上限に費用の9割(負担割合により8割・7割)が支給されます

同じ「手すり」なのに、工事の有無で使う制度が分かれます。住宅改修の制度でも、種類の筆頭に「手すりの取付け」が挙げられているくらい、手すりの壁工事は代表的なメニューです。

家族が気を付けたいのは、住宅改修には工事の前に市区町村へ申請するという手続きがある点です。先に工事をしてしまうと支給されないことがあるため、壁に付けたい場合こそ、自己判断で工務店に頼む前にケアマネジャーや市区町村の介護保険担当課に相談してください。

では、レンタルと壁工事のどちらから考えるか。体の状態や住まいにもよりますが、まず置き手すりで試すという選び方があります。理由は後戻りのしやすさ。壁の手すりは一度付けると動かせませんが、置き手すりは位置を変えられて、体に合わなければ機種の変更も返却もできます。暮らしと体の変化に合わせて動かせるのは、レンタルならではの強みだと思いませんか?

要支援でも借りられる?

借りられます。ここは誤解されやすい部分です。

介護保険のレンタルには、車いすや電動ベッド(特殊寝台)などについて「要支援・要介護1の方は原則対象外」という決まりがあります(状態によっては例外的に借りられる仕組みもあり、担当のケアマネジャーか市区町村で確認できます)。この決まりだけを聞くと、「うちは要支援だから何も借りられないのでは」と感じてしまいそうですよね。

でも、手すりはこの原則対象外のリストに入っていません。厚生労働省の資料でも、手すり・スロープ・歩行器・歩行補助つえの4種目は、介護度が軽い方の利用が多い種目として整理されています。つまり置き手すりは、要支援の方から使える種目です。

「まだ介護というほどでは……」という段階の立ち上がりの不安にこそ、置き手すりの出番があります。介護度が軽いことは、あきらめる理由になりません。

借りるまでの流れは?

前提がひとつあります。介護保険のレンタルを使うには、要介護認定(要支援を含む)を受けていることが必要です。そのうえで、流れは3ステップです。

1. 相談する

  • 認定をすでに受けているなら → 担当のケアマネジャーに「ソファからの立ち上がりがつらそうで」と伝えてください。それだけで話が動き出します
  • 認定をまだ受けていないなら → お住まいの地域の地域包括支援センターへ。認定の申請から一緒に考えてくれますし、本人が同席しなくても、家族だけで相談できます

▶ 関連記事: 地域包括支援センターとは?相談できること・使い方・探し方

2. 福祉用具の専門職に自宅で見てもらう

ケアマネジャーを通じて、福祉用具貸与の事業所が自宅に来てくれます。ソファの高さ、布団の位置、床の状態を見て、体格に合う機種を選んでくれます。カタログから自分で選ぶのではなく、プロが現物合わせをしてくれる仕組みです。

3. 試して、合わなければ変えられる

レンタルは月額制なので、使ってみて合わなければ機種の変更も返却もできます。「一発で正解を選ばないといけない」買い物とは違う、と覚えておいてください。

制度の入口全体(お金の話・買うタイプの用具・相談先の一覧)は、シリーズ第1弾にまとめています。また、本人に「まだ大丈夫」と断られたときの動き方は第2弾で書いたので、提案する前に読んでもらえますか?

▶ 第1弾: 福祉用具や手すりは買う前に誰に相談する?20万円の助成枠を逃さない「制度の入口」

▶ 第2弾: 親が福祉用具を「まだ大丈夫」と断ったら?説得より効く”種まき”の考え方

よくある質問(FAQ)

Q. 月数百円なら、いっそ買った方が安くないですか?

金額だけ見るとそう感じますよね。それでも現場では、レンタルから入ることをお勧めしています。

理由は2つ。1つ目は、置き手すりは高さ・位置・土台の形が体に合っていないと使いにくく、合うかどうかは置いてみないと分からないから。2つ目は、体の状態が変わったとき、レンタルなら機種の変更や返却で追いかけられるから。買ってしまうと、合わなくなった手すりが部屋に残ります。買う前の注意点は第1弾で詳しく書いています。

▶ 関連記事: 介護保険の福祉用具レンタル完全ガイド|対象品目・自己負担・使えないときの対処法

Q. 賃貸住宅でも使えますか?

使いやすい選択肢です。置き手すりは工事をしないので、壁に穴を開けられない住まいでも導入しやすいのが強みです。突っ張り型は天井の造りなど設置場所の条件を見る必要があるので、事業所の専門職に現地で確認してもらってください。

Q. 介護認定を受けていないと、借りられませんか?

介護保険のレンタルとして使うには、要介護認定(要支援を含む)が前提です。認定をまだ受けていない段階なら、まず地域包括支援センターに相談して、認定の申請から始めてください。申請の結果を待つ間にできる準備も、相談の場で教えてもらえます。

なお、介護保険を通さない自費のレンタルを扱う事業所もありますが、料金や条件は事業所ごとに違います。急ぎで必要な事情があるなら、その事情ごと相談先に伝えてみてください。

Q. 手すりを置けば、転倒の心配はなくなりますか?

「置けば安心」とまでは言い切れません。手すりは立ち上がりや移動を支える道具で、置く場所や高さが合っていなければ役に立たず、かえって邪魔になることもあります。だからこそ、通信販売で買って置くのではなく、専門職に体と部屋を見てもらったうえで入れることをお勧めします。心配の中身を専門職に伝えるところから始めてみませんか?

まとめ: 手すりは「壁工事」の前に「レンタル」から

要点は4つです。

  • 手すりは壁工事だけではない。工事しない「置き手すり」が介護保険のレンタル対象(据え置き型・突っ張り型)
  • 月額は1割負担で100〜500円程度が目安。ただし地域・事業所・機種で変わる
  • 壁に工事で付ける手すりは「住宅改修」という別制度(原則20万円枠・工事前の申請が必要)。混ぜて考えない
  • 手すりは要支援の方から使える種目。相談先はケアマネジャーか地域包括支援センター

「手すりがレンタル???」という驚きは、知らなかった人が悪いのではなく、知られていない制度の側の問題です。親の「よいしょ」が気になっているなら、壁の工事を覚悟する前に、月数百円の置き手すりから検討してみませんか?

【この記事を書いた人】

むむぶどう。社会福祉士として福祉の現場に20年、現在はケアマネジャーとして働いています。置き手すりを提案して「手すりがレンタル???」と驚かれるたび、この制度はまだ知られていないと感じます。「提案してくれてありがとう」の声を、担当地域の外にも届けたくて、この記事を書きました。

参考資料(一次資料)

※レンタル価格は事業所ごとに異なり、負担割合・市区町村の運用によっても変わります。実際の金額や手続きは、担当のケアマネジャーまたはお住まいの市区町村の介護保険担当課にご確認ください。


この記事を書いた人

むむぶどう
社会福祉士・ケアマネジャー。社会福祉士として福祉の現場に20年、介護施設・在宅サービスでご本人とご家族の支援に関わってきました。福祉の制度を「使える形」にして届けたい、と思って発信しています。

▶ note(現場のリアル・体験談):https://note.com/mumubudou
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