親が要支援と認定されて、地域包括支援センターの職員が家に来て相談に乗ってくれている。ありがたい半面、「こんなに動いてもらって、あとで請求が来るんじゃないか」「これ以上頼むと料金が上がるのでは」と、相談を控えていませんか。
先に結論です。ケアプランの作成と相談(居宅介護支援・介護予防支援)は介護保険から全額が給付され、利用者の自己負担は原則ありません。遠慮すると、使えるはずのサービスが遅れるだけです。もう1つ。要支援のあいだ包括の職員が担当していた場合、要介護になると担当は居宅介護支援事業所のケアマネジャーに変わります。制度の作りなので止められませんが、家族が引き継ぎで確認することが4つあります。
私は社会福祉士として福祉の現場に20年。地域包括支援センターにいた頃は要介護になった方を送り出す側、現在は居宅介護支援事業所のケアマネジャーとして受け取る側です。両方から見えた仕組みを、初めて親の介護に向き合う家族向けに書きます。
ケアマネの利用料はなぜ0円?「こんなに動いてもらって0円なんですか?」
「こんなに色々動いてもらっているのに、0円なんですか?」。担当していると、この驚き方をされることがあります。答えは、自己負担がないだけで、報酬はちゃんといただいています、です。
介護保険法は、訪問介護などのサービス費を「費用の額の百分の九十に相当する額」と定めています(第41条第4項)。残りを利用者が払う、という意味で、この割合は所得により1〜3割です。ケアプランにあたる居宅介護サービス計画費(第46条第2項)と介護予防サービス計画費(第58条第2項)には、この文言がありません。費用の全額が保険から出て、利用者が払う分がない作りです。
厚生労働省の審議会(社会保障審議会介護保険部会)は、その理由をこう説明しています。
ケアマネジメントに要する費用については、10割給付となっている(利用者負担を求めていない)ところ、これは介護保険制度創設時にケアマネジメントという新しいサービスを導入するにあたり、要介護者等が積極的に本サービスを利用できるようにすることを目的としたものである。
(出典:社会保障審議会介護保険部会「介護保険制度の見直しに関する意見」令和7年12月25日)
国が「積極的に利用してもらうため」に設計した10割給付なんです。ケアマネジャーに相談するのは、制度の想定どおりの使い方。「これ以上頼んだら悪い」は、遠慮する場所を間違えています。
私は利用者さんと家族にこう伝えています。自己負担はなくても、介護保険からちゃんといただいているので、遠慮なく相談してください。お金の面で相談そのものを止めている方は、次の記事も読んでみませんか。
▶ 「お金がないから介護サービスは使えない」は誤解です|相談が先の理由を現役の社会福祉士が解説
要支援のあいだは誰が担当?包括・委託・直接指定の3ルート
要支援1・2のケアプラン(介護予防支援)を担当できるのは、法律上3とおりです。
1. 地域包括支援センターの職員が自分で担当する
2. 包括から居宅介護支援事業所へ委託し、そこのケアマネジャーが担当する(介護保険法第115条の23第3項)
3. 居宅介護支援事業所が市町村の指定を受けて直接担当する(令和6年4月から)
私が現場で見てきたのは、主に1と2です。要支援の人のプランは包括だけでは対応しきれず、居宅介護支援事業所のケアマネジャーに委託するケースが多い。国の資料でも、介護予防ケアマネジメントのうち約4割は、包括から居宅介護支援事業所への一部委託で行われています(介護保険部会意見・令和7年12月)。
3は令和6年4月にできた新しいルートですが、取り入れ方は市町村と事業所で差があります。「どこでも直接受けてもらえる」とは思わず、お住まいの包括に「要支援のプランはどこが担当しますか」と聞くのが早いです。
相談を始めたばかりで、担当が誰になるかの話が出る前の段階なら、家族の側で何かが変わることはありません。流れにすると、こうなります。

包括の役割(相談できること・探し方)は、別の記事にまとめてあります。
▶ 地域包括支援センターとは?相談できること・使い方・探し方を完全解説【社会福祉士監修】
なぜ「受けてもらえない」が起きる?ケアマネ不足とプラン料の実感
「委託するケースが多い」と書きましたが、実際にはなかなか受けてもらえにくい。理由は2つです。
1つめはケアマネジャー不足。介護支援専門員の従事者数は、平成30年度の189,754人をピークに減り、令和4年度は183,278人(介護サービス施設・事業所調査)。新しくなる人も減っていて、第28回の実務研修受講試験(令和7年度)は受験者50,601人・合格者12,961人です。厚労省の検討会は「10年以内には、ケアマネジャーの担い手は急激に減少していくことが見込まれ」と書いています。
2つめは要支援のプラン料が安いこと。私の肌感では、要介護の半分以下です。公式の単位数(1月あたり・令和6年度改定後)を並べてみますか。
- 居宅介護支援費(要介護1・2):1,086単位
- 居宅介護支援費(要介護3〜5):1,411単位
- 介護予防支援費(包括が行う場合):442単位
- 介護予防支援費(居宅介護支援事業所が直接行う場合):472単位
要支援のプラン1件は、要介護1・2の4割ほど。しかも委託のルートでは、この442単位を受け取るのは包括で、居宅介護支援事業所に払われる委託料は両者の契約で決まります(金額は地域と契約次第)。受け手が足りない背景は、この数字にあります。
国も手は打っていて、令和6年度改定で、居宅介護支援事業所の担当件数を数えるとき要支援の人は3分の1に換算する扱いになりました。動きはある。ただ、現場ではまだ受け手が足りない、というのが私の実感です。
受けてもらえないときは、包括の職員がそのまま担当していくことが多いです。問題はその先。要介護になったとき、包括の職員は包括の担当としては続けられません。
要介護になると担当が変わるのはなぜ?(包括が担当していた場合)
包括の職員が担当していた方が要介護1〜5になると、担当は居宅介護支援事業所のケアマネジャーに変わります。包括が受けられる指定は「介護予防支援」で、対象は要支援の人(介護保険法第8条の2第16項・第115条の22)。要介護のプラン(居宅介護支援)は、指定居宅介護支援事業者が作ったときに給付される仕組み(第46条第1項)です。担当者の都合でも家族の落ち度でもなく、制度の作りです。
現場で言われる言葉は、決まってこれです。「せっかく色々お話しできるようになったのに、残念です」。私も同じ気持ちになります。だから引き継ぎで手を抜きません。
「担当が変わる」のは、包括の職員が直接担当していた場合の話です。変わらないことがあるのは、次の2つ。
- 要支援のときから居宅介護支援事業所のケアマネジャーが担当していた(委託または直接指定)→ 要介護になっても同じ事業所・同じケアマネジャーで続けられることがあります
- 包括を設置している法人が居宅介護支援事業所を併設している → 法人の中で引き継ぐことがあります
逆に、要介護から要支援に改善したときも、同じ理屈で担当が変わり得ます。

担当が変わるとき、家族ができること4つ
変わること自体は止められません。変わり方は変えられます。引き継ぎのとき、この4つを確認してみませんか。
1. なぜ変わるのかを聞く。「要介護になったので、包括では要介護の方のプランを担当できないため」なら、それが正解です。担当者の異動や事業所の都合と混ざっていないか、聞いておくと後で迷いません。
2. 次の担当は誰か。事業所名・ケアマネジャーの名前・連絡先・初回訪問の日を、紙かメモで受け取ってください。
3. これまでの相談内容は引き継がれているか。どんなサービスをどう決めてきたか、本人が嫌がっていることは何か。最初から説明し直さなくて済むように、要点を新しい担当に渡してもらいます。足りなければ、家族から補ってください。
4. 今後の相談先。プランのことは新しいケアマネジャー、それ以外の困りごとは包括にも相談できる、と確認しておきます。
私は今、居宅介護支援事業所のケアマネジャーとして、包括が委託先に困っているときは積極的に受けたいと思っています。担当が変わることで「本当は相談したかったことが相談しにくくなる」のは、利用者さんの不利益です。それを防ぐのが、引き継ぎの目的なんです。
ケアプランの有料化の話は本当?(2026年9月21日時点)
「ゆくゆく有料化するかもしれない、という話も出ているらしい」。これは本当で、国の審議会で議論が続いています。2026年9月21日時点で分かっている範囲を、時系列で書きます。
- 令和5年12月:政府の「改革工程」(閣議決定)で、2027年度(第10期介護保険事業計画期間の開始)までに結論を出すとされた
- 令和7年12月25日:介護保険部会の意見書で4つの案(①幅広い利用者に負担 ②所得を勘案 ③給付管理の事務の実費相当分 ④登録制の対象になる住宅型有料老人ホームの入居者向けの新しい相談支援に負担)を議論。「検討の方向性」は④を丁寧に検討することが適当とし、①〜③は賛否が併記された
- 令和8年6月25日:「社会福祉法等の一部を改正する法律」が公布。登録制の対象になる有料老人ホーム等の入居者向けに「登録施設介護(予防)支援」を新設し、原則1割の利用者負担。施行は原則令和9年4月1日で、一部は公布後2年または3年以内に政令で定める日(新しい相談支援の開始時期は、政令で決まる部分が残っています)
つまり、2026年に成立した法改正で自己負担が入るのは、登録制の対象になる有料老人ホーム等の入居者向けの新しい相談支援です。自宅で暮らす人のケアプラン(一般の居宅介護支援)への利用者負担は、この記事を書くにあたって確認した一次資料(部会の意見書・改正法の概要・公布の通知)には入っていません。一方で意見書には「引き続き幅広く負担の在り方を検討すべき」という意見も載っています。決まった、とも、ない、とも書けません。2027年度は介護報酬改定と第10期計画の開始が重なるので、その前にこの記事も見直します。
続報は、厚生労働省「社会保障審議会介護保険部会」のページに資料と議事録が出ます。担当のケアマネジャーに「プラン料の話、今どうなっていますか」と聞くのも1つの方法です。
要介護になっても、包括に相談していい?
していいです。地域包括支援センターは、要支援・要介護に関係なく、地域の高齢者とその家族の相談窓口です。包括の総合相談の対象は法律上「被保険者」で(介護保険法第115条の45第2項第1号)、要介護・要支援・認定を受けていない人を問いません。要介護になって変わるのは「ケアプランを誰が作るか」だけ。ケアプランは居宅介護支援事業所のケアマネジャーが担当し、包括は相談窓口として引き続き使えます。
もう1つ。包括はケアマネジャーの後ろ盾でもあります。ケアマネジャーへの支援や、対応が難しいケースの相談は包括の仕事に含まれています(同項第3号)。新しい担当と話が噛み合わないと感じたら、包括に「担当が変わってから相談しにくい」と伝えてみませんか。告げ口ではなく、包括の役割の範囲です。

家族からよく出る2つの質問
Q. 要支援のうちから居宅のケアマネジャーに頼めば、要介護になっても変わらない?
変わらないことがあります。要支援のときから居宅介護支援事業所のケアマネジャーが担当していれば、要介護になっても同じ事業所で続けられることがあるためです。ただし、要支援のプランをどこが担当するかは、市町村と包括の体制・判断によります。「先を見て居宅介護支援事業所に頼めますか」と、包括に聞いてみてください。
Q. 費用が心配で、そもそも相談するのを迷っています
相談そのものに自己負担は原則ありません。ケアプランの費用は市町村が利用者に代わって事業所へ支払う仕組みで(介護保険法第46条第4項)、訪問の回数や相談の長さで自己負担が増える作りにはなっていません。かかるのは、その先で使うサービスの1〜3割分と実費です。先に月額の目安を知っておきたい方は、次の記事で要介護度ごとのシミュレーションを出しています。
▶ 在宅介護にかかる月額費用シミュレーション|要介護1〜5の現実と、家計を守る制度の使い方
まとめ:0円は「遠慮するため」ではなく「使ってもらうため」
- ケアプランの作成と相談は介護保険から全額給付。利用者の自己負担は原則ない。国が「積極的に利用してもらうため」に設計した10割給付
- 要支援のプランの担当は3ルート=包括の職員/包括から居宅介護支援事業所へ委託/居宅介護支援事業所が直接(令和6年4月から)。どれになるかは包括に聞く
- 要介護になると、包括の職員が担当していた場合は担当が変わる。包括が受けられる指定は要支援向けの「介護予防支援」だから
- 引き継ぎで確認する4つ=なぜ変わるか/次は誰か/相談内容は引き継がれているか/今後の相談先
- 包括は要介護になっても相談窓口。変わるのは「プランを誰が作るか」だけ
有料化は2026年9月21日時点で議論が続いていて、自宅の人のケアプランは今日の時点で自己負担なく相談できます。
今日できることは1つ。担当の包括の職員かケアマネジャーに「うちが要介護になったら、担当はどうなりますか」と聞くこと。答えを先に知っておくと、その日が来たときの「残念です」が、少し軽くなります。
【この記事を書いた人】
むむぶどう。社会福祉士として福祉の現場に20年、現在は居宅介護支援事業所のケアマネジャーとして働いています。「0円なんですか?」の驚きと「残念です」の一言を、遠慮と別れではなく制度の話として渡したくて書きました。
▶ note(現場のリアル・体験談):https://note.com/mumubudou
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ブログでは「制度の使い方」を、noteでは「現場のリアル」を、Xでは「今日の気づき」を発信しています。
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参考資料(一次資料)
- 介護保険法(平成9年法律第123号)e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/409AC0000000123
- 社会保障審議会介護保険部会「介護保険制度の見直しに関する意見」(令和7年12月25日) https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001622725.pdf
- 厚生労働省老健局「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」 https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001213182.pdf
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_38790.html
- 厚生労働省老健局「社会福祉法等の一部を改正する法律について(報告)」(介護保険部会 第135回 資料1) https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001715733.pdf
- 厚生労働省「社会福祉法等の一部を改正する法律案の概要 等」 https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/001694745.pdf
- 厚生労働省「社会福祉法等の一部を改正する法律の公布について(通知)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001715668.pdf
- 厚生労働省「第28回介護支援専門員実務研修受講試験の実施状況について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000187425_00013.html
- 厚生労働省「ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会 中間整理」(令和6年12月12日) https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001352230.pdf
- 厚生労働省「地域包括ケアシステム」(地域包括支援センターについて) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/
※この記事の単位数は令和6年度介護報酬改定後の公表資料の転記で、報酬は改定で変わることがあります。ケアプランの利用者負担の議論は、2026年9月21日時点の一次資料で確認しています。要支援のプランをどこが担当するか、委託の可否、担当の引き継ぎ方は、お住まいの市町村・地域包括支援センターの体制次第。個別の可否や法律に関わる最終的な判断は、市町村・地域包括支援センター・専門家にご確認ください。


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