「お金がないから介護サービスは使えない」は誤解です|相談が先の理由を現役の社会福祉士が解説

「お金がないから介護サービスは使えない」は誤解であることと、相談・申請・ケアプラン作成の入口には費用がかからないことを示した図 介護とお金

「うちは貯金が少ないから、ヘルパーさんなんて頼めない」「施設なんて、お金に余裕がある家の話でしょう」。親の介護が現実味を帯びてきたのに、お金の不安が先に立って、どこにも相談できずにいませんか。

結論から書きます。「お金がないから福祉は使えない」は誤解です。相談も、介護保険の申請も、ケアプランの作成も、お金はかかりません。さらに、所得に応じて負担を軽くする制度が用意されています。だから順番はひとつ。お金の心配がある人ほど、先に相談する。これだけです。

私は社会福祉士として福祉の現場に20年、現役のケアマネジャーとして働いています。現場で見ていると、困っているのに「お金がないから」と何も動かない方は意外なほど多い。この記事では、その一歩を踏み出せるように、「無料でできることの全体地図」と「行政の相談窓口の選び方」、そして「相談の一歩目の踏み出し方」を整理します。

※制度の細かい条件や金額は、市町村や世帯の状況によって変わります。最終的には必ずお住まいの窓口で確認してください。

  1. なぜ「お金がないから福祉は使えない」は誤解なの?
    1. 理由1:入口には、お金がかからない
    2. 理由2:所得が少ない人ほど、負担を軽くする制度がある
    3. 動かないことのほうが、実は高くつく
  2. お金をかけずにできることは何がある?【全体地図】
    1. その1:相談する(0円)
    2. その2:介護保険を申請して、認定を受ける(0円)
    3. その3:ケアプランを作る(0円)
    4. その4:使い始めた後も、負担を軽くする制度で守られる
  3. どこに相談すればいいですか?——行政の窓口をすすめる理由
    1. 高齢の家族の介護が心配 → 地域包括支援センター
    2. 生活費そのものが苦しい → 市役所の生活保護担当(福祉事務所)
    3. 保護までは考えていないが、家計が不安 → 生活困窮者自立支援制度の窓口
    4. なぜ「行政」を最初にすすめるのか
  4. 生活保護の相談は、敷居が高くないですか?
    1. 相談に行ったことで、介護と医療の心配が減った方がいた
    2. 「必ず受給できる」という話ではありません
  5. 相談の一歩目は、どう踏み出せばいいですか?
    1. 電話1本から始めていい
    2. 伝えることは3つだけ
    3. お金の心配は、最初に言っていい
  6. よくある質問(FAQ)
    1. Q1. 相談したら、申請やサービス契約をすすめられませんか?
    2. Q2. 本人が動けません。家族だけで相談してもいいですか?
    3. Q3. 生活保護を受けると、介護サービスは使えなくなりませんか?
    4. Q4. どのタイミングで相談すればいいですか?
    5. Q5. 民間の相談窓口や施設紹介サービスを使ってはだめですか?
  7. まとめ|お金が不安なら、順番は「相談が先」
  8. この記事を書いた人

なぜ「お金がないから福祉は使えない」は誤解なの?

理由は2つあります。

理由1:入口には、お金がかからない

福祉サービスは「入口が無料」の仕組みになっています。地域包括支援センターへの相談は無料。介護保険の申請に手数料はなく、認定調査にも費用はかかりません。ケアプランの作成も、現在の制度では自己負担がありません。

つまり、「自分の場合はどうなるか」を確かめるところまで、財布を開く場面がひとつもない。使うかどうかは、それを聞いてから決めればいい話です。

理由2:所得が少ない人ほど、負担を軽くする制度がある

介護保険の自己負担には月ごとの上限があり、超えた分は払い戻されます(高額介護サービス費)。特別養護老人ホームなどの介護保険施設に入る場合も、食費や部屋代には所得や資産の状況に応じた減免があります。制度の中身にはこの記事では踏み込みません。それぞれ別の記事に詳しくまとめています。

▶ 関連記事:高額介護サービス費とは|上限を超えた介護費が戻る制度を現役20年の社会福祉士が解説

▶ 関連記事:「特養は安い」は本当?減免が効かないと月15万円弱|施設費用の”漠然イメージ”に振り回されないための整理

制度は「お金がある人向け」ではありません。むしろ、お金が心配な世帯ほど守られる方向に設計されています。

動かないことのほうが、実は高くつく

逆のケースを想像してみてください。相談しないまま家族だけで介護を抱えると、仕事を減らす、体を壊す、共倒れになる——お金と体力の両方を失う道に進みがちです。「お金がないから動かない」は節約ではなく、いちばん高い選択になりかねません。

お金をかけずにできることは何がある?【全体地図】

まず、「0円のままどこまで進めるか」の地図を持ちませんか。答えを先に書くと、サービスを使い始める直前まで、全部0円です。

その1:相談する(0円)

  • 地域包括支援センターの相談は無料
  • 市役所の窓口(高齢福祉・生活保護など)の相談も無料
  • 1回で決められなくても、何度相談しても費用はかからない

その2:介護保険を申請して、認定を受ける(0円)

  • 申請に手数料はかからない
  • 認定調査(訪問調査)も無料
  • 主治医意見書の費用は市町村が負担する

申請の窓口・必要書類・認定までの流れは、こちらの記事に一気通貫でまとめています。

▶ 関連記事:介護保険の申請から要介護認定までの完全ガイド|現役ケアマネが教える流れ・必要書類・期間

その3:ケアプランを作る(0円)

要介護認定が出たら、ケアマネジャーがケアプランを作ります。この作成費用も、現在の制度では自己負担がありません。プランを作ったうえで「やっぱり今は使わない」という判断も可能です。

その4:使い始めた後も、負担を軽くする制度で守られる

サービスを使い始めると、費用の1〜3割の自己負担が発生します。ただし前述のとおり、月額の上限や減免の仕組みがあり、65歳以上の場合、自己負担の割合そのものも所得で決まる設計です。実際に月いくらかかるかの目安は、シミュレーション記事で確認できます。

▶ 関連記事:在宅介護にかかる月額費用シミュレーション|要介護1〜5の現実と、家計を守る制度の使い方

▶ 関連記事:介護保険の負担割合|1割・2割・3割の確認方法と、施設選びの答えが変わる理由

どこに相談すればいいですか?——行政の窓口をすすめる理由

相談できる場所はたくさんあります。ただ、お金が不安な段階でまず使ってほしいのは行政の立場の窓口です。困りごと別に3つ挙げます。

高齢の家族の介護が心配 → 地域包括支援センター

高齢者の総合相談窓口で、全国の市町村に設置されています。介護保険を使うかどうかを決める手前の、「これって相談していい話?」という段階から乗ってくれる場所です。役割と使い方は別記事にまとめています。

▶ 関連記事:地域包括支援センターとは?相談できること・使い方・探し方を完全解説【社会福祉士監修】

生活費そのものが苦しい → 市役所の生活保護担当(福祉事務所)

介護どころか、毎月の生活費が回らない。そういうときの相談・申請窓口は、お住まいの地域を所管する福祉事務所の生活保護担当です。市では「生活福祉課」などの名前で置かれています。福祉事務所を置いていない町村では、都道府県の福祉事務所が担当します。その場合でも、町村役場で申請の手続きができます。

保護までは考えていないが、家計が不安 → 生活困窮者自立支援制度の窓口

「保護を受けるほどではない気がする。でも、このままだと危ない」。その段階の方のために、生活困窮者自立支援制度の相談窓口が各自治体にあります。仕事・家計・住まいの立て直しを一緒に考えてくれる窓口です。

なぜ「行政」を最初にすすめるのか

行政の立場の窓口は、特定のサービスや施設を売る立場ではないためです。民間の紹介サービスや相談窓口が悪いという意味ではありません。ただ、お金が不安な段階では、利害のない立場に最初に話すのが安全な順番だと考えています。

高齢のご家族のことでどの窓口か迷ったら、まず地域包括支援センターで構いません。別の窓口が適切な内容なら、そこからつないでもらえます。

生活保護の相談は、敷居が高くないですか?

いちばん相談をためらう窓口が、おそらくここではないでしょうか。実際にあった話をひとつ書きます(個人が特定されないよう、詳細は省いています)。

相談に行ったことで、介護と医療の心配が減った方がいた

実態把握で訪問していた高齢の方が、まさに「お金がないから」と動けずにいる状態でした。生活保護の制度を説明したところ、その方は生活福祉課へ相談に行きました。その結果、保護を受給することとなり、介護と医療の心配が減りました。

動けなかった期間と、相談してからの変化。その差を生んだのは、資産でも運でもなく、窓口に行ったかどうかだけです。同じように、あと一歩が出ないだけの方は、きっと多いはず。この記事がその一歩の後押しになればと思っています。

「必ず受給できる」という話ではありません

大事な注意をひとつ。生活保護を受給できるかどうか(要否判定)は、資産や収入などをもとに福祉事務所が判断します。相談すれば必ず受給できる、という話ではありません。

ただ、相談しなければ、要否の判定すら受けられないままになります。相談は無料で、相談したからといって申請を強制されることもありません。「自分の場合はどうか」を確かめる価値は十分にあります。

なお、生活保護を受けながら入居できる施設については、別の記事で詳しく書いています。

▶ 関連記事:生活保護でも入れる老人ホームの探し方|現役の社会福祉士が現場でやっている手順【完全ガイド】

相談の一歩目は、どう踏み出せばいいですか?

窓口が分かっても、最初の一歩が重い。そういう方のために、ハードルを下げる方法を3つ書きます。

電話1本から始めていい

窓口に出向く必要はありません。「お住まいの市町村名+地域包括支援センター」で検索するか、市役所の代表番号に電話して「高齢者の介護のことで相談したい」と伝えれば、担当につないでもらえます。書類も予約も、原則要りません。

電話が苦手なら、市役所や地域包括支援センターへ直接出向いても構いません。どの課に行けばいいか分からなければ、庁舎入口の総合案内で「介護とお金のことで相談したい」と言えば案内してもらえます。

伝えることは3つだけ

うまく説明できなくても大丈夫です。次の3つが伝われば、あとは窓口の側が質問してくれます。

  • 誰のことで困っているか(例:80代の母、別居)
  • いちばん困っていること(例:物忘れが増えて、火の始末が心配)
  • お金の心配があること

お金の心配は、最初に言っていい

「お金に余裕がないので、費用がかからない方法から知りたい」。この一言を、最初に伝えて構いません。恥ずかしいことでも、失礼なことでもありません。むしろ窓口の側は、その情報があるほど、負担軽減の制度を前提にした提案がしやすくなります。まずは、この一言から始めてみませんか。

よくある質問(FAQ)

Q1. 相談したら、申請やサービス契約をすすめられませんか?

相談だけで帰って構いません。介護保険を申請するかも、サービスを使うかも、決めるのは本人と家族です。「今日は話を聞くだけ」と最初に伝えても大丈夫です。

Q2. 本人が動けません。家族だけで相談してもいいですか?

家族だけの相談で大丈夫です。地域包括支援センターは、本人だけでなく家族からの相談も受け付けています。離れて暮らしている場合は、親が住んでいる市町村の窓口に電話してください。

Q3. 生活保護を受けると、介護サービスは使えなくなりませんか?

逆です。生活保護には介護扶助という仕組みがあり、必要な介護サービスは保護を受けながら利用できます。医療も同じで、医療扶助により必要な受診が保障されます。

Q4. どのタイミングで相談すればいいですか?

「困りきる前」です。介護保険は申請から認定まで日数がかかるため、限界が来てから動くと間に合いません。「そろそろ心配」と感じている今が、ちょうどいいタイミングです。

Q5. 民間の相談窓口や施設紹介サービスを使ってはだめですか?

だめではありません。民間にも力になってくれる窓口はあります。ただ、お金が不安な段階では、まず利害のない行政の窓口で「使える制度の全体像」を確かめてから使う順番をおすすめします。順番が逆になると、費用の軽減策を知らないまま話が進んでしまいかねないためです。

まとめ|お金が不安なら、順番は「相談が先」

  • 「お金がないから福祉は使えない」は誤解。入口(相談・申請・ケアプラン)は0円
  • 所得が少ない世帯ほど、負担を軽くする制度で守られる設計になっている
  • 相談先は行政の窓口から。介護の心配は地域包括支援センター、生活費の心配は市役所の生活保護担当(福祉事務所)
  • 生活保護の要否判定は福祉事務所が行う。ただし、相談しなければ判定の土俵にも乗らない
  • 一歩目は電話1本。「誰のことか・何に困っているか・お金の心配があること」の3つを伝えるだけでいい

お金の不安は、ひとりで抱えている間はどんどん膨らみます。無料の窓口に下ろした瞬間から、それは具体的な選択肢の話に変わります。今週、電話を1本かけてみませんか。

【参考文献】


この記事を書いた人

むむぶどう🍇
社会福祉士・ケアマネジャー。社会福祉士として福祉の現場に20年、介護施設・在宅サービスでご本人とご家族の支援に関わってきました。福祉の制度を「使える形」にして届けたい、と思って発信しています。

▶ note(現場のリアル・体験談):https://note.com/mumubudou
▶ X(毎朝のつぶやき・現場の小ネタ):https://x.com/mumubudo

ブログでは「制度の使い方」を、noteでは「現場のリアル」を、Xでは「今日の気づき」を発信しています。

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