介護の窓口や面談で説明を受けたけれど、正直よく分からなかった。話を止めるのも悪い気がして、分からないまま「はい、はい」と頷いて帰ってきた——そんな経験はありませんか。
福祉の相談屋・社会福祉士のむむぶどう🍇です。
先に結論を書きます。説明が分からないのは、あなたの勉強不足ではありません。説明が専門用語のまま飛んでくる。それだけの話です。 そして、専門用語は「それ、どういう意味ですか」と聞き返していい言葉なんです。
この記事で持ち帰ってほしいのは、次の4つだけです。
1. 「それ、どういう意味ですか」とその場で聞く
2. 分からないまま頷かない
3. 分からなかった言葉を、その場でメモに残す
4. 聞けなかった分は持ち帰って、調べる先に聞く
私自身、社会福祉士として福祉の現場に20年、会議の発言でも家族への説明でも、専門用語を「使う側」にいます。使う側だからこそ、聞き返してもらえないと説明が届いたか分からない、という事情まで含めて書きます。
まず何から始めればいいですか?
今日からできるのは「頷く前に、1回止まる」です。 4つのうち、道具も準備もいらないのはここです。
説明の途中で分からない言葉が出てきたら、心の中でこう考えてみてください。
- この言葉、家に帰って家族に説明できるか?
- 説明できないなら、それは「まだ受け取れていない」ということ
説明できない言葉に出会ったら、そこが聞き返すタイミングです。窓口の会話は一度きりではありません。ただ、いちばん詳しい人が目の前にいる時間は、その場だけです。だからこの記事では、その場での聞き返し方から順番に書いていきます。
説明が分からないのは、家族の勉強不足ですか?
違います。 介護や医療の説明には、仕事の言葉がそのまま出てきます。
たとえば、こんな言葉です。
- 「支給決定」
- 「特定疾病」
- 「区分変更」
どれも、制度の中では正確な意味を持つ言葉です。ただ、初めて介護に関わる家族が、この字面だけで中身を思い浮かべられるかというと、難しいと思いませんか。
福祉や医療の用語は、堅苦しい言葉のオンパレード。知らないのが普通で、聞き返すのが自然です。 学校で習う言葉ではなく、この業界で働く人が仕事で使う言葉なので、初対面で分からなくて当たり前なんです。
問題は、分からないことではありません。分からないまま話が先に進んでしまうことです。介護の説明の先には、申請するかどうか、サービスを使うかどうかという、生活に関わる判断が待っています。土台の言葉が分からないままだと、その判断も曖昧なまま進みます。
なぜ専門職は、専門用語のまま話すのですか?
意地悪でも、手を抜いているわけでもありません。理由はシンプルで、「その方が早い」。これに尽きます。
専門用語は、仕事の道具として本当によくできています。
- 1語で正確に伝わる(職場の会議なら「区分変更」の5文字で全員に通じる)
- 制度の言葉とそのままつながる(書類にも同じ言葉が書いてある)
- 言い換える手間がいらない
私も使う側にいるので、この「早さ」の感覚は分かります。毎日その言葉で仕事をしていると、それが専門用語だという意識のほうが先に消えていきます。会議で通じる言葉を、家族への説明でもそのまま使ってしまう。悪気の入り込む余地がないくらい、自然にそうなります。
ただ、ここに落とし穴があります。専門用語のまま説明しても、相手に届かなければ、その説明は「なかった」のと同じです。制度は、知ってもらって初めて使われます。届かない説明は、あとから「聞いていない」「そんな話だったのか」というすれ違いになって返ってきます。結局、説明し直しです。
早いようで、遠回りなんです。
だから家族の側の聞き返しは、説明の邪魔ではありません。説明を「届いた」状態まで運ぶ、仕上げの工程です。遠慮する場面ではないと思いませんか。
その場では、どう聞き返せばいいですか?
聞き返し方は、この4つの順番で覚えてください。
1. 「それ、どういう意味ですか」とその場で聞く
いちばん基本の一言です。そのまま使えます。
「すみません、いまの『支給決定』って、どういう意味ですか」
コツは、言葉を名指しで聞くことです。「よく分かりません」だと、相手はどこから説明し直せばいいか分かりません。「この言葉が分からない」と指させば、相手はその一点だけ言い換えれば済みます。聞く側にも答える側にも、これがいちばん早い形です。
2. 分からないまま頷かない
頷きは、相手への「伝わっています」のサインです。分からないまま頷くと、相手は伝わったと判断して、次の話に進みます。 説明が難しくなるほど、頷きたくなる。その気持ちは分かります。ただ、そこで頷くと、分からない話の上に次の話が積み上がっていきます。
頷く代わりに、一度止めてください。
「すみません、ちょっと待ってください。いまのところがまだ分かっていません」
これで十分です。相手を責める言葉はどこにも入っていません。
3. 分からなかった言葉を、その場でメモに残す
その場で全部聞き返せなくても大丈夫です。分からなかった言葉を、聞こえたままメモしてください。 漢字が分からなければカタカナのままで構いません。
メモしておきたいのは、この3つです。
- 分からなかった言葉(例:「クブンヘンコウ?」)
- どの話の中で出てきたか(例: 認定の話のとき)
- 渡された書類の名前(通知や案内には、同じ言葉が正式な形で書いてあります)
メモがあれば、家に帰ってからでも、次の窓口でも、「この言葉の意味を教えてください」と続きから聞けます。メモは、その日の会話を「聞きっぱなし」で終わらせないための命綱です。
4. 聞けなかった分は持ち帰って、調べる先に聞く
その場で聞きそびれた言葉は、持ち帰って聞けばいい。ここで大事なのは、ひとりでインターネット検索だけで解決しようとしないことです。制度の言葉は、お住まいの自治体や本人の状況によって意味の当てはまり方が変わります。調べる先は、このあとの章で具体的に書きます。
聞き返したら、失礼になりませんか?
なりません。 むしろ逆だと考えてください。
説明する側の仕事は、話し終えることではなく、相手に届くことです。聞き返しは、「どこまで届いて、どこから届いていないか」を教えてくれるいちばん確かな手がかりです。届いていない場所を教えてもらえないまま話し続けるほうが、説明する側にとってはよほどつらい。
それでも聞きにくいときは、枕詞を1つ足してみてください。
- 「初めてのことばかりで恐縮ですが、いまの言葉の意味を教えてください」
- 「あとで家族にも説明したいので、かみ砕いて教えてもらえますか」
とくに2つ目は便利です。「自分が分からない」ではなく「家族に伝えるため」という形にすると、聞き返しの心理的なハードルがぐっと下がります。実際、窓口で聞いた話を家で共有する場面はほぼ必ず来るので、嘘でもありません。
あなたが最後に窓口で聞き返したのは、いつですか。次の面談で、1回だけ試してみませんか。
よく出る専門用語は、どう言い換えられますか?
ここからは、実際に現場でよく出る3つの言葉を例にします。私が家族に説明するときに使っている言い換えです。
先にお断りしておきます。言い方はいろいろあって、これはあくまで一例です。 「正しい言い換えはこれ」という話ではなく、「かみ砕くとこのくらいの言葉になる」という目安として読んでください。正式な制度の説明は、次の章で出典付きで書きます。
「支給決定」の言い換え一例
「介護保険を使ってもいいよ、という準備ができた」
決定・支給という字面から、お金が振り込まれる話に聞こえた方もいるかもしれません。そうではなく、「サービスを使える状態が整った」という合図の言葉です。
「特定疾病」の言い換え一例
「国が決めたいくつかの病気があって、それに診断されると、40歳以上の方でも介護保険サービスが受けられる」
「特定」も「疾病」も、日常ではまず使いません。でも中身は、「40代・50代でも介護保険の対象になる場合がある」という、知らないと申請の発想すら出てこない大事な話です。
「区分変更」の言い換え一例
「今お持ちの介護認定を、もう1度見直すこと」
「区分」が何の区分か分からないと、まったく意味の取れない言葉です。認定の見直し、と言い換えるだけで、話の位置がつかめると思いませんか。
その3つ、正式にはどういう制度の言葉ですか?
言い換えは入口です。申請や手続きに進むときは、正式な意味を押さえておくと安心です。ここは出典付きで書きます。
支給決定(障害福祉サービスの用語)
法律の用語としての「支給決定」は、障害福祉サービスの言葉です。障害者総合支援法では、介護給付費等の支給を受けようとする方は、市町村の支給決定を受けなければならないと定められています(第19条)。つまり、市町村が「この方は障害福祉サービスを利用できます」と決めることが支給決定です。
一方、介護保険で同じ場面にあたるのは「要介護認定」です。上の言い換え一例は、介護保険の窓口での会話を想定した言い方で、どちらの制度の話かで言葉の当てはまりが変わります。窓口で「支給決定」と言われたら、「それは介護保険の話ですか、障害福祉の話ですか」まで聞き返すと確実です。
(出典: e-Gov法令検索「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」(平成17年法律第123号)第19条 https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000123 )
特定疾病(介護保険の用語)
介護保険のサービスを使えるのは、原則65歳以上の方(第1号被保険者)です。ただし40〜64歳で医療保険に加入している方(第2号被保険者)も、加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病として政令で定められた「特定疾病」が原因で介護が必要になった場合には、要介護認定の対象になります(介護保険法第7条)。
特定疾病は、介護保険法施行令で16種類が定められています(厚生労働省「特定疾病の選定基準の考え方」参照)。がん(回復の見込みがない状態に至ったもの)、関節リウマチ、初老期における認知症、脳血管疾患などが含まれます。
言い換え一例では「40歳以上の方でも」と表現しましたが、正確には特定疾病が要件になるのは40〜64歳の方です。65歳以上の方は、原因の病気を問わずに要介護認定を申請できます。
(出典: 厚生労働省「特定疾病の選定基準の考え方」 https://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/nintei/gaiyo3.html /e-Gov法令検索「介護保険法」(平成9年法律第123号)第7条 https://laws.e-gov.go.jp/law/409AC0000000123 )
関連記事: 介護保険と障害福祉の違い完全ガイド|65歳問題・併用パターン・選び方
区分変更(介護保険の用語)
正式には「要介護状態区分の変更の認定」です。介護保険法第29条に定めがあり、要介護認定を受けた方は、介護の必要の程度が、いま受けている要介護状態区分に当てはまらなくなったと考えられるとき、区分の変更の認定を申請できます。
ポイントは、認定の有効期間の途中でも申請できるところです。「次の更新まで待つしかない」と思い込んで、状態が変わっているのに古い認定のまま過ごしている、という場面に出会うことがあります。状態が変わったと感じたら、担当のケアマネジャーか市区町村の窓口に相談してください。
(出典: e-Gov法令検索「介護保険法」(平成9年法律第123号)第29条 https://laws.e-gov.go.jp/law/409AC0000000123 )
関連記事: 介護保険の申請から要介護認定までの完全ガイド|流れ・必要書類・期間
持ち帰った言葉は、どこで聞けばいいですか?
メモした言葉の「調べる先」です。この3つを覚えておいてください。
1. 地域包括支援センター
高齢者に関する相談の、いちばん間口の広い窓口です。 お住まいの地域ごとに設置されていて、要介護認定を受けていなくても、その地域に住む高齢者とご家族が無料で相談できます。「窓口でこう言われたけれど、意味が分からなかった」という相談の仕方で大丈夫です。
(出典: 厚生労働省「地域包括支援センターの概要」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/ )
関連記事: 「お金がないから介護サービスは使えない」は誤解です|相談が先の理由
2. 市区町村の担当課
その言葉が出てきた書類を作った本人ですから、いちばん正確に答えられます。介護保険の言葉なら介護保険の担当課、障害福祉サービスの言葉なら障害福祉の担当課です。電話でも構いません。メモと書類を手元に置いて、「この通知の『◯◯』の意味を教えてください」と聞いてください。
3. 担当のケアマネジャー(すでに介護保険を使っている場合)
担当が決まっているなら、専門用語の翻訳はケアマネジャーの日常業務の一部です。病院や窓口で言われた言葉をそのまま伝えて、「これはどういう意味か」「うちの場合は何をすればいいか」まで一緒に整理してもらってください。障害福祉サービスを使っている場合は、相談支援専門員が同じ役割です。
3つに共通するコツは、言葉だけでなく書類を持って行くことです。同じ言葉でも、通知の種類によって指している中身が違うことがあります。書類があれば、答える側は正確に答えられます。
よくある質問
Q1. 何度も聞き返したら、迷惑ではないですか?
分からないまま手続きが進むほうが、あとで双方の負担になります。 説明のやり直し、行き違いの修正、申請のし直し。聞き返しの数十秒で防げるものばかりです。どうしても気が引けるなら、「あとで家族に説明したいので」の枕詞を使ってください。
Q2. その場で聞き返せませんでした。もう遅いですか?
遅くありません。メモと書類が残っていれば、いつでも続きから聞けます。 電話で担当課に聞く、次の面談の冒頭で「前回の言葉でひとつ確認したい」と切り出す、地域包括支援センターに持ち込む。どれでも大丈夫です。聞きそびれた自分を責める必要はまったくありません。
Q3. 自分で検索して調べるのではダメですか?
入口としては役立ちます。ただ、制度の言葉は、お住まいの自治体や本人の状況で当てはまり方が変わります。 一般的な解説を読んだうえで、「うちの場合はどうなりますか」を窓口や担当のケアマネジャーに確認する。この2段構えをおすすめします。この記事も、最後の確認は窓口で、という前提で書いています。
Q4. 高齢の親が「分かった」と言うのですが、分かっていない様子です
説明の場に、できるだけ家族が同席してください。同席が難しければ、本人に「もらった書類を全部取っておいて」と頼んでおくだけでも違います。書類が残っていれば、家族があとから同じ内容を窓口に確認できます。本人の「分かった」を責めるのではなく、確認の経路をもう1本足す、という考え方です。
まとめ
介護の説明が分からないのは、家族の勉強不足ではありません。専門用語は仕事の言葉で、知らないのが普通です。
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専門職が用語のまま話すのは「その方が早い」から。悪気の話ではありません。ただ、届かない説明は説明し直しになる。早いようで遠回りです。だから聞き返しは、説明を最後まで届ける仕上げの工程です。
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やることは4つ。「それ、どういう意味ですか」とその場で聞く。分からないまま頷かない。分からなかった言葉をメモに残す。聞けなかった分は、地域包括支援センター・市区町村の担当課・担当のケアマネジャーに書類ごと持ち込む。
次に窓口や面談に行くとき、分からない言葉が1つは出てくると思います。そのとき、頷く前に一度だけ止まって、聞き返してみませんか。その一言が、制度と生活をつなぐいちばん短い道です。
参考にした資料
- 厚生労働省「特定疾病の選定基準の考え方」 https://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/nintei/gaiyo3.html
- 厚生労働省「地域包括支援センターの概要」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/
- e-Gov法令検索「介護保険法」(平成9年法律第123号) https://laws.e-gov.go.jp/law/409AC0000000123
- e-Gov法令検索「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」(平成17年法律第123号) https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000123
(制度の内容は変わることがあります。手続きの前に、お住まいの市区町村の窓口で最新の内容をご確認ください)
【この記事を書いた人】
むむぶどう。社会福祉士・現役ケアマネジャー。社会福祉士として福祉の現場に20年。会議でも家族への説明でも専門用語を「使う側」にいる立場から、制度と生活の橋渡しになる情報を書いています。
この記事を書いた人
むむぶどう
社会福祉士・ケアマネジャー。社会福祉士として福祉の現場に20年、介護施設・在宅サービスでご本人とご家族の支援に関わってきました。福祉の制度を「使える形」にして届けたい、と思って発信しています。
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