介護もケアマネもできるオールラウンド社会福祉士のむむぶどう🍇です(^o^)
「お父さんを介護してるのは、80歳のお母さんです」
「100歳のお母さんを、75歳の娘さんが看ています」
こういうご家庭、現場では本当に多いです。
国の調査では、在宅介護のうち老老介護(介護する側もされる側も65歳以上)は全体の6割超にのぼります。さらに最近は「認認介護(介護する側もされる側も認知症)」も静かに増えてきました。
今回の記事では、
- 老老介護のリアルな現状
- 共倒れを防ぐために使える制度・サービス
- 家族・親族・地域との役割分担の作り方
- 介護者自身の健康と将来を守る考え方
を、現場で200件以上の老老介護世帯を見てきた立場から整理します。
「うちはまだ大丈夫」と思っているご家族こそ、最後まで読んでみてください。
※制度・統計は2026年5月時点の情報です。最新の詳細はお住まいの市区町村の介護保険担当窓口・地域包括支援センターでご確認ください。
老老介護とは|全体の6割超という現実
「老老介護」とは、介護する側もされる側も65歳以上の高齢者である介護のかたちを指します。
厚生労働省の国民生活基礎調査によると、在宅で介護を受けている世帯のうち、
- 介護する人・される人ともに65歳以上:約63%
- 介護する人・される人ともに75歳以上:約36%
つまり3組に1組は「後期高齢者同士の介護」が現実です。
さらに、
- 認知症の人が認知症の人を介護する「認認介護」
- 子(といっても60〜70代)が90〜100代の親を看る「超老老介護」
といったケースも、相談現場では珍しくありません。
「老老介護はうちの問題じゃない」と思っている40〜50代の方こそ要注意です。今のままだと20年後の自分たちがそのまま老老介護の当事者になります。
なぜ老老介護がこんなに増えたのか
老老介護が増えた背景は、ひとつではありません。社会構造の変化が複雑に絡んでいます。
①平均寿命の延び
男性81歳、女性87歳。「介護が必要になる年齢」と「介護できる体力の限界」が、ほぼ同じ時期に重なるようになりました。
夫婦どちらかが要介護になっても、もう一方が60代後半〜70代に達しているケースが大半です。
②少子化と核家族化
「同居の子・嫁が看る」が標準だった時代は終わりました。
- 子ども自体が少ない
- 子どもは都市部に出ていて遠距離
- 共働きで介護に専念できない
結果として、配偶者か、近距離に住む高齢のきょうだい・親戚が主介護者になります。
③女性の社会進出
「嫁が看る」前提が崩れ、男性介護者も急増しました。男性介護者の割合は今や3〜4割に達します。慣れない家事・身体介助で混乱し、孤立しやすい層です。
④介護施設の不足と費用の壁
特養は待機が多く、有料老人ホームは月15〜30万円超。結果として「家で看るしかない」という選択に追い込まれる家庭が増えています。
老老介護で起きやすい3つの問題
老老介護の現場で、私が「これは危険」と判断するサインは大きく3つあります。
問題①共倒れ
一番多いのが、介護者の体力・気力が先に限界を超えるパターンです。
- 夜間の見守りで慢性的な睡眠不足
- 入浴介助・排泄介助で腰や膝を痛める
- 自分の通院を後回しにして持病が悪化
- 食事を簡単に済ませて栄養失調
ある日突然、介護者が倒れて緊急入院。要介護者は急遽ショートステイか短期入所、というケースを私は何度も見てきました。
「介護される側が亡くなる前に、介護する側が倒れる」──これが老老介護の最大のリスクです。
問題②高齢者虐待・介護放棄
虐待というと「悪意」をイメージしがちですが、老老介護の虐待の大半は”疲弊からくる無自覚な虐待”です。
- 大声で怒鳴ってしまう(心理的虐待)
- つい強く腕をつかんでしまう(身体的虐待)
- 食事や介護を後回しにしてしまう(介護放棄)
加害者を責めても解決しません。支援が届いていない介護者を救うことが、結果的に要介護者を救うという発想が大切です。
問題③介護うつ・社会的孤立
長期間の介護は、介護者を社会から切り離します。
- 友人と会う時間がなくなる
- 趣味や外出を諦める
- 「いつまで続くのか」が見えない
- 配偶者を看取った後、自分も急速に弱る(介護後うつ)
介護うつは見過ごされやすく、介護者自身が要介護化する引き金になります。
共倒れを防ぐ「使える制度」総まとめ
ここからが本題です。老老介護を「家族の根性」で乗り切ろうとすると必ず破綻します。使える制度を全部使うのが正攻法です。
制度①地域包括支援センター(無料相談窓口)
中学校区ごとに必ず設置されている、高齢者の総合相談窓口です。
- 介護保険の申請代行
- ケアマネの紹介
- 虐待・困窮の相談
- 認知症初期集中支援
「実家の住所+地域包括」で検索すれば、担当センターがすぐ出てきます。料金は無料です。
▶ 関連記事:地域包括支援センターの使い方
制度②介護保険サービス
要介護認定を受ければ、介護保険から1〜3割負担で各種サービスが使えます。
- 訪問介護(ヘルパー)
- 訪問看護
- 訪問入浴
- デイサービス・デイケア
- ショートステイ
- 福祉用具レンタル
- 住宅改修(手すりなど20万円補助)
▶ 関連記事:要介護認定の流れ完全ガイド
制度③高額介護サービス費
介護保険の自己負担額には月の上限があります。
- 住民税非課税世帯:月24,600円
- 一般所得:月44,400円〜
超えた分は申請すれば戻ってきます。初回だけ申請すれば、翌月以降は自動振込になります。
制度④介護休業・介護休暇(働く家族向け)
老老介護の世帯を支える子世代向けの制度です。
- 介護休業:通算93日(給付金67%)
- 介護休暇:年5〜10日
- 短時間勤務:最低3年間
「親の介護で離職する前に絶対知っておきたい」内容です。
▶ 関連記事:介護離職を防ぐ4つの制度
制度⑤医療費控除(介護費用も対象)
訪問看護・デイケア・通院交通費などは医療費控除の対象になります。年間10万円を超えれば確定申告で税金が戻ります。
▶ 関連記事:医療費控除の完全ガイド(介護費用編)
介護保険サービスをフル活用する組み立て方
老老介護を「乗り切れる介護」に変える鍵は、サービスを組み合わせることです。
典型的な組み立て例(要介護2のケース)
月〜金の日中:デイサービス(週3回)
→ 介護者の自由時間を確保
週1回:訪問看護
→ 健康状態のチェック・医療連携
週2回:訪問介護(入浴介助・排泄介助)
→ 介護者の身体的負担を軽減
月1〜2回:ショートステイ(2泊3日)
→ 介護者が完全に休む時間を確保
通年:福祉用具レンタル(介護ベッド・手すり)
→ 介護者の腰・膝を守る
これだけ組んでも、自己負担は月3〜5万円程度に収まります(要介護2・所得段階による)。
よくある失敗パターン
- 「ヘルパーに来てもらうのは申し訳ない」と週1回しか頼まない
- 「ショートステイは可哀想」と一度も使わない
- 「介護ベッドは病人みたいで嫌」と布団のまま腰を痛める
遠慮した結果、介護者が倒れて要介護者も施設行き──これが最悪のパターンです。
ケアマネに「介護者を倒さないプラン」を組んでもらう、というはっきりした依頼の仕方が有効です。
ショートステイ・小規模多機能で「離れる時間」を作る
老老介護で一番大事なのは、介護者と要介護者が物理的に離れる時間を定期的に作ることです。
ショートステイ(短期入所生活介護)
特養や老健に1泊〜30日まで泊まれるサービスです。
- 介護者の旅行・冠婚葬祭で利用
- 介護者の入院・通院で利用
- 介護者の心身リフレッシュ(レスパイト)で利用
「2泊3日だけでも1ヶ月の疲れが取れた」と話す介護者は多いです。
小規模多機能型居宅介護
「通い・訪問・泊まり」を一つの事業所で柔軟に組める仕組みです。
- 普段はデイサービスのように通う
- 必要な時はヘルパーが来る
- 介護者が疲れたら泊まれる
- 月額定額(要介護度により変動)
老老介護世帯と相性が良いサービスです。「うちの地域に小規模多機能ありますか?」とケアマネに聞いてみてください。
看護小規模多機能型居宅介護(看多機)
医療ニーズが高いケース(点滴・喀痰吸引・経管栄養など)にも対応できる、訪問看護+小規模多機能のハイブリッド型です。
認知症が絡んだ時の追加対策
老老介護に認知症が加わると、難易度が一気に上がります。「認認介護」になると、介護そのものが破綻します。
認知症対応型デイサービス(認知症デイ)
少人数(最大12人)で、認知症の方が落ち着いて過ごせる環境を作ります。通常のデイサービスより手厚いケアが受けられます。
認知症グループホーム
認知症の方9人が一緒に暮らす施設です。要介護1から入れます。月12〜15万円程度。
「在宅は限界。でも特養はまだ早い」というケースの中間選択肢として有効です。
認知症初期集中支援チーム
地域包括支援センターに設置されている専門チームが、自宅を訪問して認知症のアセスメントをしてくれます。早期受診・サービス導入の道筋を作ってくれる無料の仕組みです。
成年後見制度
判断能力が低下した本人の財産・契約を守る仕組みです。
- 銀行口座の凍結対策
- 不動産売却・施設入所契約の代行
- 親族後見人・第三者後見人
「元気なうちに任意後見」が一番おすすめですが、認知症発症後でも法定後見の道があります。
家族・親族・外部リソースとの役割分担
「主介護者一人で全部抱える」のは、老老介護では絶対に避けたいパターンです。
親族間の役割分担を「見える化」する
家族会議で次の4つを書き出してみてください。
- 直接介護(食事・排泄・入浴の介助)
- 金銭支援(介護費用・施設費用の負担)
- 遠隔フォロー(電話で見守り・市役所手続き)
- 休日支援(月1〜2回、介護者を休ませる)
全員が「直接介護」じゃなくていいんです。得意分野で関わるのが続くコツです。
「介護者を休ませる係」を必ず作る
きょうだい間でよく揉めるのが「結局、長男の嫁が全部やってる」「実家の近くに住んでる長女がやってる」問題です。
遠方に住んでいるきょうだいは、
- 月1回でいいから泊まりがけで帰省する
- 介護者を強制的にホテル泊で休ませる
- 介護保険外サービス(自費ヘルパー)の費用を負担する
など、自分の役割を金銭・労力で形にすることが大事です。
地域のインフォーマルサポート
- 民生委員(地域の見守り役)
- 認知症カフェ(介護者の息抜き場所)
- 介護者の集い・家族会
- シルバー人材センター(庭仕事・買い物代行)
「介護保険サービスじゃないけど、地域で使えるもの」を地域包括支援センターに聞いてみてください。
お金の悩み:使える経済支援
老老介護では、年金収入で介護費用をやりくりする家庭がほとんどです。使える経済支援を全部使い切るのが鉄則です。
介護保険の自己負担割合(1〜3割)
所得段階によって自己負担が変わります。住民税非課税世帯なら1割負担です。
高額介護サービス費
月の自己負担に上限あり。超えた分は申請で戻ります。
高額医療・高額介護合算療養費
医療費と介護費の年間合算でも上限があります。8月から翌7月の1年間で計算され、世帯の所得段階に応じて上限が設定されます。
負担限度額認定証
特養・老健・ショートステイの食費・居住費が大幅に下がる制度。住民税非課税世帯が対象です。申請しないと適用されません。
介護タクシー・通院等乗降介助
通院時のタクシー代の一部が介護保険で賄えます。
医療費控除
介護費用の一部(訪問看護・デイケア・通院交通費)も対象になります。確定申告で税金が戻ります。
介護者自身の健康管理(要介護化予防)
介護者が倒れない限り、老老介護は続きます。だからこそ「介護者の健康」が最重要KPIです。
定期通院は絶対に止めない
- 高血圧・糖尿病の薬は欠かさない
- がん検診・健康診断は毎年受ける
- 歯科検診も忘れずに
「親の介護で自分の通院を止めた」は最悪のパターンです。
睡眠時間を確保する
夜間の見守りがしんどい場合は、
- ショートステイで月数日まとめて休む
- 訪問介護の夜間対応を組む
- 介護ベッドのセンサーマットで対応
など、ケアマネに相談してください。
趣味・友人関係を断ち切らない
「介護があるから無理」と全部断ると、配偶者を看取った後に燃え尽き症候群になります。
月1回でいいので、
- 友人とランチ
- 推し活
- 散歩・趣味の継続
を意識的に確保してください。
介護うつのサイン
次のサインが2週間以上続いたら、地域包括支援センターか心療内科に相談してください。
- 眠れない・早朝覚醒
- 食欲がない・体重減少
- 何をしても楽しくない
- 「自分がいなくなれば」と考える
介護者のうつは、地域包括支援センターも積極的に介入します。一人で抱え込まないでください。
まとめ|共倒れにしないための3か条
老老介護を乗り切る心構えを、3つに絞ってお伝えします。
①「自分が頑張る」を疑う
介護者が頑張れば頑張るほど、地域や親族の支援は遠ざかります。「使えるものは全部使う」のが、要介護者を一番幸せにする選択です。
②離れる時間を必ず作る
ショートステイ・デイサービス・親族の応援──手段は何でもいい。月に数日でも完全に介護から離れる時間を確保してください。
③介護者の健康を最優先にする
要介護者より、まず介護者です。介護者が倒れたら、要介護者の選択肢は施設しかなくなります。
最後に、現場で介護者の方によく言うことを書いておきます。
「介護は、走ってる本人より、見てる周りの方が客観的に見えます。”もう限界”の判断は、自分でしないでください。地域包括にしてもらってください」
地域包括支援センターは、無料で何度でも相談できる窓口です。
老老介護で「もう無理」と感じる前に、一度電話してみてください。
それが、ご夫婦・ご家族みんなを守る一番の近道です。
この記事を書いた人
むむぶどう🍇 / 社会福祉士・ケアマネジャー|福祉の相談屋さん20年。介護・福祉・障害・地域のリアルを発信中。
- X(旧Twitter):https://x.com/mumubudo
- note(エッセイ・体験談):https://note.com/mumubudou
「老老介護でもう限界かも…」と感じたら、まずは地域包括支援センターへ。ひとりで抱えないでくださいね。


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