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親が使っている杖を見て、「この高さで合っているのかな」と思ったことはありませんか?通販で届いた杖、借りてきた置き型の手すり。どれも、目の前の親に合っているかどうかは、置いてみるまで分かりません。
先に結論をお伝えします。杖も手すりも、合わせ方の目安は同じです。握ったときに肘が軽く曲がる高さがいいとされていて、肩が上がっていたら合っていません。確かめ方は、正面か後ろから見るだけ。
私は社会福祉士として福祉の現場に20年。現在はケアマネジャーとして、杖や手すりを提案する場面が毎週のようにあります。妻が理学療法士なので、専門職の意見も含めて、家族がその場で確かめられる形にまとめました。
杖と手すりの高さ、目安は同じ?
同じです。肘が軽く曲がるくらいの高さ。杖でも、手すりでも、覚えることはこの1つで済みます。
杖なら、杖を着いたときに肘が軽く曲がるか。手すりなら、掴んだときに肘が軽く曲がるか。逆に肩が上がってしまう高さはよくないとされています。
公益財団法人テクノエイド協会の資料でも、杖の長さは「軽く肘を曲げた状態で握れる高さが一般的には力が入りやすい」と書かれています(公益財団法人テクノエイド協会)。ただし同じ資料に、背中が大きく丸まっている方などは「その人に合わせた調整が必要」で、理学療法士などの専門家に相談を、ともあります。
だからこの記事の目安は、家族が「合っていないかも」に気づくためのものです。最終的な高さは、福祉用具専門相談員や理学療法士といった専門職に見てもらってください。
杖の高さはどう合わせる?家族が確かめる5つの手順
メジャーは要りません。親に杖を持ってもらって、見るだけです。

- 図の文言(本文からの抜き書き)
- 1 実際に持ってもらう
- 2 右足から横に15センチ、前に15センチ
- 3 肘が軽く曲がるか
- 4 正面か後ろから見る(肩が上がっていないか・体が斜めになっていないか)
- 5 迷ったら福祉用具事業所に見てもらう
1. 実際に持ってもらう
まず、いつも杖を持っている側の手で持ってもらいます(どちらの手で持つかは変えないでください)。座ったままでは分かりません。普段その杖を使うときの履き物で、立った状態で見てください。
2. 右足から横に15センチ、前に15センチ
右手で持つなら、右足から横に15センチ、前に15センチのところに杖先を着きます。左手で持つなら、左足が基準になります。
足元を見れば見当がつく距離なので、メジャーを当てなくて大丈夫です。
3. 肘が軽く曲がるか
その位置で杖を着いたとき、肘が軽く曲がるくらいがいいとされています。
腕がまっすぐ伸びきっていたら低すぎる可能性、肘が深く曲がって肩がすくんでいたら高すぎる可能性があります。テクノエイド協会や東京都消費生活総合センターの資料では「肘を30度ほど曲げた高さ」と書かれていますが、家族が分度器を当てる必要はありません。「軽く曲がっているな」で十分です。
4. 正面か後ろから見る
ここが一番大事なところです。親が杖を着いて立っている姿を、正面か後ろから見てください。
- 肩が上がっていないか(上がっていたら合っていません)
- 体が斜めになっていないか(左右どちらかに傾いていたら要注意)
横からでは分かりにくいところが、正面や後ろから見ると明らかに不自然に見えます。写真を撮って見比べてもらうと、本人も気づきやすいですよ。
5. 迷ったら福祉用具事業所に見てもらう
「合っているような、いないような」で止まっていませんか?そこで終わりにして大丈夫です。担当のケアマネジャーに「杖の高さを見てほしい」と伝えれば、福祉用具事業所の専門相談員が本人と一緒に合わせてくれることが多いです。リハビリを受けている方なら、理学療法士や作業療法士に見てもらうのが早いです。
細かいことは、家族が覚えなくていいんです。事業所が教えてくれます。
手すりの高さはどう見る?
杖と同じ考え方です。掴んだときに肘が軽く曲がる高さ。肩が上がってしまう高さはよくないとされています。
見るときのコツも杖と同じ。手すりを掴んで立ってもらい、正面か後ろから見て、肩が上がっていないか、体が斜めになっていないかを見ます。親が手すりを掴んでいるとき、肩はどうなっていますか?
手すりは、大きく2つに分かれます。
- 置き型・据え置き型の手すり: 工事なしで置くタイプ。介護保険でレンタルできる種目で、福祉用具事業所が本人に合わせて高さと置き場所を決めてくれます
- 壁に取り付ける手すり: 工事を伴うタイプ。介護保険の住宅改修の対象で、こちらも施工の前に、ケアマネジャーや施工業者が本人の体に合わせて高さを決めるのが一般的です
介護保険を使う場合、家族が高さを決めて注文する流れにはなりません。壁の手すりは工事の前に市区町村への申請が要るので、家族が先に業者へ頼まないでください(詳しくは第3弾)。家族がやることは、「ここでつかまりたい」と本人が言う場所を伝えることと、付いたあとに正面から見ることです。
レンタルの費用や、置き型と壁工事の違いは、第3弾の記事にまとめてあります。
▶ 第3弾: 手すりはレンタルできる?月100円台から借りられる「置き手すり」と壁工事の違い
合っていないと何が起きる?家族が見て分かるサイン
高さが合っていない杖や手すりは、かえって上手く歩けていない状態を作ります。バランスが悪かったり、ふらついたり。杖を持っているのに前より歩きにくそうなら、杖が悪いのではなく、高さが合っていない可能性があります。
家族が見て分かるサインは3つです。

- 図の文言(本文からの抜き書き)
- 左「合っている」: 肘が軽く曲がる/肩が上がっていない/体が斜めになっていない
- 右「合っていない」: 肩が上がっている/体が斜めになっている/正面や後ろから見ると明らかに不自然
- 下段: かえって上手く歩けていない・ふらつく
- 肩が上がっている
- 体が斜めになっている
- 正面や後ろから見ると、明らかに不自然
思い当たることはありませんか?親の杖を、一度も正面から見たことがない家族は多いです。玄関で見送るときは後ろ姿、迎えるときは正面。そのどちらかで、一度だけ意識して見てください。
杖は店で高さを合わせて買うのが望ましい
ここまで読んで、「じゃあ杖も借りればいいのでは」と思いませんか?
ところが、家族が一番イメージする一本杖(T字杖)は、介護保険のレンタルの対象に入っていません。厚生労働省の告示で貸与の対象になっている「歩行補助つえ」は5種類に限られています。松葉づえ、カナディアン・クラッチ、ロフストランド・クラッチ、プラットホームクラッチ、多点杖です。一本杖は、介護保険で借りることも買うこともできず、全額自費で用意します(介護保険で買える「特定福祉用具販売」の歩行補助つえも、告示94号で同じ4種類に限られています)。
だから私は、杖は本来、店で高さを合わせて買うのが望ましいと考えています。福祉用具の専門店や、事業所の販売窓口なら、本人に持ってもらって、その場で長さを合わせてもらえます。頼んでください。ケアマネジャーが付いているなら、「T字杖を買いたい」と伝えれば、事業所が現物合わせをしてくれることが多いです。
それでも、店に行く時間が取れない、遠方の親に送りたい、という場合はあります。通販で買うなら、高さを調節できるものを選んでください。届いてから、この記事の5つの手順で確かめて、合わなければ調節できます。切って長さを合わせるタイプは、私は家族に勧めたことがありません。
調節式のもので、身長によって小・大が分かれているので、商品ページで対応する身長を確認してから選んでください。
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楽天以外では、介護用品の通販(例えばフェニックス商事)でも調節式のT字杖を探せます。どこで買うにしても、見るところは同じ。調節できる範囲に本人の身長が入っているか、です。
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届いたら、店で合わせたときと同じことをしてください。持ってもらって、右足から横15センチ・前15センチ、肘が軽く曲がるか、正面から見て肩が上がっていないか。それだけです。
家族からよく出る4つの質問
杖や手すりの高さで、家族が迷いやすい4つの疑問に答えます。

- 図の文言(本文からの抜き書き)
- 認定を受けている → 担当のケアマネジャーに「杖の高さを見てほしい」
- リハビリを受けている → 理学療法士に見てもらう
- 認定を受けていない → 地域包括支援センターに相談
- 通販で買った杖が合わない → 調節式なら調節する。調節できないなら事業所に相談
Q. 手すりは杖と同じ考え方でいいの?
いいです。掴んで肘が軽く曲がる高さで、肩が上がっていたら合っていない。これは杖と共通です。
違いは、手すりは自分で高さを変えにくいこと。置き型なら福祉用具事業所が、壁付けなら施工前に専門職が、本人の体に合わせます。家族が高さを決める場面は、ほぼありません。「付いたあとに正面から見る」が家族の役目です。
Q. 通販で買った杖の高さが合わないときは?
調節式なら、5つの手順で確かめながら調節してください。1段変えて、また正面から見る。この繰り返しで合わせられます。
調節できないタイプで合わない場合は、担当のケアマネジャーか福祉用具事業所に相談してください。無理に使い続けると、かえってふらつきます。合わない杖を使うより、合う杖を選び直すほうが安全です。
Q. レンタルなら高さは事業所が合わせてくれるの?
合わせてくれます。置き型の手すり、歩行器、多点杖といったレンタルの種目は、福祉用具専門相談員が自宅に来て、本人の体と部屋を見て決めます。家族が「これでいいのかな」と迷う必要はありません。
合っていないと感じたら、その場で言ってください。契約したあとでも、高さの調整や機種の変更を相談できます。
Q. シルバーカーや歩行器も同じ?
歩行器は、レンタルのときに事業所が握りの高さを本人に合わせます。家族が見るポイントは杖と同じで、押しているときに肩が上がっていないか、体が斜めになっていないか。正面か後ろから見てください。
シルバーカーは、歩行器とは選び方が違います。私の現場での話は歩行器までなので、シルバーカーは購入する店で、本人に押してもらって確かめてください。歩行器の選び方は第4弾にまとめてあります。
▶ 第4弾: 歩行器はレンタルできる?月100円台からの選び方と、家族からよく出る4つの質問
まとめ: 覚えることは1つ、見るのは正面か後ろから
要点は4つです。
- 杖も手すりも、目安は肘が軽く曲がる高さ。肩が上がっていたら合っていない
- 杖は右足から横15センチ・前15センチに着いて確かめる(左手なら左足から)
- 見るのは正面か後ろから。肩が上がっていないか、体が斜めになっていないか
- 一本杖は介護保険の対象外なので、店で高さを合わせて買うのが望ましい。通販なら調節式を
合っているかどうかの最終判断は、福祉用具専門相談員や理学療法士に任せて大丈夫です。細かいことは覚えなくていい。事業所が教えてくれます。家族がやるのは、次に親に会ったとき、杖を着いた姿を一度だけ正面から見ること。それだけで、気づけることがあります。
まだ介護保険の認定を受けていない方は、お住まいの地域包括支援センターへ。制度の入口全体は、第1弾にまとめています。
▶ 第1弾: 福祉用具や手すりは買う前に誰に相談する?20万円の助成枠を逃さない「制度の入口」
【この記事を書いた人】
むむぶどう🍇
社会福祉士として福祉の現場に20年、現在はケアマネジャーとして働いています。杖や手すりの高さは、家族がいちばん迷いやすいところなので、その場で確かめられる目安を置いておきたくて、この記事を書きました。
参考資料(一次資料)
- 公益財団法人テクノエイド協会「福祉用具の選び方・使い方 ステッキ・T字杖」 https://www.techno-aids.or.jp/howto/product.php?code=120303
- 東京都消費生活総合センター「歩行補助用具を上手に使って街にでかけよう」 https://www.shouhiseikatu.metro.tokyo.lg.jp/kurashi/2303_04/wadai.html
- 厚生労働省「福祉用具・住宅改修に関する告示・通知等」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_58897.html
- 厚生労働大臣が定める福祉用具貸与及び介護予防福祉用具貸与に係る福祉用具の種目(平成11年厚生省告示第93号・現行版) https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001506161.pdf
- 厚生労働大臣が定める特定福祉用具販売及び特定介護予防福祉用具販売に係る特定福祉用具の種目(平成11年厚生省告示第94号・現行版) https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001506168.pdf
- 厚生労働省「介護保険制度における福祉用具貸与・販売種目のあり方検討会(第1回)資料2」 https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000921892.pdf
※この記事の高さの目安は、家族が「合っていないかも」に気づくための入口として書いています。体格や姿勢、歩き方によって適した高さは変わります。実際の適合は、福祉用具専門相談員や理学療法士などの専門職にご確認ください。レンタル・購入の可否や費用は、担当のケアマネジャーまたはお住まいの市区町村の介護保険担当課にご確認ください。


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