「私たちがいなくなったら、この子はどうなるんだろう」。障害のある子を育てる親御さんの多くが、一度は持つ悩みです。
先に結論です。親なきあとの備えは、まず「相談できる相手」を見つけることから。住まいとお金の話は、その相手と一緒に、情報を新しくしながら進めます。
「グループホームはどこも空きがない」「後見は一度つけたら一生」。そう聞いて、調べる前から止まっていませんか。施設の状況も、制度も変わります。今の情報だけで決めつけないことが、この記事でいちばん伝えたいことです。
福祉の相談屋・社会福祉士のむむぶどうです。社会福祉士として福祉の現場に20年。今はケアマネジャーとして働きながら、現役の保佐人としても活動しています。障害のある子を育てる親御さんが集まる場で、この話題になったことが何度もあります。

親なきあとの備え、何から始めればいい?
順番は「相談相手→住まい→お金」の3つです。
親なきあと(厚生労働省の資料では「親亡き後」)の備えとしてよく挙がるのは、この3つ。
1. 相談できる相手を見つける(相談支援専門員・市区町村の障害福祉の窓口など)
2. 住まいの情報を新しくし続ける(グループホームなど)
3. お金の制度の最新の動きを確かめる(成年後見制度など)
相談相手を最初に置くのには理由があります。住まいもお金も、今日調べた答えが、数年後も同じとは限らない。ひとりで調べて「無理だ」と結論を出すより、新しい情報を持っている人とつながっておくほうが、選べる道が残ります。

現場のひとこと
良きも悪きも、先のことは分かりません。だから、決めつけずに相談できる相手を見つけておいてほしいんです。
①相談できる相手は、誰を探せばいい?
いちばん身近なのは「相談支援専門員」。いなければ、市区町村の障害福祉の窓口に聞きます。
「うちはまだ親が元気だから、相談は早いのでは?」。そう思う方もいるかもしれません。でも相談相手は、困ってから探すより、困る前に顔を知っておくほうが話が早く進みます。

相談先3つ+知っておきたい仕組み1つ
- 相談支援専門員(相談支援事業所):障害福祉サービスを使う時の計画(サービス等利用計画)をつくる人。すでにサービスを使っているなら、担当がついていることが多いです(家族が計画を作る「セルフプラン」の場合は、担当はいません)
- 市区町村の障害福祉の窓口:サービスの申請先。相談支援事業所の紹介もしてもらえます
- 基幹相談支援センター:地域の相談支援の中核となる機関(障害者総合支援法第77条の2)。市町村が置くよう努めることになっている機関なので、名前や有無は地域によって違います
- 地域生活支援拠点等:厚生労働省が「障害者の重度化・高齢化や親亡き後を見据え」て整備を進めている、緊急時の対応や地域での暮らしを支える仕組み。2024年度(令和6年度)から障害者総合支援法に位置づけられました。窓口で「地域生活支援拠点等はありますか」と聞いてみてください
相談する時は、こう聞く
最初の一言は、たとえばこんな形で十分です。
- 「親が先にいなくなった時のことを、今のうちに相談したいです」
- 「この地域で、親なきあとの相談はどこにすればいいですか」
あなたの子には、今、担当の相談支援専門員がいますか。名前と連絡先がすぐ出てこないなら、そこが最初の一歩です。
障害福祉サービスの種類や、申請から使い始めるまでの流れは、こちらにまとめています。

現場のひとこと
今から何を勧めるかと聞かれたら、相談できる相手を見つけておくこと、です。
②グループホームは「空きがない」と聞いたら、あきらめる?
あきらめる前に、見学と情報の更新を続けます。施設の状況は、変わることがあります。
「グループホームは、どこも空きがないって聞いたけど」。親御さんの集まりで、よく出てくる言葉です。

グループホームって、どんな所?
グループホーム(障害者総合支援法では「共同生活援助」)は、主に夜間に、共同生活の住まいで相談や入浴・食事の介護などの日常生活の援助を受けられる障害福祉サービスです(厚生労働省)。
「空きがない」は、ずっと続くとは限らない
ここで伝えたいのは「空きはある」ということではありません。今「空きがない」としても、それが数年後も同じとは決まっていない、ということです。
- 入居している人の状況が変わって、空きが出ることがある
- 地域に新しいホームができることがある
- 制度や国の助成のしくみが変わることがある
逆もあります。今は入れそうでも、先で状況が変わることもある。どちらに転ぶかは、誰にも分かりません。

止まらないために、やること
- 見学する:空きがなくても、見学を受け付けている所はあります。雰囲気を知っておくだけでも、比べる目ができます
- 情報を聞き直す:一度聞いて終わりにせず、時間をおいて相談支援専門員や市区町村に聞き直します
- 体験の機会を聞く:地域生活支援拠点等の役割には、親元から離れて暮らす前に、グループホームや一人暮らしを体験する機会をつくることが入っています(厚生労働省)。地域で用意があるか、相談先で聞いてみてください
聞き直す時は、こんな質問が使えます。
- 「この1年で、新しくできたグループホームはありますか」
- 「見学だけでもできる所はありますか」
- 「体験できる所はありますか」
一度聞いた「空きがない」を、何年も前の情報のまま持ち続けていませんか。
現場のひとこと
「グループホームは空きがない」と決めつけるのは良くないと思っています。施設の状況は変わることもありますし、制度や国の助成も変わります。
③成年後見は「一度つけたら一生」?
今の制度ではそうなりやすいのは事実です。ただ、2026年6月に見直しの法律ができて、制度は変わっていく途中にあります。
「後見は一度つけたら一生」という話も、よく耳にします。

今の制度(2026年10月時点)
今の成年後見制度では、後見・保佐は、本人の判断能力が回復しない限り利用をやめることができません(法務省)。「一度つけると一生」が課題になっている、というのは本当のことです。
見直しの法律で、何が変わる?
2026年(令和8年)6月17日に「民法等の一部を改正する法律」が成立し、6月24日に公布されました(法務省)。成年後見の部分の主な中身はこうです。
- 後見と保佐をなくして、補助にまとめる。本人にとって必要な範囲で使う形にする
- 判断能力を欠く状態の人には、大事な財産の契約を広く取り消せる「特定補助」という仕組みも用意されます
- 後見・保佐にはなかった「本人の同意」と「制度を使う必要性」が、基本の条件になる
- 判断能力が回復していなくても、制度を使う必要がなくなったと家庭裁判所が認めれば、終わらせることができる

いつから変わる?
成年後見の見直しが始まる日は、公布から2年6か月以内(2028年12月ごろまで)に、政令で決まります。2026年10月19日に法務省の改正法のページを確認した時点では、「政令で定める日」と書かれていました。開始日が決まれば、法務省の改正法のページで確かめられます。始まるまでは、今の制度のままです。
「じゃあ、変わるまで待ったほうがいい?」と思った方もいるかもしれません。待つかどうかは、今、契約やお金の管理で困っていることがあるかどうかで変わります。ここはひとりで決めずに、相談先で一緒に考えてください。成年後見の相談は、厚生労働省「成年後見はやわかり」で地域の権利擁護の相談窓口を探せます。
成年後見制度の全体像(今の後見・保佐・補助の違い、申立ての流れ)は、こちらにまとめています。
▶ 成年後見制度の完全ガイド|後見・保佐・補助の違いと使い方
後見人がついたあとも家族に残る役割(医療の同意や身元保証など)は、こちらで整理しています。
▶ 成年後見人がつけば家族は何もしなくていい?手術の同意と身元保証人、家族に残る役割と頼めない時の進め方
現場のひとこと
成年後見制度も、「一度つけると一生」が課題になっている事実があります。そのうえで、制度が変わっていく話も出ています。
よくある質問

Q. 障害福祉サービスを使う前の段階でも、相談していいですか?
大丈夫です。市区町村の障害福祉の窓口は、サービスを使う前の相談も受けています。「まだ何も使っていないけれど、先のことを相談したい」と伝えてください。
Q. 基幹相談支援センターが、自分の地域にあるか分かりません。
基幹相談支援センターは、市町村が置くよう努めることになっている機関です。地域によって名前が違ったり、置かれていなかったりします。分からない時は、市区町村の障害福祉の窓口に「親なきあとの相談はどこにすればいいですか」と聞くのが早いです。
Q. 成年後見の見直しが始まったら、今使っている人はどうなりますか?
法務省の資料では、今の後見・保佐を使っている人は、基本的には今の内容のまま続けることも、新しい制度に移ることも、やめる申立てをすることもできる形になっています。具体的にどうするかは、始まる時期が決まってから、家庭裁判所や相談窓口で確かめてください。
まとめ:親なきあと、何から?

要点は3つです。
- 相談できる相手を、困る前に見つける。担当の相談支援専門員か、市区町村の障害福祉の窓口から
- 「グループホームは空きがない」で止めない。見学と情報の更新を続ける
- 「後見は一度つけたら一生」で止めない。今はそうなりやすいけれど、見直しの法律ができている。最新の制度の動きを確かめる

次のどれかに当てはまるなら、今が相談先を見つける時期です。
- 子の担当の相談支援専門員の名前が、すぐに出てこない
- 「空きがない」「後見は一生」と聞いたまま、何年も確かめ直していない
- 自分が入院した時、子を誰に頼むかが決まっていない
今日できることは1つ。子の担当の相談支援専門員、または市区町村の障害福祉の窓口の電話番号を、スマートフォンに登録しておきませんか。
この記事を書いた人
むむぶどう🍇
社会福祉士・ケアマネジャー。社会福祉士として福祉の現場に20年、介護施設・在宅サービスで、ご本人とご家族の支援に関わってきました。現役の保佐人としても活動しています。福祉の制度を「使える形」にして届けたい、と思って発信しています。
障害のある子を育てる親御さんが集まる場で、「この子はどうなるんだろう」という話に何度も立ち会ってきました。先のことは分からないからこそ、決めつけずに相談できる相手を持ってほしい。そんな思いで書いています。
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ブログでは「制度の使い方」を、noteでは「現場のリアル」を、Xでは「今日の気づき」を発信しています。
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参考資料
- 法務省「『民法等の一部を改正する法律』(成年後見及び遺言の制度の見直し)について」 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00410.html
- 法務省民事局「民法等改正法の概要」(令和8年) https://www.moj.go.jp/content/001465481.pdf
- 厚生労働省「障害福祉サービスの内容」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/service/naiyou.html
- e-Gov法令検索「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」(第5条・第77条の2) https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000123
- 厚生労働省「地域生活支援拠点等」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000128378.html
- 厚生労働省「地域生活支援拠点等の整備について」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001321736.pdf
- 厚生労働省 成年後見はやわかり「相談窓口のご案内」 https://guardianship.mhlw.go.jp/consultation/
※この記事は、親なきあとの備えについての一般的な情報です。2026年10月19日時点の制度と公表資料をもとに書いています。グループホームの状況や相談先の名前は地域によって違います。実際の手続きは、市区町村の障害福祉の窓口や相談支援事業所、家庭裁判所にご確認ください。

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