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「庭の草を抜いてほしい」「一緒に住んでいる家族の部屋も掃除してほしい」。ケアマネジャーやヘルパーに頼んでみたら、「それは保険ではできないんです」と返ってきた。そこで話が止まっていませんか?
先に結論をお伝えします。保険で頼めないことは、諦める話ではなく、頼み先が変わる話です。頼み先は大きく4つ。自費の家事支援、福祉用具の自費レンタル、配食、自費の訪問介護。頼む先が違うだけで、どれも担当のケアマネジャーに一言伝えれば道が開きます。
私は社会福祉士として福祉の現場に20年。地域包括支援センターにいたころから現在のケアマネジャーの仕事まで、「それは保険ではできないんです」と伝えたあとに、どこへつなぐかを考え続けてきました。
「そもそも何が頼めて、何が頼めないのか」は前の記事に。この記事はその続きです。
▶ 前の記事: ヘルパーに頼めないこと完全ガイド|訪問介護の境界線と、家族が知っておきたい相談先
「保険ではできません」と言われたら、諦めるしかない?
諦めなくていいです。保険の穴は4種類に分かれ、4つとも頼み先があります。

- 図の文言(本文からの抜き書き)
- ① 草引き・同居家族の分の掃除 → 自費の家事支援(訪問介護事業所の保険外サービス・シルバー人材センター・家事代行)
- ② 保険で借りられない福祉用具 → 福祉用具事業所の自費レンタル
- ③ 食事の用意 → 配食(自費)
- ④ 訪問介護でできない家事支援 → 自費の訪問介護
- 共通: どれも担当のケアマネジャーに一言
- ① 家事の範囲外(庭の草引き、同居家族の分の掃除など)→ 自費の家事支援
- ② 保険の対象外の福祉用具(種目に入っていないもの、要介護度で借りられないもの)→ 福祉用具事業所の自費レンタル
- ③ 食事の用意→ 配食
- ④ 訪問介護でできない家事支援→ 自費の訪問介護
現場でも、この4つはよく出てきます。訪問介護でできないような家事支援を自費のサービスで賄う。介護保険でレンタルできない福祉用具を、自費で借りるよう福祉用具事業所に手配する。配食も自費のサービスとして、大事な位置づけになっています。庭の草引きや同居家族の分の掃除は、自費で行うことがあります。
ご家族の困りごとは、この4つのどれに当たりますか?当てはまった番号の章へ進んでください。
なぜ保険では頼めないのに、自費なら頼めるの?
介護保険の訪問介護は「本人の日常生活を支える」ための制度で、その外側の頼みごとは、最初から保険の対象に入っていないだけ。ヘルパーが意地悪をしているのではなく、制度の線がそこに引かれているんです。
厚生労働省の介護サービス情報公表システムには、訪問介護で受けられないサービスとして「利用者の家族のための家事や来客の対応」「草むしり、ペットの世話、大掃除、窓のガラス磨き、正月の準備」が例に挙げられています。
一方で、厚生労働省の通知にはこう書かれています。保険給付の範囲外のサービスは、「利用者と事業者の間の契約に基づき、保険外のサービスとして、保険給付対象サービスと明確に区分し、利用者の自己負担によってサービスを提供することは、当然、可能である」(平成30年9月28日 老健局通知が引用する平成12年老振発第76号)。
つまり、保険の線の外側は「頼めない」のではなく「保険では頼めない」。自費なら頼めます。
ただし、この通知は自治体への「技術的な助言」という位置づけで、細かい運用は市区町村や事業所によって差があります。担当のケアマネジャーに「保険では無理なのは分かった。自費だとどうなりますか」と聞いたことはありますか?
頼み先①:草引き・同居家族の分の掃除は誰に頼む?
頼み先は3つあります。
1. 今来ているヘルパーの事業所に「保険外サービス」として頼む
意外と知られていませんが、訪問介護の事業所が、保険とは別の契約で「保険外サービス」をやっていることがあります。
厚生労働省の通知には、できる組み合わせの例として「訪問介護の提供の前後や提供時間の合間に、草むしり、ペットの世話のサービスを提供すること」「同居家族の部屋の掃除、同居家族のための買い物のサービスを提供すること」が挙げられています。
いつも来てくれているヘルパーさんが、保険の訪問介護を終えたあとに、別料金で草引きをする。こういう形が制度上あり得ます。この形で草引きを頼めた方は、「知っている人だから安心」と言っていました。ただし、すべての事業所がやっているわけではないので、ケアマネジャーに「今の事業所は保険外のサービスをやっていますか」と聞いてみてください。
2. シルバー人材センター・自治体の高齢者向けサービスに頼む
草引きや庭木の手入れは、シルバー人材センターが受けている地域が多いです。自治体が独自に高齢者向けの家事支援を用意していることもあります。どちらも、地域包括支援センターかケアマネジャーに聞けば、その地域にあるものを教えてもらえます。
3. 民間の家事代行に頼む
同居家族の分の掃除や洗濯まで含めて頼みたいなら、民間の家事代行が候補になります。介護保険とは関係のないサービスなので、「本人のため」「家族のため」の線引きがありません。
1つ補足があります。同居している家族がいる場合、本人の分の生活援助(掃除・洗濯・調理)も、保険で頼むには条件がつくことがあります。家族が日中仕事でいない、家族に病気や障害がある、といった事情が問われ、扱いは自治体で違います。厚生労働省も、同居家族がいることだけを理由に一律に判断しないよう、自治体に求めています。「家族分はダメ」で終わらず、「本人の分はどうなるか」もケアマネジャーに聞いてください。
頼み先②:保険で借りられない福祉用具はどう借りる?
福祉用具事業所に「自費で借りたい」と頼む。これだけです。多くの場合、ケアマネジャーが事業所に手配をしてくれます。
保険で借りられない、には2種類あります。
- そもそも保険の貸与種目に入っていないもの。たとえば一本杖(T字杖)。貸与種目は厚生労働省の告示で13種目に限られていて、一本杖はその列挙に含まれていません
- 種目には入っているが、要介護度の条件で借りられないもの。介護ベッドや車いすは原則として要介護2以上が対象で、要介護1や要支援の方は「例外給付」という手続きを通さないと保険で借りられません
どちらも、福祉用具事業所は保険を使わない「自費レンタル」で貸してくれることがあります。介護保険でレンタルできない福祉用具を自費で借りるよう、福祉用具事業所に手配する場面は、現場で実際にあります。
金額は事業所によって差があります。保険レンタルの1割負担額に近い水準を出す事業所もあれば、保険の10割相当額をそのまま出す事業所もあります。見積もりは2社以上から取って、月額に何が含まれているかを揃えて比べてください。自費でも、ケアマネジャーには伝えてください。保険を使わないサービスでも、ケアプランに「保険外サービス」として載せてもらうのが望ましいです(ケアマネジャーには保険外のサービスも含めてプランに位置づけるよう努める決まりがあります)。
▶ 介護ベッドは要介護1だと借りられない?例外給付と自費レンタル、2つのルートを現役の社会福祉士が解説
▶ 介護保険の福祉用具レンタル完全ガイド|対象品目・自己負担・使えないときの対処法
頼み先③:配食は介護保険で頼めないの?
配食は、介護保険で給付されるサービスの種類(訪問介護・デイサービス・福祉用具など)には含まれていません。基本は自費のサービスです。市区町村が独自に配食サービスをしているところもあり、条件や負担額は自治体で違います。
それでも、私の現場では配食は自費のサービスとして、大事な位置づけです。理由は2つ。
- 「作れない」を解決する手段が、保険の中には少ない。訪問介護の調理は「本人のため」に限られ、毎日3食を訪問介護で賄うのは現実的ではありません
- 配達のときに安否確認をしてくれる事業所がある。食事と一緒に、人の目が毎日届きます
費用は、私が現場で見てきた範囲で1食800〜1,000円くらい。糖尿病食やムース食など一般食でないものは、もう少しかかることもあります。味の好みが合わずにすぐやめる方もいるので、事業所を1つに決め打ちせず、順番に試すつもりで始めてください。ご本人は、まだ「作りたい」と思っていますか?そこで買い物支援と配食が分かれます。
頼み先④:訪問介護でできない家事支援は、自費の訪問介護で頼める?
頼めます。頼み先①で触れた「訪問介護事業所の保険外サービス」が、そのまま受け皿です。自費のヘルパーと呼ばれることもあります。
例を挙げると、大掃除や正月の準備、家族の分の洗濯や調理、ケアプランに入っていない曜日・時間の家事、「今日は疲れたから全部お願いしたい」という日の家事。保険の訪問介護は「本人ができないところを補う」枠ですが、自費の訪問介護にはその縛りがありません。頼みたいことを、頼みたい時間に、事業所と合意できる範囲で頼めます。その代わり料金は全額自己負担。「高い」と感じる方が多いところは、あとの章で書きます。
自費サービスは、どう頼めばいい?
頼み方は、4つのどれでも同じです。入口は担当のケアマネジャー。

- 図の文言(本文からの抜き書き)
- 1 担当のケアマネジャーに「これを頼みたい」と伝える
- 2 保険でできるか、できないかを判定してもらう
- 3 保険でできないなら、頼み先を一緒に選ぶ
- 4 事業所と別の契約を結ぶ(内容・時間・料金の説明を受ける)
- 5 ケアマネジャーに報告し、ケアプランに書いてもらう
1. 担当のケアマネジャーに「これを頼みたい」と伝える。「保険で無理なら自費でもいい」と添えると、話が早いです
2. 保険でできるか、できないかを判定してもらう。実は保険の範囲だった、ということもあります
3. 保険でできないなら、頼み先を一緒に選ぶ。今の事業所の保険外サービスか、シルバー人材センターか、民間か
4. 事業所と別の契約を結ぶ。厚生労働省の通知でも、内容・提供時間・利用料を文書で説明して同意を得ること、保険の利用料とは別に請求することが事業者に求められています
5. ケアマネジャーに報告し、ケアプランに書いてもらう。通知では、事業者が契約の前後にケアマネジャーへ報告し、必要に応じて週間サービス計画表に記載することになっています。ご家族からも一言伝えておくと確実です
5番は忘れられがちですが、自費で入れたサービスもケアプランに載っていると、ヘルパー・デイサービス・福祉用具の全員が同じ絵を見て動けます。自費で頼んだこと、ケアマネジャーに伝えていますか?
自費は高い?1〜3割から10割になる感覚と、どう向き合う?
ここが、いちばん引っかかるところだと思います。
介護保険のサービスは、自己負担が1〜3割です。訪問介護の生活援助なら、1回数百円。その感覚のまま自費の見積もりを見ると、保険の10割相当か、それ以上の金額に見えます。「それは保険ではできないんです」と伝えたとき、返ってくる反応で多いのが、高くつくことへの躊躇です。見積もりを見て「そうですか」と躊躇される方も、少なくありません。当然の反応だと思います。
だから私は、「できません」で終わらせず、必ず代替案を説明するようにしています。なんでも保険でできるわけではない。そこをはっきり伝えて理解してもらったうえで、頼み先を出すところまでが仕事だと思っています。
そのうえで、金額だけで決める前に、その金額で何が買えるかを考えてみてください。
- 草引きを月1回頼めば、家族が休日に往復して草を抜く半日が、そのまま戻ってきます
- 家族の分の掃除まで頼めれば、仕事から帰った家族が夜に掃除機をかける時間が減ります
- 配食を平日だけ入れれば、「今日の夕飯どうしよう」と毎日電話で確認する手間が消えます
自費で買っているのは、サービスではなく時間です。その時間を、本人と話す時間や、家族自身が休む時間に回せるなら、高くない場合があります。
判断の物差しは3つです。
- 誰のためか。本人のためなら保険を先に使い切る。家族のためなら最初から自費と割り切る
- どのくらいの頻度・期間か。月1回の草引きと毎日の家事では、年間の額がまったく違います
- 家族の時間はいくらか。往復の交通費と半日を、金額に置き換えてみてください
それでも「今は無理」という答えなら、それも正解です。月1回だけ入れて様子を見るほうが、長く続きます。
▶ 在宅介護にかかる月額費用シミュレーション|要介護1〜5の現実と、家計を守る制度の使い方
家族からよく出る質問:同じヘルパーさんに「ついで」で頼めない?

- 図の文言(本文からの抜き書き)
- 草引き・家族の分の掃除 → ケアマネジャーに「保険外サービスをやっている事業所はあるか」
- 保険で借りられない福祉用具 → ケアマネジャー経由で福祉用具事業所に「自費で借りたい」
- 食事の用意 → ケアマネジャーか地域包括支援センターに「配食を試したい」
- ケアマネジャーがまだいない → 地域包括支援センターへ
「ついで」はできません。保険の訪問介護と保険外サービスは、時間も料金もはっきり分ける決まりです。厚生労働省の通知でも、本人の分の料理と家族の分の料理を同時に作るような「同時一体的」な提供は認めない、と書かれています。
ただし「保険の訪問介護のあとに、別契約で草引き」という形なら、同じヘルパーさんが続けてやることは制度上あり得ます。事業所がその仕組みを持っているかどうかなので、ケアマネジャーに確認してください。
ケアマネジャーがまだいない方は、お住まいの地域包括支援センターへ。介護保険の認定を受けていなくても相談できます。私も包括にいたころ、「保険ではできないんです」と伝えたあとに、シルバー人材センターや配食につないだ相談がたくさんありました。
まとめ:「できません」は終わりではなく、頼み先が変わる合図
要点は5つです。
- 保険で頼めないことは、頼み先が変わるだけ。穴は4種類、どれにも頼み先がある
- 草引き・家族の分の掃除→ 訪問介護事業所の保険外サービス、シルバー人材センター、家事代行
- 保険で借りられない福祉用具→ 福祉用具事業所の自費レンタル。見積もりは2社以上
- 食事→ 配食(自費・1食800〜1,000円が目安・安否確認つきの事業所も)
- 訪問介護でできない家事→ 自費の訪問介護。別契約・別料金で、ケアプランにも載せる
今日やることは1つ。担当のケアマネジャーに、「保険では無理なのは分かりました。自費だと、誰に頼めますか」と聞いてみてください。その一言で、4つの頼み先のどれかにつながります。
自費サービスを探すときの選択肢
特定の1社に決める必要はありません。探し方の順番です。
- 担当のケアマネジャーに、地域の事業所を複数紹介してもらう(いちばん確実。地域の相場も分かります)
- シルバー人材センター・社会福祉協議会・自治体の高齢者向けサービス(地域包括支援センターで一覧をもらえます)
- 民間の家事代行・自費ヘルパーのサービス(複数社の料金と対応エリアを比べる。1社の見積もりだけで決めない)
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民間の家事代行の一例として、全国で展開しているダスキンの家事代行「メリーメイド」
のように、掃除や料理を1回から頼める事業者があります。料金と対応エリアは地域で違うので、担当のケアマネジャーに紹介してもらう地域の事業所と比べてから決めてください。
どれを選ぶ場合も、契約の前に「内容・時間・料金」の説明を文書で受け、決めたらケアマネジャーに伝える。この2つは共通です。
【この記事を書いた人】
むむぶどう。社会福祉士として福祉の現場に20年、現在はケアマネジャーとして働いています。「それは保険ではできないんです」と伝える側の人間として、そのあとに続く「じゃあ誰に頼めるか」を、ここに置いておきたくて書きました。
参考資料(一次資料)
- 厚生労働省 老健局「介護保険サービスと保険外サービスを組み合わせて提供する場合の取扱いについて」(平成30年9月28日 老推発0928第1号・老高発0928第1号・老振発0928第1号・老老発0928第1号) https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc3681&dataType=1&pageNo=1
- 厚生労働省 介護サービス情報公表システム「どんなサービスがあるの? 訪問介護(ホームヘルプ)」 https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/publish/group2.html
- 厚生労働大臣が定める福祉用具貸与及び介護予防福祉用具貸与に係る福祉用具の種目(平成11年厚生省告示第93号・現行版) https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001506161.pdf
- 厚生省老人保健福祉局振興課長通知「指定訪問介護事業所の事業運営の取扱等について」(平成12年11月16日 老振第76号) https://www.ipss.go.jp/publication/j/shiryou/no.13/data/shiryou/syakaifukushi/824.pdf
- 厚生労働省老健局振興課長通知「同居家族等がいる場合における訪問介護サービス等の生活援助の取扱いについて」(平成21年12月25日 老振発1224第1号) https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000003fwn-img/2r98520000003fy5.pdf
※この記事の保険外サービスの扱いは、厚生労働省の通知に基づく一般的な説明です。通知は自治体への技術的な助言という位置づけで、実際の運用は市区町村や事業所によって異なります。配食の費用や自費レンタルの金額は筆者が現場で見てきた目安であり、事業所・地域で差があります。個別の可否や費用は、担当のケアマネジャー、お住まいの地域包括支援センター、または市区町村の介護保険担当課にご確認ください。


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