「認定結果が思っていたより軽く出てしまった」
「逆に重く出すぎていて、本人が落ち込んでいる」
「明らかに状態が変わったのに、次の更新まで半年も待てない」
要介護認定の結果通知が届いたとき、こう感じるご家族は本当に多いです。前回の記事「要介護認定の流れ完全ガイド」では、申請から結果通知までの仕組みを解説しました。今回はその続編として、「結果に納得できなかった時、どう動けばいいか」 を完全にまとめます。
福祉の相談屋・社会福祉士のむむぶどうです。
介護保険には、結果に納得できない時の救済ルートが 2つ 用意されています。区分変更申請(介護保険法第29条) と 審査請求(同第183条) です。ところがこの2つ、似ているようで全く違うもので、選び方を間違えると半年以上ムダにしてしまうこともあります。
現場20年で見てきた 「区分変更を出すべきタイミング」「審査請求が向くケース」「軽く判定された時の動き方」 を、家族目線で全部お伝えします。
要介護認定の結果が想定とズレる、というのは決して珍しいことではありません。私の現場感覚で言うと、新規申請の3〜4件に1件は「家族の想定とズレる」 くらいの割合です。
ズレ方には大きく2パターンあります。
①想定より軽く出てしまった
これが圧倒的に多いパターン。「要介護2が出ると思っていたのに要支援2だった」「認知症がひどいのに要介護1止まり」など。原因は次のいずれかです。
- 認定調査で本人が頑張ってしまった
- 家族が立ち会えず、本人の自己申告だけになった
- 主治医意見書に普段の状態が反映されていない
- 「困っている事実」が調査員に伝わらなかった
②想定より重く出てしまった
これは数は少ないですが、ご本人のプライドを傷つけるパターンです。「自分はそこまで弱っていない」と本人が感じて、サービス利用を拒否する原因にもなります。
どちらのパターンでも、結果通知を受け取ってから動ける制度 がきちんと用意されています。「ハズレを引いたから諦める」のではなく、正しいルートで見直しをかける ことが大切です。
詳しくは前作「要介護認定の流れ完全ガイド」に書きましたが、結果に納得できないかどうかを判断するためには、どうやって区分が決まったか を理解しておく必要があります。
簡単に振り返ると、認定区分は次の3つの情報を組み合わせて決まります。
- 認定調査(74項目) … 自宅で調査員がチェック
- 主治医意見書 … かかりつけ医が書く医学的な意見
- 介護認定審査会の二次判定 … 一次判定(コンピュータ)を医師らが見直して最終決定
つまり、結果がズレる原因も大きく3つに分かれます。
- 認定調査の特記事項が薄かった(普段の困りごとが伝わっていない)
- 主治医意見書が実態を反映していない(受診時の元気な姿だけで書かれた)
- 二次判定の判断が想定と違った(特記が薄いと一次判定通りに落ち着きやすい)
ここを押さえると、「次に何を変えれば結果が変わるか」が見えてきます。
結論から言うと、結果に納得できない場合は まず区分変更申請を検討する のが現場のセオリーです。理由はシンプルで、早くて・分かりやすくて・通りやすい からです。
区分変更申請とは、いまの認定区分を 「もう一度、最初からやり直してもらう」 手続きです。介護保険法第29条にもとづく正式な申請で、新規申請とほぼ同じ流れをもう一度ふみます。
区分変更申請の流れ
① 市役所 or 地域包括で申請(新規と同じ書類)
↓
② 主治医意見書の依頼
↓
③ 認定調査(自宅でもう一度74項目)
↓
④ 一次判定 → ⑤ 二次判定
↓
⑥ 結果通知(原則30日以内)
申請から結果通知まで 原則30日以内(実態は1〜2ヶ月)です。
申請に必要なものは新規申請と同じで、
- 介護保険被保険者証
- マイナンバー
- 認め印
- 主治医の名前と病院名
これだけです。費用は無料。
申請窓口は市役所の介護保険課か、地域包括支援センターで代行してもらえます。ケアマネがついていれば、ケアマネが代行で申請してくれます。
ここが意外と知られていないポイント。
教科書的には「区分変更申請は状態が悪化した時にするもの」と書かれていますが、実務では「結果に納得できない時の再評価ツール」としても普通に使われています。
たとえば、
- 認定調査の日、たまたま本人の調子が良かった
- 家族が仕事で立ち会えなかった
- 認知症の症状が調査員の前で出なかった
こういう場合、「状態が悪化したから」ではなく「今の状態を正しく評価し直してほしい」という理由で区分変更を出せます。市町村によっては受理時に「状態変化はありますか?」と確認されますが、「夜間の不穏が増えた」「歩行が前より不安定」など、具体的な変化を1つでも挙げられれば受理してもらえる ことがほとんどです。
ただし、申請理由は嘘をついてはダメ です。あくまで「今の困りごと」を正直に伝えてください。
区分変更を出す前に、前回の認定で何が薄かったか を振り返ってください。
主治医意見書が弱かった場合
- 受診時に「実は家で困っていること」を時間をかけて伝える
- 服薬管理ができていない、夜間の徘徊がある、転倒が増えた、などを メモにして渡す
- 病院の地域連携室や相談員に「家での様子」を伝える
認定調査が弱かった場合
- 家族が必ず立ち会う
- 過去2週間の困りごとを メモにまとめて当日渡す
- 認知症の問題行動は別室で家族だけが補足
- 「いつもは」ではなく「先週○曜日に〜があった」と日付つきで伝える
これだけで結果が1段階変わることが本当にあります。
もう1つのルートが、介護保険法第183条にもとづく 審査請求(行政不服申し立て) です。
審査請求は、「市町村の認定処分そのものが間違っている」と主張して、第三者機関に判断してもらう 制度です。第三者機関は 都道府県に設置された「介護保険審査会」 で、医療・福祉・法律の専門家で構成されています。
ポイントは、処分のやり直しではなく、処分の適法性を判断する こと。「あなたの認定はおかしいから取り消してほしい」と申し立てる、行政相手の正式な不服手続きです。
ここが一番大事なところ。審査請求には期限があります。
処分があったことを知った日の翌日から起算して、3ヶ月以内(介護保険法第192条・行政不服審査法第18条)
結果通知書が届いた日の翌日からカウントして3ヶ月、と覚えてください。これを過ぎると審査請求はできなくなります。
※以前は「60日以内」でしたが、2016年の行政不服審査法改正により 3ヶ月 に延長されています。古い情報源を見ると「60日」と書かれていることがあるので注意。
- 申請先:都道府県の介護保険審査会(市町村ではない)
- 書類:審査請求書(決まったフォーマットあり、都道府県のHPからダウンロード可)
- 費用:無料
- 結論まで:数ヶ月〜半年以上 かかることがほとんど
審査請求書には、
- 不服の対象となる処分(◯月◯日付の要介護認定処分)
- 不服の理由
- 求める結論(区分の変更・取り消しなど)
を書きます。書き方が分からない時は、都道府県の介護保険担当課や、地域包括支援センター、ケアマネに相談してください。
審査請求は 時間がかかる のが最大のデメリットです。介護保険審査会は月に1〜2回しか開かれない都道府県も多く、書類審査・現地調査・本人ヒアリングなどを経て結論が出るまで、半年近くかかることも珍しくありません。
その間、いまの認定区分のままサービスを使うことになるので、「急いで重い区分にしてほしい」というニーズには向きません。
ここまで読んで「どっち使えばいいの?」と思った方のために、比較表を作りました。
| 項目 | 区分変更申請(第29条) | 審査請求(第183条) |
|---|---|---|
| 根拠法 | 介護保険法第29条 | 介護保険法第183条 |
| 申請先 | 市町村(市役所・地域包括) | 都道府県の介護保険審査会 |
| 期限 | いつでも可能 | 処分を知った日の翌日から3ヶ月以内 |
| 結果が出るまで | 原則30日(実態1〜2ヶ月) | 数ヶ月〜半年以上 |
| 費用 | 無料 | 無料 |
| 内容 | 認定をもう一度最初からやり直す | 処分の適法性を第三者機関が判断 |
| 通りやすさ | 状態を正しく伝えれば変わりやすい | ハードル高め・棄却も多い |
| 主な使いどころ | 結果に納得できない・状態が変わった | 区分変更でも結果が変わらない時 |
ほとんどのケースは区分変更で十分 です。区分変更のほうが早く・分かりやすく・実態が反映されやすいので、現場ではまず区分変更を出します。
法律上、両方を同時に進めることもできます。ただし、
- 審査請求中に区分変更で区分が変わると、審査請求の対象だった「元の処分」が存在しなくなるため、審査請求は通常取り下げになる
- 二重手続きで家族の負担も大きい
ので、実務では 「まず区分変更 → それでもダメなら審査請求」 という順番で進めるのが一般的です。
迷ったら次の順で考えてください。
- 明らかに調査が浅かった・実態が伝わっていない → 区分変更
- 状態が前より悪くなっている → 区分変更
- 区分変更を出しても結果が変わらなかった → 審査請求
- 「処分そのものが違法・不当だ」と主張したい → 審査請求
現場で一番多いのが、「想定より軽く出たケース」です。よくあるパターンと対応をまとめます。
認知症は 認定調査の場で症状が出にくい という特徴があります。短時間の調査では、本人が「お元気そうに」見えてしまうのです。
対応:
- 区分変更申請を出す
- 家族が事前に「過去2週間の認知症エピソード」をメモにする
- 火を消し忘れた日数
- 服薬を忘れた回数
- 同じ話を1日何回くらい繰り返すか
- 夜間徘徊・不眠の有無
- 主治医にも家での様子を伝えて、意見書に反映してもらう
身体機能の評価は、調査当日の体調に左右されやすい項目です。
対応:
- 区分変更申請を出す
- 当日「家族介助のもとに歩いている」状態を見てもらう
- リハビリ評価表や転倒歴のメモを当日提示
- 主治医意見書に「自宅での歩行は不安定」と書いてもらう
医療行為があると本来は重く出やすいのですが、書類に反映されていないと見落とされます。
対応:
- 区分変更申請を出す
- 訪問看護指示書・退院サマリーなどを地域連携室から取り寄せて主治医に渡す
- 過去14日間の医療処置を 日付つき で調査員に伝える
数は少ないですが、こういうご相談もあります。
「父が要介護3と出たけれど、本人は『そんなに弱ってない』と落ち込んでサービスを拒否している」
このケースでも、区分変更申請で「軽い方への見直し」を求めることができます。ただし、
- 介護保険の支給限度額は減る(使える金額の上限が下がる)
- 特養申請などでは要介護3以上が条件になる施設もある(軽くなると入所要件を満たさなくなる)
というデメリットがあります。本人のプライドのために軽くする という判断は、家族・ケアマネとよく相談してから動くのが安全です。
「本人が納得していないからサービスが進まない」という状況であれば、まずは ケアマネと一緒に本人の気持ちを整理する ところから始めるのが現場のセオリーです。区分を変える前にできることがあります。
区分変更を出すなら、次の認定調査で同じ失敗を繰り返さないこと が一番大切です。私が現場で20年、家族にお伝えしてきた5つのコツをまとめます。
これは前作でも書きましたが、最も重要なので再掲します。
本人だけで調査を受けると、
- 認知症の方は「できます」と即答してしまう
- プライドのある方は「歩けます」と強がってしまう
- 質問の意味を取り違える
ので、実態より軽く判定される リスクが跳ね上がります。
仕事を半休でも取って、必ず家族が立ち会ってください。事情があって難しい場合は、ケアマネや訪問看護師など 本人の状態を知っている第三者 に同席してもらえるよう相談を。
調査員はその場の状態しか見られません。だからこそ、家族からの 具体エピソード が命綱です。
メモには次のことを書いてください。
- 日付(◯月◯日)
- 何があったか(転倒した・夜間徘徊した・失禁した など)
- 家族の介助内容(何分・何回)
「いつも」「だいたい」ではなく、日付つきの具体的事実 で書くのがコツです。
本人の前で「徘徊があります」「物盗られ妄想があります」と言うと、本人のプライドを大きく傷つけます。
そんな時は調査員に、
「本人に聞かれたくない内容があるので、後ほど別室で少しお時間いただけますか」
とお願いしてください。優れた調査員なら必ず時間を取ってくれます。
主治医意見書は 診察室での状態だけ で書かれがちです。診察室では本人は気合いで歩きます。
受診時に 介護家族用メモ を持参して、
- 自宅での介助内容
- 認知症の症状(具体例)
- 服薬管理の状況
- 転倒・失禁・不眠の頻度
を時間をかけて伝えてください。医師は忙しいですが、書面でまとめて渡せば必ず目を通してくれます。
最後はシンプル。
調査員も主治医も、家族が 「困っている事実を隠さず」 話してくれることを望んでいます。プライドや恥ずかしさは、判定がズレる最大の原因です。
「本人がいるから言いにくい」内容こそ、正確に伝えてください。
ここまでお読みいただいて、「自分一人でやるのは難しそう」と感じた方も多いと思います。安心してください。全部一人でやらなくて大丈夫 です。
すでに ケアマネ または 地域包括支援センター がついているはずです。区分変更も審査請求も、ケアマネに相談すれば一緒に動いてくれます。代行申請してもらうこともできます。
お住まいの地域の 地域包括支援センター に電話してください。区分変更の相談も無料で受けてくれます。市町村により異なる場合がありますが、書類の書き方から認定調査の立ち会いまでサポートしてくれるところがほとんどです。
各市町村の介護保険課でも、区分変更・審査請求の制度説明は受けられます。「審査請求の申請書がほしい」と言えば書類一式をくれます。
要介護認定の結果に納得できないのは、決して珍しいことではありません。むしろ、結果に違和感を覚えた家族ほど、本人を冷静に見ている とも言えます。
- まずは 区分変更申請(介護保険法第29条) を検討する
- それでも変わらなければ 審査請求(同第183条) ※処分を知った日の翌日から3ヶ月以内
- 次の認定調査では 家族立ち会い・困りごとメモ・主治医への情報共有 を徹底する
- 一人で抱えず、ケアマネ・地域包括支援センター に必ず相談する
要介護認定は1回取れば終わりではなく、何度でも見直せる制度 です。「知らないと損する」を「知って使いこなす」に変えていきましょう。
前作の「要介護認定の流れ完全ガイド」とセットで読んでいただくと、認定制度の入口から見直しまでを丸ごと押さえられます。ぜひ合わせてどうぞ。
- 「要介護認定の流れ完全ガイド|申請から結果通知まで・軽く判定されないコツを現役ケアマネが解説」 ▶ https://mumubudo.com/youkaigo-nintei-flow
- 「ケアマネジャーの選び方・変え方|『合わない』と感じた時の対処法」 ▶ https://mumubudo.com/caremane-erabikata
むむぶどう / 社会福祉士・ケアマネジャー|福祉の相談屋さん20年
X:@mumubudo
note:https://note.com/mumubudou


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