高額介護サービス費とは|上限を超えた介護費が戻る制度を現役20年の社会福祉士が解説

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「毎月の介護費用が、思っていたより重い」 「デイサービスや訪問介護を増やしたら、自己負担がどんどんふくらんできた」 「このまま払い続けて、家計はもつのだろうか」

介護が始まると、こうした不安を抱えるご家族をたくさん見てきました。介護保険を使えば自己負担は原則1〜3割で済む――そう聞いていても、サービスを多く使えば、その1〜3割でも家計にずしりと響きます。

そんなときに知っておいてほしいのが、「高額介護サービス費」という仕組みです。ひとことで言うと、1か月の介護サービスの自己負担が一定の上限を超えたら、超えた分が後から戻ってくる制度です。

私は社会福祉士・ケアマネジャーとして20年、福祉の現場に関わってきました。現在は株式会社の事業所で所長を務め、訪問介護・ケアマネジメント・障害福祉サービスなどの現場に携わっています。その中で、この制度を知らずに「介護はお金がかかるもの」とあきらめ、払いすぎたまま気づいていないご家族を、何度も見てきました。

この記事では、高額介護サービス費の仕組み・上限額・対象になるもの/ならないもの・申請の手順を、できるだけ平易に整理します。知っているかどうかだけで、家計の負担はずいぶん変わります。

※制度・金額は2026年6月時点の一般的な目安です。運用や判定にはお住まいの自治体ごとに差があります。最終的には、お住まいの市区町村の介護保険課・地域包括支援センター・担当ケアマネジャーにご確認ください。

結論|介護費の自己負担には「月の上限」がある

最初に、いちばん大事なところをまとめます。

  • 介護保険サービスの自己負担(1〜3割)には、1か月あたりの上限額が決められています。
  • その上限を超えて支払った分は、「高額介護サービス費」として後から払い戻されます
  • 上限額は世帯の所得(市町村民税の課税状況)によって段階が分かれます。所得が低いほど上限も低くなります。
  • 一度申請すれば、以降は自動的に振り込まれる自治体がほとんどです。最初の手続きだけ忘れないことが肝心です。

「介護費用は青天井で、使えば使うほど自己負担も無限に増える」――そう思い込んでいる方が多いのですが、実際には1か月の自己負担には天井(上限)があるのです。まずはここを押さえてください。

高額介護サービス費とは(仕組み)

高額介護サービス費は、介護保険の中にあらかじめ用意されている払い戻しの仕組みです。

毎月、介護サービスを使うと、その費用の1〜3割を自己負担として支払います。この1か月(同じ月の1日〜末日)の自己負担額を世帯で合計して、決められた上限額を超えていれば、超えた分が払い戻される――これが高額介護サービス費です。

ポイントは2つあります。

  • 「世帯」で合計する:同じ世帯に介護サービスを使っている人が複数いる場合(たとえば夫婦どちらも要介護)、自己負担を合算して判定します。
  • 「1か月ごと」に判定する:月をまたいで合算するわけではありません。各月で上限を超えたかどうかを見ます。

医療費でいう「高額療養費」の介護版、とイメージすると分かりやすいかもしれません。

自己負担の上限額(月額・所得段階別)

上限額は、世帯の所得(市町村民税の課税状況)に応じて段階が分かれています。2021年8月の見直し以降の区分は、おおむね次のとおりです(いずれも1か月あたり・世帯単位)。

区分(世帯の所得の目安)自己負担の上限額(月額)
課税所得690万円以上(年収約1,160万円以上)の方がいる世帯140,100円
課税所得380万〜690万円未満(年収約770万〜1,160万円)の方がいる世帯93,000円
市町村民税課税〜上記未満(一般的な所得層)44,400円
世帯全員が市町村民税非課税24,600円
 うち 前年の公的年金等収入+その他の合計所得が80万円以下の方など24,600円(世帯)/15,000円(個人)
生活保護を受けている方など15,000円(個人)

ざっくり言えば、一般的な所得の世帯であれば、介護サービスの自己負担は月44,400円が上限ということです。それを超えて払った分は、申請すれば戻ってきます。

※区分の名称・金額は制度改正で変わることがあります。最新の正確な区分は、お住まいの市区町村の介護保険課にご確認ください。

いくら戻る?(考え方の例)

具体的にイメージしてみましょう。あくまで仕組みを理解するための例です。

たとえば、一般的な所得の世帯(上限44,400円)で、ある月の介護サービスの自己負担が合計70,000円だったとします。

  • 上限額:44,400円
  • 実際の自己負担:70,000円
  • 払い戻される額:70,000円 − 44,400円 = 25,600円

この月は、申請によって25,600円が後から戻ってくる計算になります。サービスを多く使った月ほど、戻る可能性が高くなります。

「うちは大した額じゃないから関係ない」と思っていても、デイサービス・訪問介護・ショートステイなどを組み合わせて使うと、月の自己負担はあっという間に上限を超えることがあります。毎月の自己負担額を一度確認してみることをおすすめします。

対象になるもの・ならないもの(ここを誤解しがち)

高額介護サービス費でいちばん誤解が多いのが、この「対象範囲」です。戻ってくるのは、あくまで介護サービスの自己負担分だけです。次のものは対象になりません

  • 福祉用具の購入費(特定福祉用具販売)
  • 住宅改修費(手すり設置・段差解消などの20万円枠)
  • 施設の食費・居住費(部屋代)
  • 差額ベッド代などの全額自己負担分
  • 日常生活費(おむつ代・理美容代・嗜好品など)
  • 支給限度額を超えて使った、全額自己負担のサービス

つまり、「介護にかかったお金すべて」が戻るわけではなく、介護保険サービスの1〜3割負担の部分だけが対象です。ここを取り違えると「思ったより戻らなかった」と感じてしまうので、注意してください。

なお、施設の食費・居住費の負担を軽くする仕組みは、別に「負担限度額認定」という制度があります。所得の低い方は、こちらもあわせて確認すると負担をさらに抑えられます。

申請の手順

手続きは、思っているよりシンプルです。

  1. 対象になると、自治体からお知らせが届く:上限を超えた月があると、市区町村から「高額介護サービス費 支給申請書」が郵送されてくるのが一般的です(タイミングは数か月後のことが多い)。
  2. 申請書を提出する:申請書に必要事項を書き、振込先口座などを記入して、市区町村の介護保険課に提出します。
  3. 初回の申請以降は自動振込:一度申請して口座を登録すれば、その後は上限を超えるたびに、申請しなくても自動的に振り込まれる自治体がほとんどです。

つまり、最初の1回の申請だけ忘れないことが何より大切です。「お知らせが来ていたのに放置していた」「引っ越しや家族の入院でうやむやになっていた」というケースを、現場でときどき見かけます。心当たりがあれば、市区町村の介護保険課に「高額介護サービス費の対象になっていないか」を一度問い合わせてみてください。

なお、払い戻しには時効(おおむね2年)があります。古い分はさかのぼれなくなることがあるので、気づいたら早めに確認しましょう。

「高額医療・高額介護合算療養費」との違い

似た名前の制度に、「高額医療・高額介護合算療養費」があります。混同されがちですが、別の制度です。

  • 高額介護サービス費:介護の自己負担を、1か月ごとに上限と比べる仕組み。
  • 高額医療・高額介護合算療養費:医療と介護の自己負担を、1年間(毎年8月〜翌年7月)合算して、上限を超えた分を払い戻す仕組み。

医療と介護の両方で出費がかさんでいるご家庭は、1か月単位の高額介護サービス費に加えて、1年単位の合算制度でも戻る可能性があります。両方の窓口(介護保険課・医療保険の窓口)で確認してみてください。

まとめ|知らないだけで払いすぎているかもしれません

最後に、要点をまとめます。

  • 介護サービスの自己負担には、1か月あたりの上限がある。
  • 上限を超えた分は、高額介護サービス費として払い戻される
  • 上限額は世帯の所得によって段階が分かれ、一般的な所得層は月44,400円が目安。
  • 戻るのは介護サービスの自己負担分のみ。福祉用具購入・住宅改修・食費・居住費は対象外。
  • 最初の1回の申請さえすれば、以降は自動で振り込まれることが多い。時効(約2年)に注意。

介護は、長く続くほど家計の負担が積み重なります。だからこそ、使える制度はもれなく使うことが、ご家族の暮らしを守ることにつながります。

「うちは対象かもしれない」と思ったら、まずはお住まいの市区町村の介護保険課か、担当のケアマネジャー・地域包括支援センターへ。「高額介護サービス費は使えますか」と一言たずねるだけで、結果は大きく変わります。

出典・参考

  • 厚生労働省「令和3年8月利用分から、高額介護サービス費の負担限度額が見直されました」(介護保険制度における高額介護サービス費の上限区分)
  • お住まいの市区町村の介護保険課(高額介護サービス費の支給申請・最新の区分・金額の確認窓口)

※本記事の金額・区分は2026年6月時点の一般的な目安です。制度改正や自治体ごとの運用により異なる場合があります。正確な内容は必ず公的窓口でご確認ください。


この記事を書いた人

むむぶどう🍇
社会福祉士・ケアマネジャー20年。介護施設・在宅サービスの現場で、ご本人とご家族の支援に関わってきました。福祉の制度を「使える形」にして届けたい、と思って発信しています。

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