在宅介護にかかる月額費用シミュレーション|要介護1〜5の現実と、家計を守る制度の使い方

介護とお金

「親を在宅で看たいけれど、毎月いくらかかるのか分からなくて怖い」。現場でいちばん多い相談がこれです。

結論から言うと、在宅介護の月額費用は、要介護1で3万円台、要介護5で15万円前後まで広がるケースが多いです。 ただし、これは「制度をきちんと使った場合」のひとつの目安。サービスの組み方や制度活用の有無で、同じ要介護度でも数万円単位で家計負担が変わります。

この記事では、現役社会福祉士20年・現役ケアマネジャー・所長として、ご家族から相談を受けてきた現場感覚で、要介護度別の月額シミュレーションと、家計を守るための制度4つを整理します。

※本記事の制度・金額は2026年6月時点の目安です。最終確認は必ずお住まいの市区町村窓口・地域包括支援センターでお願いします。

在宅介護の月額費用、いくらが目安なのか

最初に全体像を押さえます。在宅介護でかかるお金は、ざっくり4つの箱に分かれます。

  • 介護保険サービス費(自己負担1〜3割) = 訪問介護・デイサービス・福祉用具レンタルなど
  • 保険外サービス費 = 配食、家事代行、見守りカメラ、自費ヘルパーなど
  • 医療費 = 受診、薬代、訪問診療、訪問看護(医療保険分)
  • 生活費の上乗せ = おむつ、介護食、光熱費の増加、通院交通費

このうち、いちばん大きいのは介護保険サービス費と保険外サービス費です。要介護度が上がると、保険サービスだけでは足りなくなり、保険外サービスや家族の介護負担が一気に増えます。

現場のひとこと
「在宅は安いと思っていたのに、なぜか毎月10万円消えていく」というご家族はとても多いです。原因はたいてい、保険外サービスや消耗品(おむつ・パッド・栄養補助食品)の積み上がりです。家計簿で「介護費用」を1枠作るだけでも、見え方が変わります。

出典:厚生労働省「介護保険制度の概要」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/gaiyo/index.html

介護保険でどこまで使えるのか(区分支給限度基準額)

在宅介護費用を理解するうえで、いちばん大事なキーワードが「区分支給限度基準額」です。これは「1か月で介護保険を使える上限額」のことで、要介護度ごとに決まっています。

2026年6月時点の目安は次のとおりです(1単位=10円換算・地域区分により若干変動します)。

  • 要介護1:167,650円
  • 要介護2:197,050円
  • 要介護3:270,480円
  • 要介護4:309,380円
  • 要介護5:362,170円

この上限内なら自己負担は1〜3割で済みます。上限を超えた分は全額自費(10割)になるため、ケアマネは利用者・ご家族の希望と必要なサービス量のバランスを見ながら、上限内に収まるようケアプランを組み立てます。

※実際の単価は1単位10円〜11.40円の幅で、地域区分(1級地〜7級地・その他)とサービス種別で変わります。お住まいの地域の単価は担当ケアマネにご確認ください。

出典:厚生労働省「区分支給限度基準額について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000213177.html

要介護度別 月額シミュレーション(要介護1・3・5)

ここからが本題です。3つのパターンで月額をシミュレーションします。自己負担1割・一般所得世帯を前提にしています。

パターン1:要介護1(軽度・週2〜3回サービス利用)

  • デイサービス(週2回):約16,000円
  • 訪問介護(週1回・生活援助):約3,000円
  • 福祉用具レンタル(歩行器):約500円
  • 介護保険自己負担 合計:約19,500円
  • 保険外(配食週3回・おむつ):約12,000円
  • 月額合計:約3万円〜4万円

要介護1の段階では、家族の介護負担を「外注」しすぎないことがコツです。本人の活動量を保つためにも、できることは本人にやってもらう設計が長持ちします。

パターン2:要介護3(中度・週5回サービス利用)

  • デイサービス(週3回):約26,000円
  • 訪問介護(週3回・身体介護):約18,000円
  • 訪問看護(週1回):約4,500円
  • ショートステイ(月3泊):約8,000円
  • 福祉用具レンタル(電動ベッド・車椅子):約2,500円
  • 介護保険自己負担 合計:約59,000円
  • 保険外(おむつ・配食・通院介助):約20,000円
  • 医療費(受診・薬):約8,000円
  • 月額合計:約8万円〜9万円

要介護3は、「家族が倒れる」リスクが最も上がる時期です。ショートステイを月数日でも組み込んで、介護者を休ませる設計が現場では鉄則です。

パターン3:要介護5(重度・ほぼ毎日サービス利用)

  • デイサービス(週4回):約36,000円
  • 訪問介護(毎日・身体介護):約30,000円
  • 訪問看護(週2回):約9,000円
  • 訪問入浴(週1回):約5,000円
  • ショートステイ(月7泊):約20,000円
  • 福祉用具レンタル一式:約3,500円
  • 介護保険自己負担 合計:約103,500円
  • 保険外(おむつ・栄養補助食品・自費ヘルパー):約35,000円
  • 医療費(訪問診療・薬):約15,000円
  • 月額合計:約13万円〜15万円

現場のひとこと
要介護5の在宅は、ご家族の覚悟と、24時間の支援体制の設計が前提です。費用だけで判断せず、「介護者が壊れない仕組み」を先に組み立てましょう。

出典:厚生労働省「介護給付費等実態統計」 https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/45-1.html

見落としがちな費用4つ

シミュレーションには含めにくい、けれど確実に出ていく費用がこちらです。

  • おむつ代:月5,000円〜15,000円。要介護度が上がるほど消費量が増えます。自治体によっておむつ給付制度があるので必ず確認を。
  • 福祉用具レンタル:月500円〜3,500円。介護保険対象で自己負担1〜3割ですが、種類が増えると地味に効きます。
  • 住宅改修:手すり・段差解消などで支給限度基準額20万円までが保険対象(自己負担1〜3割)。原則として生涯20万円の枠を1回で使い切る前提で組みますが、要介護度が3段階以上重くなった場合や転居した場合は再度20万円の枠が使えます。タイミングはケアマネと相談を。
  • 通院交通費・付き添い費:タクシー利用が増えると月1万円超えも珍しくありません。

出典:e-Gov「介護保険法施行規則」 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=411M50000100036

家計を守る制度4つ

ここがこの記事でいちばん持ち帰ってほしいパートです。在宅介護の家計を守る制度を、優先度順に4つお伝えします。

1. 高額介護サービス費

1か月の介護保険自己負担額が一定額を超えると、超えた分が戻ってくる制度です。所得区分ごとの月額上限の目安は次のとおりです(世帯単位/一部個人単位)。

  • 課税所得690万円以上:140,100円(世帯)
  • 課税所得380万円以上690万円未満:93,000円(世帯)
  • 一般(市民税課税世帯):44,400円(世帯)
  • 市民税非課税世帯:24,600円(世帯)
  • 年金収入80万円以下等:15,000円(個人)

申請は市区町村窓口で行います。

※自分がどの区分に当てはまるかは、市区町村から届く「介護保険負担割合証」や課税状況で判定されます。判断がつかなければ、地域包括支援センターか担当ケアマネに確認するのが確実です。

出典:厚生労働省「高額介護サービス費の負担限度額」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000213177_00002.html

2. 高額医療・高額介護合算療養費

医療費と介護費の自己負担を毎年8月1日〜翌年7月31日の1年間で合算して、世帯の所得区分ごとに定められた限度額を超えた分が支給される制度です。申請は加入している医療保険(国保・後期高齢者医療・健保組合等)の窓口で行います。医療と介護の両方を使っているご家庭は、年1回必ずチェックしてください。

3. 負担限度額認定(特定入所者介護サービス費)

ショートステイや施設入所時の食費・居住費が、所得に応じて軽減される制度です。在宅メインでもショートステイを使うなら、申請しておく価値があります。

4. 医療費控除

訪問看護、おむつ代、通院交通費なども医療費控除の対象になる場合があります。年間の医療費が10万円(または所得の5%のいずれか低いほう)を超えた分について、確定申告すれば還付される可能性があります。

おむつ代は、医師が発行する「おむつ使用証明書」が必要です。2年目以降は、自治体によっては市区町村が発行する確認書類で代用できる場合がありますので、お住まいの自治体や税務署に確認してください。

現場のひとこと
この4つは「申請しないと使えない」制度ばかりです。役所は親切に教えてくれません。担当ケアマネか地域包括支援センターに「使える制度を全部教えてください」と聞くのが最短ルートです。

在宅と施設、どちらが安いと言えるのか

「在宅は安い、施設は高い」というイメージは、半分正解で半分間違いです

  • 要介護1〜2の軽度:在宅のほうが安くなりやすい(在宅は月3〜5万円程度/施設は10万円超になることが多い)
  • 要介護3〜4の中度:在宅・施設ともに月8〜13万円程度の幅で、世帯や負担限度額認定の有無で前後する
  • 要介護5の重度:在宅と特養(食費・居住費・日常生活費込み)が同じくらいの月額になるケースがある(おおむね月13〜15万円前後/特養はユニット型か多床室か・負担限度額認定の段階で大きく変動)

しかも、在宅の費用には「家族の労働」というタダ働きが乗っています。介護離職や体調不良で家族が働けなくなるリスクを金額換算すると、施設のほうが「家計全体」では安い場合もあります。

費用だけで決めず、「介護者の人生」を含めて比較するのが現場の判断軸です。

出典:厚生労働省「仕事と介護の両立 ~介護離職を防ぐために~」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/index.html

まとめと、次の一手

在宅介護の月額費用を整理しました。

  • 月額目安は要介護1で3〜4万円、要介護5で13〜15万円
  • 介護保険には区分支給限度基準額という上限がある
  • おむつ・住宅改修・通院交通費など、見落としがちな費用が地味に効く
  • 家計を守る制度は高額介護サービス費・合算療養費・負担限度額認定・医療費控除の4つ
  • 在宅と施設の比較は、家族の労働コストまで含めて判断する

次にやることはシンプルです。

  • 地域包括支援センターに電話して「在宅介護の費用相談をしたい」と伝える
  • 担当ケアマネに「使える制度を全部教えてください」と聞く
  • 1か月の介護費用を家計簿の1枠にまとめて可視化する

費用の不安は、見える化すると半分以下になります。「分からないから怖い」を、「分かったうえで備える」に変えていきましょう。


この記事を書いた人

むむぶどう
社会福祉士・ケアマネジャー。社会福祉士として福祉の現場に20年、介護施設・在宅サービスでご本人とご家族の支援に関わってきました。福祉の制度を「使える形」にして届けたい、と思って発信しています。

▶ note(現場のリアル・体験談):https://note.com/mumubudou
▶ X(毎朝のつぶやき・現場の小ネタ):https://x.com/mumubudo

ブログでは「制度の使い方」を、noteでは「現場のリアル」を、Xでは「今日の気づき」を発信しています。

記事が役に立ったらブックマーク・SNSシェアいただけると励みになります。

コメント

タイトルとURLをコピーしました